“ 海と空。陽と月。佐渡のスマイル。 ”

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“ 海と空。陽と月。佐渡のスマイル。 ”

佐渡島篇 #84

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / 2025.03.18



“ 海に空。太陽に月。新潟から佐渡へ ”

佐渡に向かうのは何回目だろう?
今回は夕方に着くことにした。


佐渡汽船から by T. T. Tanaka


東京から佐渡まで最短だと3時間半弱!で着くことができる。思っていたよりかなり時間的に近い感じなんだ。新潟と佐渡間は一日片道約10本の船。半分は車も乗船できるフェリー、半分はジェットフォイル船で約1時間でついてしまう超高速なのだ。
今回はジェットフォイルでシートベルトをすると船は滑るように進んでゆく。午後4時半頃に新潟港を出港すると日本海が美しい。元気な雲たち。傾いたお日様がキラキラ反射する。
あれ!? 島のシルエットが二つ! と思ったら左が角田山、右が弥彦山。画面の左端が新潟港。


佐渡汽船から by T. T. Tanaka


30分も経つと空にお日様まわりのオレンジ色が広がってくる。


佐渡汽船から by T. T. Tanaka


あっという間に佐渡島が近づいてくる。おっ、日没近し・・・
船内から東京23区より大きい島を画面全体に入れるのは難しい。
海と暮れる空。お日様、美しい。


両津, 佐渡 by T. T. Tanaka


両津港に接する加茂湖は元々淡水だったのだけど今は海とつながった。幅は一番広いところで4kmほどもある。静かなこの湖に日没のカラードラマが広がっている。あ、空に三日月が・・!


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


くっきり月の表面模様まで見えると嬉しい。
海やお日様が美しいとお空の月も美しい。
やっぱりまた佐渡に来てよかった。

満月の時にも来てみなければね。
さ、ごはん食べて、いい夢見れるよ。


“ お花の宿 ”

朝だ。ほんのり明るくなってきた。旅館の窓をあけた・・


花の木, 宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


えっ 何、何?
シルエットだったのか・・
はじけた 嘴(くちばし)みたい。たーくさん枝についているものだね。結構大きくて掌に入るぐらい・・
ようやくわかった! 桐の実なんだ。尖がっているのは実がはじけて中の白い毛でおおわれた種がはじけ出ていった名残り。
春が進んだらまた是非見に来たい・・ 青紫のすっと上を向いた花が咲くはずだから。
(500円硬貨の裏に描かれているし、以前の紙幣達にも描かれていた)


花の木, 宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


寝ぼけ眼の前に白く長く光ったものが右に左に走っている・・・ 元気いっぱいの枝だ。


花の木, 宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


大きな幹の美しい木は合歓木(ネムノキ)。目覚めてこの2000坪の空間にいると自然と一体化して気持いい。ここは、佐渡の南の小木町 宿根木。ご夫妻で江戸時代の古い民家を大切にされ、お庭も丁寧に作り上げてこられている自然の中の旅館。 長い佐渡滞在期間中にこの空間に立ち寄れると身体が溶けてゆく。「花の木」さん、ありがとう。


花の木, 宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


部屋の横に赤い落花、椿が・・
まだこの時期、水を張らない田んぼの向こうから朝風がやさしく抜けてくる。


花の木, 宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


これから元気いっぱい咲く椿。


花の木, 宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


こちらは大きく開いた椿。
このお花は濃いピンク色にめしべも深い黄色。
佐渡はヤブツバキの北限といわれ、広く自生している。戦前は食用にも、また、スキンケア・ヘアケア、灯り用の油等にも使われた椿油の日本有数の産地だったんだね。


花の木, 宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka



花の木, 宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


陽があがり緑がじわじわ映えてきた。嬉しい一日の始まり。


“ 岩屋山石窟 ”

宿を出ると目に飛び込んできた・・・


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka



宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


大きなお地蔵さん・・・!
なんと17mを超すんだそうだ。
今から40年以上ほど前の1983年に完成した幸福(しあわせ)地蔵。この辺は海岸から800mほどのところなんだけど元海底が隆起したところ。
今でも海底には2mもの地蔵が沈んでいるとのこと。
ちなみに日本の本州以外の島で一番お寺の多いのは佐渡島!! で島内に500以上があるとのこと。すごい・・


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


宿から300mほども歩くとすぐ山の斜面。そこに宿根木の「横井戸」という標識。横井戸というのがあるというのは初めて知った。
小木の辺りは隙間の多い岩石(海底火山による水中火砕岩)で雨水が染み込んで地下水になっている。断層のところで染み出る箇所を横に手堀りし流出させてきた。佐渡では日本海から大阪方面への北前船などの廻船業が明治になって衰退し、大正から昭和の戦前戦後にかけて水田開発に対応するため農業用水確保が求められたんだそう。この水路は現在でも大切に使われている。


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka



宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


斜面に横に彫られたアーチ状の穴。
そうか・・この上の山から水が染み込んでくるんだね。
パイプも併設されて今でも大切に使われていることがわかる。


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka



宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


横井戸から100mほど平らに歩くと少し曲がって上っていく感じになる。
っと現れた石仏。柔しそうな顔つき・・
そのまま上ると・・


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


えーーーー  ずらーーーっとカーブして向こうまで並んでゆく仏さんたち!
大木の枝が上にかぶっている。


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


なんと88体!
文化6年(1809年)に宿根木の廻船業者 石塚権兵衛氏の母が建てられたとのこと。佐渡の小泊の石工名人、五平の作とされている。四国の八十八箇所霊場になぞらえたもの。壮観!


