“Travel is ENCOUNTERS” (ネブラスカ篇) #44
Photos, essay by T. T. Tanaka
Local / 2021.10.29
“大平原のポンペイ(A Prairie Pompei)”
昨日のアイルランドloveのO’Neillの余韻にひたったまま、今日は、南東に針路をとってネブラスカ州の端にある最大都市、オマハまで向かう。
っと、その前に気になったところがあるので寄ってみることにしたんだ。
40kmほど東にあるAshfall Fossil Beds State Historical Park。
そこで頭をガーンとなぐられるような衝撃が待ち受けているとは・・・。
1200万年前(※類人猿アウストラロピテクスはずっと後の100~370万年前)に生きていたサイ! の化石に遭遇した。それも体の一部分とかではなくてまるのまま。さらに一頭分とかいうのではなくて、何頭も何頭も。母サイやそのすぐそばにいる子サイも、そして、胎児をやどったままのサイもずらーっと発掘されている。
ちょうどたった50年前! の1971年、この場所はトウモロコシ畑だったんだけど、赤ちゃんサイの化石がまるごと発見された。そのときから、出るわ出るわ・・・。
ここは亜熱帯の草原とジャングルが広がっていたのだ。そして、東アフリカのサバンナにつながる三本角の鹿、キリンラクダ、4本牙の象、馬(browsing horse)、ハリネズミ、角なしサイなどが沢山闊歩していたんだって。それが、当時あった巨大火山---現在のロッキー山脈西、アイダホ(Idaho)州南西部にあったとされる---が大噴火してしまった。細かい粉状の火山灰が吹雪のようにアメリカ大陸に飛び散り当時の生き物たちの多くは呼吸困難となり火山灰の中に埋もれ死に絶えていった。その後、北から伸びてきた大氷河! で火山灰ごと、ほとんどは流れて霧散してしまった。けれど、ここのエリアだけは奇跡的に流れず、残っていた。2m以上も灰が積もったまま。す、すごいドラマ。。
今も、コツコツと研究者たちがその灰を掃いて化石を発見し、分析・研究を続けている。
その現場が州立公園となって一般の人も見ることができる。
Ashfall Fossil Beds State Historical Park, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka
これはレプリカなんだけど、発見されたサイの化石。体、ぜーんぶ。すご。
Ashfall Fossil Beds State Historical Park, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
40 m × 40m のエリアにこんなにサイの化石がまんまたーくさん発掘されている。目の前で見学できる。壮観。こんなの初めて見たよ~。唖然。。
Ashfall Fossil Beds State Historical Park, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
これはサイの前足化石。
Ashfall Fossil Beds State Historical Park, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
これもサイの前足化石なんだけど、色がついているのは肺が病気でやられている証とのこと。
Ashfall Fossil Beds State Historical Park, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
Ashfall Fossil Beds State Historical Park, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka
サイの胸骨、頭蓋骨。リアルもリアルなんだけど、とても1200万年前とは思えない・・。
Ashfall Fossil Beds State Historical Park, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
発掘のまだ一部なんだけど、全体を覆うように屋根ができて、風雨から守られている。数メートルの厚い火山灰の層がどーんとある。これらはまだ崩して掘って調査されていくんだね。何が出てくるかまだまだ楽しみ。
Ashfall Fossil Beds State Historical Park, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
Ashfall Fossil Beds State Historical Park, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
発掘エリアはまさに大平原だけど少し傾斜がある。この傾斜が奇跡の1200万年の保存につながった。左の屋根のあるところがさっきのサイの発掘エリア。右の土の部分にも化石が沢山出土している。
自然のちょっとしたあや。そしてこんなに人口が少なく開発されず、さらにたまたま人が発見したという奇跡の連鎖。まさかこの下に大化石たちが眠り続けて埋もれていたとは。
なるほど、「大平原のポンペイ」といわれるわけね。でも実際はポンペイよりもっともっとはるかに古い。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
“Color pages”
Ashfallのタイムカプセルを出て妙な感覚のまま大平原を南東に走ること3時間弱。
久しぶりの大都市、Omaha。人口40万人。
日本に住んでいると100万人以上の都市が10個くらいもあるから、その都市大きくないじゃんと思うかもしれない。でもネブラスカ州の最大都市。アメリカでは大都会なのだ。
今回のネブラスカ州の旅で立ち寄った町たちはずーっと数百人からせいぜい数千人だったので、都会に来たぞ~! の感じで緊張感もちょっとあるし、同じ州とは思えない不思議な感覚になる。
広ーいグリーン。美しく刈られた草っぱらの向こうにはビルが立ち並ぶ。
懐かしいというか、自分にとって見慣れた風景なんだけど、今まで見続けてきた大自然はもう見られないのかと思うと複雑な気持ちでぼーっと見入ってしまった。
ブーン・・・・とすぐ目の下を坊やが手を広げて飛行機が飛ぶように走ってゆく。
そうだそうだ。小さいときに飛行機のパイロットになってみたくってよくやった。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
女の子もお日様浴びながらお母さんにダンス指導うけてます。そうそう。今うまく回れた。きれいな色。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
こっちはwedding party記念撮影中。
みんなでそろってジャンプ! ピンクのドレスも素敵。
はい。パチリ。
都会だわ~。人いっぱいも楽しいじゃん。後ろの川の流れもきれいね。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
「わーい。キャッキャッ~」
パパが坊やを抱っこして高いところから見下ろす景色見せてあげています。
一面がグリーン。
少しでも高いところが嬉しいのよね。
案の定、ママに、
「何やってるのよ~。やめなさーい。あぶないでしょ~」
って二人とも怒られています。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
こっちでも子供たちの歓声が聞こえると思ったら、大小の恐竜クラフト。今にも動き出しそう。まさかここの人たち、大昔の恐竜時代の感覚も持ち合わせているのかしら・・? いろんないきものもいてストリートが楽しい楽しい。恐竜、笑っているじゃん。カラフルだしね。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
鉄板をグイっとまげて溶接してビビッドにペイントして大胆。
へこたれませんよ。自宅のお部屋にも玄関に飾っても。
子供の時のお祭りやイベントでのにぎやかな出会い。
これから先、振り返ると人生の豊かなカラーページになるよ~。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
“Taste of Omaha”
いい匂いがいっぱいしてくるなあと思った。
ちょうどやっていたフードフェス。
オマハはシカゴよりもお肉の産地として有名で全米一位だったこともあってステーキの本場といわれている。畜産物も穀物もお野菜も豊富だから、チーズ、コーンビーフをライ麦パンにほくほくにはさんだサンドイッチもおいしい。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka; by T. T. Tanaka
あ、こっちはタコス&ホットドッグ。
この香りの中で歩くとたまりません。
笑いも止まりません・・・
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka; by T. T. Tanaka
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka; by T. T. Tanaka
パン屋さんもあるし、あ、日本料理お寿司屋さんもあるのね。
都会ってそういうことなのかしら・・。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka; by T. T. Tanaka
広い通りに出たら、あれ、交差点でワイワイ歓声が・・・
えーーー
車輪がついてて動いていくよ~
10人くらい乗っているし。
あらーーー
足でみんなでペダル踏んで動いているんだ。
にぎやか~。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka; by T. T. Tanaka
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka; by T. T. Tanaka
な、なに~~~!
