World street skateboarding Rome 2023
世界のトップスケーターたちがローマに集結 -02-
ーMEN’S FINAL ー
Photos:Leonardo Rodriguez
Interviews & Text:Aco Hirai
Local / 2023.07.17
ここは、来年のパリオリンピックへの出場権をかけたスケートボードの世界大会「World street skateboarding Rome 2023」の会場。
少し前、女子決勝で優勝した赤間選手と3位の織田選手の大健闘もあり、男子決勝へ進出した唯一の日本人、白井空良選手への期待もより一層膨らんでいた。
決勝前の男子練習時間。
決勝前の練習を終え、ウォーミングアップエリアへ向かう2人のファイナリスト、ポルトガルのグスタボ・リベイロ選手とカナダのコルダノ・ラッセル選手に遭遇したので、一言だけコメントをもらいたい旨を伝えると、2人とも笑顔で「もちろん!」と返してくれた。
―グスタボ、今日のコンディションはどう?
とってもいいよ! あとはファイナルを待つだけ、1位を目指してやるしかないね。
―コルダノ、決勝戦を前にどんな気分?
少し不安を感じてるけど、きっとうまくいく。この日のためにたくさん練習してきたから、あとはベストを尽くすだけだよ。
今回のファイナリストは、コメントをくれた2名の他、去年のローマ大会覇者、ナイジャ・ヒューストン選手、毎回ダイナミックな技で圧倒的な存在感を見せつけてくれるオーレリアン・ジロー選手、東京オリンピック銀メダリストのケウビン・ホフラー選手。そして、難易度の高い技が注目される白井空良選手、ジャガー・イートン選手、フェリペ・グスタボ選手の8名。
中でも、準決勝を2位で通過し決勝へ進んだ白井選手と、去年8月に今後のキャリアを左右するほどの大怪我を負い今回が復帰後2度目の大会というナイジャ選手、この2人のライディングに注目が集まり、ファンたちの期待も大きかった。
そして、決勝までの結果を見ても、誰が優勝してもおかしくない、そんなハイレベルなパフォーマンスに私の胸も高鳴っていた。
すっかり日が落ちて薄暗くなってきた、男子決勝直前のパーク。
そして、9:00pm。
パーク内は照明に照らされ、一段とクライマックス感が増すなか、男子の決勝が始まった。
パリオリンピックの出場権争いが本格化したこともあり、会場にいる選手たちに少し緊迫した空気が流れているのを感じた。
まずは、準決勝を8位で通過したカナダのコルダノ選手から。
巧みな技でオーディエンスを夢中にさせる人気者、コルダノ・ラッセル。
今年2月にシャルジャで行われた世界選手権の覇者。東京オリンピック・ストリート競技で銅メダルを獲得している実力派、ジャガー・イートン。
90点を超えるベストトリックを2本メイクするも、5位という結果に終わったフェリペ・グスタボ。
高得点を狙ってトリックに挑むが、惜しくも表彰台には届かず4位に。グスタボ・リベイロ。
ケウビン・ホフラーは、2本目のランで91,51の高得点を打ち出し暫定1位に立つが、ベストトリックの点数が思うように上がらず3位に。
準決勝では好調なライディングを見せていた現在世界ランキング1位のオーレリアン・ジローだが、決勝では難易度の高い技に挑戦したせいか、一度もメイクすることができず、8位という結果に終わった。
そして、1本目のランから完璧なライディングを披露し、観客の心を鷲掴みにしたように見えたナイジャ選手だったけど、さらに観客を熱狂させたのは、4本目のベストトリック。
93,96という決勝戦ベストスコアを叩き出し、この瞬間に彼の優勝が決まった。
卓越したライディングテクニックで絶対王者の貫禄を見せつけるナイジャ・ヒューストン。
高得点を狙ったハイレベルなトリックに挑む白井空良。
そして、それに続く形で大歓声を誘ったのは難易度の高い技に果敢に挑み続けていた白井選手。2本目のベストトリックで91,91という高得点をマークした後もその勢いは衰えず、4本目で高難度の複合技をメイクし、93,16というさらに高い得点を獲得。トリックが決まった瞬間に、両手を振り下ろし喜びを表現する白井選手の姿が印象的だった。
このトリックで、白井選手は暫定2位に割って入った。
最終となった5本目のベストトリックでは、8人中6人がメイクできず、ジャガー選手、フェリペ選手が90点台を叩き出すも、順位は変わらずフィニッシュ。
高難度な技に挑戦し、白熱した展開を見せた本大会。それを制したのは絶対王者のナイジャ選手だった。そして、白井選手は見事2位を獲得。3位はケウビン選手。そして、インタビューに答えてくれたグスタボ選手は惜しくも4位、コルダノ選手は7位という結果に終わった。
<男子決勝結果>
優勝 ナイジャ・ヒューストン(アメリカ合衆国)276.51
2位 白井空良(日本)263.36
3位 ケウビン・ホフラー(ブラジル)259.28
4位 グスタボ・リベイロ(ポルトガル)256.43
5位 フェリペ・グスタボ(ブラジル)254.05
6位 ジャガー・イートン(アメリカ合衆国)250.94
7位 コルダノ・ラッセル(カナダ)241.76
8位 オーレリアン・ジロー(フランス)65.47
優勝が決まり、国旗を掲げながら観客席に最高の笑顔を向けるナイジャ・ヒューストン。
大怪我からの復帰後初の優勝を勝ち取ったナイジャ選手。国旗を背負って報道陣と観客の元へ向かってくる彼からは、喜びと少し安堵の表情が伺えた気がする。
ファンに囲まれ一緒に写真を撮ったり、サインをしたり、ファンと交流を深めるナイジャ・ヒューストン。
アワードセレモニー。左から白井空良、ナイジャ・ヒューストン、ケウビン・ホフラー。
そして、セレモニーが終わった後、準優勝を果たした白井選手に話を聞いてみた。
決勝が始まる前、ファンにサインをする白井空良。
―おめでとうございます! 今年はどうでしたか?
ありがとうございます。去年の大会で滑ってみて今まで滑った中で一番苦手なパークだということがわかっていたので、正直今回もキツイかなと思いながら臨みました。でも、去年の経験があった分、このパーク用に練習ができて、初日の練習の時に自分の滑りがハマったので、少し手応えを感じていました。2位という良い結果が残せたのですごく良かったです。
―昨日(準決勝)もすごかったですが、決勝4本目のトリックで93.16が出た時はどんな気持ちでした?
そうですね、会場の盛り上がりや自分のトリック的にも決まれば高得点が出るのは予想できたので、決まった時に2位を確信しました。あの時点で、1位が厳しい状況というのをわかっていたので、2位という位置を目指して戦っていました。いい結果を残せて本当に良かったと思います。
―ありがとうございました。
と喜びに満ちたコメントをもらえた。
11:00pm。
来年に控えたパリオリンピックの出場権がかかった大会ということもあり、選手一人一人がベストを尽くし、白熱した展開を見せた本大会。そんなエキサイティングな一夜が終わった。
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Aco Hirai
2004年オーストラリア移住、2005年帰国、2019年マルタ島留学、2020年イタリア移住。 海外で活躍する日本人を取材したImhereマガジンを不定期で発信しています。(インタビュイー募集中)