Travel is ENCOUNTERS
“この海にまた来てしまった”
フロリダ II 篇 #68
Photos, essay by T. T. Tanaka
Local / 2023.11.27
“Do you love sea, or fishing?”
わ、明るくなっている。
海行こう、行こう！
フロリダ西海岸、Cedar Keyの朝が来た。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
フロリダ西海岸、Cedar Key.
飛び跳ねるお魚音。
静かに寄せる波の音。
パチャっという音がして振り向いたら漏れくるお日様の下に人魚が・・。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
あら、びっくりした。こっちにはイルカちゃんも消えたランプの上に・・
この海にはいろんな命が育まれ、お話も生まれてきた。
ヨットのマストも小刻みにおじぎをしている。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
おー。いいなあ二人のシルエット。
それぞれの釣り竿とアクション。投げなおしたり、餌をつけたり、そう、釣りあげたりするとシルエットが交差する。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
まぶしい光の中、潮のくる方向に二人の向きは一緒。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
もくもくと釣り糸をたれて海を見つめる男性。
キャリングケースがぴったりの椅子よね。
釣り桟橋にやってくるみんなも「ここはいいなあ・・最高だなあ・・」の連発。
ときおり頬にあたる海風も、どんどん変わる雲のかたちも素敵。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
ここは島の縁の縁。
後ろからくる道もここでend. 右に行くしかないよね。
この縁で竿を投げ、セットしたチェアでおひさまたっぷり。
波の音もここちいい。
うーんとね。まだ釣れてないみたい。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
ここのポイントはビーチじゃなくって湿地帯みたいにヒタヒタと海水が満ちたり引いたり。小さな島もあって色んな鳥も飛来。釣りフリークたちの絶好のポイントなんだ。
僕；「早いね～ 今日は何狙うの～？」
黄色の男性；「いい場所ゲットできたんだ。今日はヒラメか鯛(snapper)かな～」
僕；「おいしい獲物、祈りますよ～。僕は日本から。君たちどこからなの？」
黄色の男性；「わー、日本、いいなあ。いつか行ってみたいよ。僕はコロンビアからなんだ。2年前からフロリダ住んでいるの。えーっと、彼はペルーから、彼はベネズエラなんだよ。」
僕；「グッドな仲間たちなんだね。いい釣果をね～。」
にっこり笑顔に囲まれて幸せな気分・・
“鳥ちゃん”
朝のお散歩していると、お家の壁にくっきり大きな白頭鷲。
アメリカの国鳥だものね。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
窓に描かれているのはRoseate Spoonbill (バラ色--紅ヘラサギ). 全身紅色でくちばしがヘラのようになっている鳥なんだ。その美しい羽毛は1860年代までねらわれてその数は一気に減ってしまい、いまでも少ない。けど時折、ここでも遭遇できるんだ。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
この子は白いサギ。プールサイドのパラソルと人達を横目に休憩中。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
えっ！ この子はもしかして・・・
そうなんです。日本では絶滅して佐渡で頑張って復活してきているトキ！ (ibis)
日本のトキはピンクなんだけどここのシロトキは全身が白なのよね。顔が赤いのは同じ。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
わー。こういうのはここで初めて遭遇したけど、アパートの駐輪場の屋根に巣作りしています。安心してすめるのかしらね
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
で、時々、電線にもこの調子。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
小魚、昆虫、ザリガニとか大好きみたい。大きなくちばしで一日の半分以上はつっついている。こういう自然の汚染されていない湿地帯が大事なんだよね。
日本のトキたちも普通に田んぼや水際で見かけるように元気になってね。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
と、空を見上げると、お日様の前に大きな鳥のシルエット!!
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
わ、下りてきた、下りてきた！！
ペリカン！！
足の水かきも大きい。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
はい。こんな感じで釣り桟橋に着陸。ほいほいあっちいったりこっちきたり。でっかいので最初びっくりするけど、結構、人懐っこくひょうきんで不器用（ごめんね・・）。
なんと、今まで記録された最長老は43歳とか。
年をとると頭が白くなるらしく・・誰かと一緒じゃん・・
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
頭が白くない左の子は若いのね。こんな感じで至近距離をお散歩しています。釣り人のお魚くれないかなあとねらっているんですね。足の運び方が不器用なんだわ・・
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
ここはみんなの桟橋なんだけど、そう、きみたちの桟橋でもあるわね。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
はい。飛びます。
重そう・・。今日はちょっとお魚食べすぎ・・？
撮れなかったけど、お魚めがけて空中からダイブしてくちばしですくったら、水に浮かびながらごっくん。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
ゆさゆさと翼をはばたいて、スーッとグライダーのように空中をすべって飛び、しばらくしたらまた、ゆさゆさと・・・
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
日本の自然にはいないペリカンちゃん。
鳥にはちょっとこわいようなイメージもあるんだけど、大陸の海でこの不器用で大柄な鳥に出会えるとなぜかほっとするんだ・・
“Walk along the Gulf of Mexico--メキシコ湾岸を歩く”
鳥ちゃんたちにも沢山あえたし、お日様も大分あがってきたから、この勢いで浜辺を歩こう歩こう！
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
僕；「おはよー。今日は気持ちいいお天気ね～」
おじさん；「おー。Sunny Day. Great! 君もいい一日をね～」
白い歯とスマイルが嬉しい。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