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


柔和なお顔が多く、ひとつひとつ拝ませてもらいたい・・・


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


カーブが終わると、少し上って石窟の入口。ここは数十万年前には海岸で、波によって削られて洞だったもの。その後、1000年に一回くらいずつ1~2m隆起を続けて今の海抜70mの高さに。この動きは今も続いている・・ ここは海岸から1000mほど離れているんだけどこの洞窟の中から牡蠣殻が付着しているのが見つかっているんだ。縄文時代、古墳時代、古代から近世までの様々なものが出土。ここには長ーい時の流れが刻まれている。 今でも「岩屋さん」と呼ばれるこの霊場の洞穴に入ってみよう。


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka



宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


中には観音堂、石仏、石塔など・・・
ぎっしり並んでいて多くの人の昔からの祈りの場であることを体中で感じることができる。それにしてもやさしい顔ばかり・・


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka



宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


水がときどき落ちる音、石窟の中に響く外の鳥の声。
昔からの沢山の石仏たちのいる空間で自然に手を合わせて祈った。


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


色々なお顔がならんで置かれている・・・
あれ、上の洞の壁が・・・


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


すごい、幾つかは洞の壁に直接彫られている!!
一説には弘法大使作といわれる摩崖仏が8体・・・!!
風雨に晒されないであまり痛まずそのときのお顔立ちのままのような・・
あ、ちょっと波音みたいなのが聴こえた気がした・・・
地元ではこの洞窟は約80km離れた島の北部、外海府の岩谷口洞窟につながっているとの説がある。


“ 琴浦 ”

洞窟から出て数分ほどで島を回遊する佐渡一周線(県道45号線)が見えてきた。(宿根木新田バス停付近) トコトコ シニアがちっちゃなカートで過ぎてゆく。この道を横切って下りてゆくと海までは数分。
(画面の真ん中から少し右、ちょい下に)黒っぽい小屋が・・・


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka



宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


何かな?と思って覗いて見たら・・・
お地蔵さん。香ただよう水仙の花がお供えに・・  お地蔵さんが大切に風雪雨から守られていて心あたたまる感じ。
とっても嬉しい。

あれっ? まるでさっき見た石窟の中みたいだね。


宿根木, 佐渡 by T. T. Tanaka


やさしい口元と切れ長の閉じた目。多くの人を守ってきてくれてありがとう。


琴浦, 佐渡 by T. T. Tanaka


ヒヨが元気よく鳴く畑の中の道を下ると漁港の琴浦海岸に到達。
あ、この上にも神社が・・・(善寶寺)。 舟を手入れする人や軽トラが動いている。


琴浦, 佐渡 by T. T. Tanaka


波音が遠くから聴こえるけど、目の前の海は静かでやさしい。
お日様の光を反射している。


琴浦, 佐渡 by T. T. Tanaka


透き通った海水。きれいな色。
あれ、20cmくらいのお魚が泳いでいる。なんか楽しそう。胸ヒレが透明だ・・!


小木, 佐渡 by T. T. Tanaka



小木, 佐渡 by T. T. Tanaka


岩場の方を見てみると・・
カモメがのんびり浮かんでいるなと思ったら、
クイッと小魚を俊敏にくわえて、エネルギッシュに飛び立っていった。


小木, 佐渡 by T. T. Tanaka



小木, 佐渡 by T. T. Tanaka


島の南を見つめた。海の向こうは日本最大の「島」、本州。
漁船が先端を揺らしながら日本海を東にすすんでゆく。
そう。元気一杯!
くっきりまぶしい雲の前のシルエットとなって。


“海と空。 陽と月。 佐渡のスマイル。”

ひょんなことでわかった事実。
日本国内の島で本州を別にすると、最もお寺が多い島は佐渡で500以上もある。

海が荒れ、風雪が激しい時もあるのだけど、T. T. Tanakaも歩けばお寺に遭遇する・・という感じかもしれない。色んな石仏にも遭遇できる。
岩屋石窟。中の石仏たち、入口に並ぶ88体の石仏たち。
その光景にはびっくりしたけどその石仏たちのスマイルはもっと印象的だった。
県道のバス停近くで遭遇したお地蔵さんはわざわざ、ちゃんと風雪雨避けの小屋におさめられていた。近所の人達にお花を活けてもらって・・。その笑みも素敵だった。

自然に育つヤブツバキ(藪椿)の北限は佐渡と言われる。寒い頃から春が訪れる時まで鮮やかな赤からピンクを見せながら、ポトッと落ちる。ツヤツヤした緑の葉っぱの中の椿も綺麗だけど地面に落ちた椿も絨毯のアクセントのように美しい。その自然を大切にして楽しんでおられる人達はやさしい。今でもそのスマイルを思い出す。

南に面した海から上るお日様の光線を感じ、西の海にキラキラ沈む太陽を拝み、その上に現れる月を見上げる。これは大きな海の中にある島にいる人たちの他にない宝物だ。
こんな素晴らしい自然の一日の中で、沢山のやさしさに遭遇できてとっても幸せだ。

沢山元気をいただきましたよー。
ありがとー。
佐渡。


Photos, essay by T. T. Tanaka



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