これ、屋台だったの?
自転車のシートみたいなのに乗ってみんな適当にペダルこいでるけど、ビールとか飲んでるし、つまんでいるし。あ、前にまじめな運転手がハンドル握っていました。わー。そりゃ楽しいわ。イエーイ!
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
“元気いっぱい”
なんと、ストリートでwedding photo
控えめにうつむいて照れてる男性と笑顔の女性と。
古い建物と新しい風と。
わ、いいわ~
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
記念shooting。
カメラも機敏に使いこなし、そうそう。ポーズいいなあ。
お、スタッフ全員女性です。
大切な素敵な一コマをゲットしてね~。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
こっちはホテルの前を闊歩してゆく女性。
後ろでは友達といっしょにエイッとスマホで記念ショット。そ、みんなでスマイル。ウキウキ。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
ストリートの途中にある植木のサークル。日差しがまだ強いもの。まぶしいの避けて、木陰でおしゃべりが楽しい。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
ミネラルウォーターを飲む僕の後ろから笑い声が近づいてきた。
振り向いたら、スマイルが元気いっぱいに近づいてリズミカルに過ぎて行った。
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
“みんな行くよ~”
大都市にはビルが立ち並ぶ。影があっちこっちに。
でも、私たちの影が断然楽しい。
だって踊る影なんだもの。
みんな行くよ~
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
週末はこうでなくっちゃ。
晴天。まぶしい。
ベビーカーで行くよ~!
肩車で行くよ~!
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka; by T.T.Tanaka
バイオリンのおじさんいるし、あっちからも、こっちからもみんなくるじゃん。
わーい。お日様受けて行くよ~!
Omaha, Nebraska, USA; by T. T. Tanaka ; by T.T.Tanaka
おっとー。
サングラスのぼく。
いえーい。
「パパ、Go! Go!」
お父さんエンジン、あまり吹き上がりませんけど・・・
ウィークエンドの町のシルエットは楽しい。
みんな、行くよ~!
“I got rhythm”
ネブラスカに着いてから、ずーっと大平原をぐるーっと回ってきた。立ち寄った町はほとんどが数百人のところだった。一週間ぶりくらいに戻ってきた都会。
その都会に戻る直前にまさかAshfallの化石群に出会うとは思ってもいなかった。
アメリカ大陸にサイや象やラクダなどがかつて闊歩していた時代があったなんてこと、知らなかった。大火山の爆発で消えていったことや氷河でその多くの痕跡も流れ消えていったことも・・大陸というのは自然もドラマに満ちあふれている・・・
そして都会。
今までの一週間とあまりにも違う感覚に、でも、その感覚に普段なれてしまっていたことに気づいて、ちょっと気持ちが沈んでしまった。
でも、それを打ち消してくれたのは元気いっぱいの子供たち、親たち、女性たち、そして彼らと一緒にいるクラフトや食べ物たちだった。そうなの。いろんな人たちに出会えるとエネルギーをいただいて元気になれる気がするんだ。
コロナ禍で忘れてしまっているエネルギー。
自然は心をきれいにしてくれるし、やっぱり人に会えるのは嬉しい。
気が付いたら心も足取りもリズミカルになっていた。
ありがとう。ネブラスカ。
I got rhythm.
※同名の “I got rhythm” は、1930年にGeorge Gershwin(ジョージ・ガーシュイン)が作曲、お兄さんのIsrael Gershwinが作詞した大ヒットミュージカルナンバー。お金で得られるものが大切じゃない、私には愛する人がいるもの、私にはこのリズムがあるもの・・
そうなんです。体中で感じるリズム、忘れがちだけど大切にしたいです。多くのmusicianたちに愛され続けているこの曲。ボーカルでは、僕の大好きな小林桂さんや小野リサさん、そして、エラ・フィッツジェラルド、クリス・コナー、メル・トーメ、ヘレン・メリル・・・・たちがカバーしています。わあ・・いいなあ・・・ 機会があれば聴いてみてくださいね~
Photos, essay by T. T. Tanaka
イラスト by 瀧口希望
(※2021年より前の取材を元に書いております)
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T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。