まぶしいお日様をあびながら海風、いいよね。
波音も気持ちいい。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
ワンちゃんも慣れた感じで波際をゆく。空にペリカン舞っています。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
お、こちらにもワンちゃん。旅でも一緒。
海は初めてなのか、違う海なのか、久しぶりなのか・・
足取り軽く口元もゆるんでいるよね。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
波打ち際の盛り上がったとこ。やっぱり、高いとこ、のぼりますよね。
そ、それから、一気に下るの。友達より先に。波の音がザッブーン。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
こっちはパパに教わっています。魚をとる網の使い方ね。
「それでさ、こう。そ、こうすくうんだよ・・」
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
僕；(水着姿の横のママに)「いい天気ね。これから泳ぐの～？」
ママ；「そう。この子とお友達とね。この横のビーチ気持ちいいのよ。行くといいわよ～」
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
僕；「ぴっかぴっか素敵な車ですね～」
女性；「ありがとー。このバケーションのために買ったのよ～。ここの海もお食事も最高ね～」
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
色んな人が行ったり来たり。
海岸通りは楽しい。
フロリダ州内だけじゃなく、北はカナダからも地を這って南のこの地まで来る人達もいる。
このバイクも何マイルクルーズしてきたんだろうか。
海風に葉っぱが揺れるパームツリー。
のんびりゆっくり老人たちもゆく。
“海のある町、Old and New”
このCedar Keyというメキシコ湾に面するフロリダ半島西海岸の小さな町は大好き。20回ほども！訪問している。かつて人口は1930年代に1000人を超えていたけど徐々に減って今は600人余り。南北戦争より前の1840年代から、この港町から東海岸さらに北部とつながってゆく鉄道の起点として、また、鉛筆工業向けの杉材製造や、漁業などで発達していた。でも、他の町の発達や産業の変化、そしてハリケーンにもやられたりして衰退してきた。が、今は自然環境が守られリゾートとしての色合いも強くなってちょっと違う風景になってきた気がする。町を歩いていると古く残る建物も再び元気になって新しい住宅もまざっておもしろい。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
南部特有の強い日差しをさけるポーチに国旗がゆらぐ。
クリームイエローの壁がきれい。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
こちらは正面に海の新しいお家。
きっと、ときどき訪れるイルカのジャンプも家の中から見えるのね。
年々育つパームツリーも嬉しい。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
街中といってものんびりしたストリート。芳しいコーヒーの香りに振り返ったら、そこに古い写真。1860年に開通した鉄道の当時だそう。フロリダ半島西のCedar Keyから東海岸のFernandinaまで約250km なんと、今回のフロリダ旅の最初の日に訪れた東の島、アメリアAmelia Island(#63コラム)に駅があったって！
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
当時の建物の前は昔の時間の流れも感じられて面白い。
日差しよけがあるのは昔からなんだね。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
ちょっとこんもり丘になったあたり。
元気いっぱいの緑の中に三角の屋根。白いデッキ。
すっとのびる直線とクロスする直線が美しい。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
こちらは、なんとOyster (牡蠣)でつないだ入口のリース。
素敵よね。
きっとこの地の自然や生き物が大好きなんだよね。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
カラフルなBEACHの文字と矢印。
うん、きっと、ビーチ好きなのよね。それにやさしい。
だって、矢印はここを訪れる観光客さんを思ってですもん。
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
これにはびっくり！！
平面の壁に描かれた絵なんです。右の枠外はリアルね。昔の光景なのかしら？ デッキを行くと水辺に・・・
でもこれ、リアルにも見えちゃうから・・そうよね、そのまま行くとぶつかっちゃうかもで足元注意(WATCH YOUR STEP)という注書きが・・。それがまた、別のボードに書かれて斜めに壁にリアルで立てかけてある。だまし絵みたいでとっても楽しい。
今と昔の光景と？
Cedar Key, Florida, USA by T. T. Tanaka
家の間からメキシコ湾、
すくすくと育ったパームツリー、
遠くに島、
光る窓、白い壁、
ドングリのなる大きな樫の木・・・
来るたびに少しずつ変わってゆく・・・ でもこんな景色を見たくって何度来たことだろう。そしてまた来るのだ。
“この海にまた来てしまった”
何度も来てしまう海のある町。
来るたびに、
あら、あれがなくなっちゃった。
あら、こんなのができちゃった。
あら、あの鳥たちに出会えなかった・・・
素敵だった感覚をまた同じように味わいたいと思ってくるんだけど
冷静に考えるとそんなことはありえない。
うーん。旅はやっぱり新しいところに行かないとと頭では思うものの、
気が付くとまた来てしまう町。
それは故郷というのかもしれない。
コバルトブルーの透き通った海があるわけではない。
繊細で上品でこじゃれたレストランやバーがあるわけでもない。
古い町だけど素晴らしいお城や砦があるわけでもない。
有名な美術館があるわけでもない。
でも、魚をとるのも飛ぶのも不器用な大きなペリカンちゃんは必ずいるし、
浅瀬にせりだす釣り桟橋と釣り人たちは必ずいるし、
キラキラ光る太陽は海に沈んでゆくし、
月は海面を反射させながらその姿をみせるし・・・
こんな景色たちに、こんな空気にまた触れてホッとするところがあるのかもしれない。
ありがとう。Cedar Key.
こんな町への想いが自分の中に出来るとは思わなかったけど、
とっても幸せだ。
うん？ たなか君、なんかつぶやいてるけどさ、たしか、
「なにがいいってさあ、コロナビールとピナコラーダとか飲めて、地のものシーフード腹いっぱい食べられるんだぜ。やっぱ最高じゃん！！」
とか自慢していなかったっけ？
See you again.
Photos, essay by T. T. Tanaka
旅はENCOUNTERSアーカイブ↓
フロリダ篇
カリブ篇
アリゾナ篇
ワイオーミング篇
アソーレス篇
グリーンランド篇
ネブラスカ篇
ラトビア-バルト海篇
台湾篇
Tag
Writer
-
T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。
