OHYA BASE×LUKE magazine
『OHYAのリアル。』
宇都宮市大谷町のサーティエイジャーズにインタビュー
Contributed by LUKE magazine
Local / 2023.02.22
大谷町には採掘場跡地を利用した地底湖クルージングなどの様々なアクティビティを手掛ける「OHYA UNDERGROUND」というプロジェクトが存在します。そんな「OHYA UNDERGROUND」の拠点「OHYA BASE」には、山岳ガイド、手芸家、料理人、作家、システムエンジニア…などあらゆるメンバーたちが集まっています。
今回はLUKE magazine編集部が「OHYA BASE」を訪れて、大谷町のサーティエイジャーズにインタビューを敢行。最新号のテーマである「上京」や移住をトークテーマに地域の魅力に迫りました。インタビューには、手芸家・信江彩乃さん、料理人・髙橋知也さん、OHYA BASE管理人・藏所千尋さん、そして宇都宮市役所に勤務する酒井聖也さんにもオンラインでご参加いただきました。
インタビューはOHYA BASEで焚き火を囲んで行いました。
LUKE:今日は大谷町で暮らしながら活動をする皆さんに、移住と地域の魅力についてお聞きできればと思ってます。まずは自己紹介をお願いできますでしょうか。
藏所:OHYA BASEで管理人を務めています。栃木県宇都宮市出身で、Uターンをして4年目です。Uターンをするまでの約15年間は東京で暮らしていました。ご縁があって、2019年の春に大谷に来て、この場所で何ができるか、どのように知ってもらうかを考えながら、「大谷でできることを増やす場所」をコンセプトに掲げているOHYA BASEを拠点に仕事をしています。
信江:普段は糸を使ったアート作品の制作や販売を行っております。私も宇都宮市出身で、2016年の春に宇都宮にUターンをして現在の活動を始めました。OHYA BASEでも展示やイベントなどを開催しています。
髙橋:「Punto 大谷町食堂」というイタリアンをベースにした食堂を経営しています。地元はこっちではなくて、埼玉県川越市出身です。
酒井:宇都宮市 人口対策・移住定住推進室にて移住相談などを担当しております。本日はオンラインですが、皆さまのお役に立てる話ができればと考えております。よろしくお願いいたします。
蛍光イエローのカバーが目を引く、LUKE最新号。
LUKE:LUKE最新号のテーマは「上京」なのですが、皆さんが大谷に住み始めたきっかけやUターン経験者の方には「上京」についてお聞きできればと思います。
信江:大学進学にあたって、東京の寮に入りました。大学4年のときに妹も上京するタイミングで都内の寮を出て埼玉へ、卒業後の職場が都内だったのでそこから通いました。地元にUターンしてきた理由は、都会での仕事がストレスになってしまったことがきっかけです。5年前の28歳のときに実家に帰りました。私は帰省するのが好きでしたし、実家は安心のかたまりです。電車1本で都内に出ることができるのも、この町のいいところですよね。
藏所:私はLUKE vol.2で取材を受けたときにも答えたのですが、離婚をしてシングルマザーになったことがきっかけで宇都宮市にUターンしました。不思議と地元以外の場所に行くという選択肢はありませんでした。子供が小学校に上がるタイミングだったのですが、地元にいる私の同級生に小学校の様子などを聞くことができたのも安心できましたね。でも久しぶりに実家に戻ったら、15年経っていますし、両親とのリズムがやや合わなくなっていたりもして、今は近所に部屋を借りています。いい距離感で、おじいちゃん、おばあちゃんに頼らせてもらっています。
髙橋:妻の実家が近いという理由で、川越から引っ越してきました。東京で暮らしていたこともあり、都会の便利な暮らしを知りながらも、埼玉では車移動も多かったので、そこまでギャップを感じることはありませんでした。強いて言えば近くに本屋がないのは気になりました。僕は料理人で手に職があるので、どこに行っても何とかなるだろうなという気持ちはありましたね。
手芸家/ANWORKSの信江彩乃さん。
LUKE:一度は実家を離れた皆さんにお聞きしたいのですが、地元を出た時の気持ちは覚えていますか?
信江:田舎で生まれたので「嬉しい!おしゃれ!」という考えが、安直ですがありました。とにかく地元を出るワクワクが一番で。大学の入学式に母が来てくれたのですが、入学式を済ませて母と別れて電車のドアが閉まった後には涙が出ました(笑)。帰ろうと思えばすぐ帰れる距離で電話だってありましたけど、家族はとても大切な存在だったので、ワクワクと寂しさがありましたね。同じ寮には遠方から来ている方もいたので、すぐに寂しさは緩和されたんですけど。
藏所:私も地方出身者として「雑誌のような世界が待ってるんじゃないか?」というような憧れが東京にはありました。ミュージシャンの小沢健二が好きだったので、オザケンの歌っている世界観があると思っていて、キラキラしていて何でもあるというような気持ちだった気がします。
OHYA BASE /管理人の藏所千尋さん。
LUKE:実際に東京で暮らしてみていかがでしたか?
藏所:はじめの頃はホームシックになってしまい、夕方になると部屋でめそめそしていました。実家であればお母さんがご飯を準備してくれる時間に孤独を感じてしまい、慣れるまで辛かったです。
信江:私は寮暮らしだったので寂しさはそんなにありませんでした。門限が22時と早いのがちょっと気になりましたが…。あとは普段車いらずというのがびっくりでしたね。好きなところに歩いて行けちゃうのがすごいと思いましたし、通学の時間でさえも楽しかったですね。
料理人/Punto 大谷町食堂の髙橋知也さん。
LUKE:実家を出たとき、親の気持ちを考えてみましたか?
藏所:全然考えていなかったですね…。
信江:言われてみれば、考えていませんでした。前を向くことしか考えていませんでしたね。妹がいるということも関係しているのかな。
髙橋:僕は友人の家を転々として、少しずつ埼玉の実家から離れていったんですよ。荷物が少しずつなくなっていって。一番親のことを考えていないかもしれません(笑)。
*
宇都宮市役所/人口対策・移住定住推進室の酒井聖也さん。
LUKE:ここ数年で大谷には30代半ば〜40代くらいの方は増えているんですか?
髙橋:体感としては同世代の人が集まってきた感じはしますね。田舎町だった頃の大谷を知っている上の世代の方は、引いたところから様子を見ている感じですね。「なんだ?」という視線もありますが、「若い人が盛り上げようとしているんだから」という人もいて。
LUKE:大谷周辺に住んでいて苦労することはありますか?
信江:車がないとどこにも行けない。私が住んでいるところは山なので、行きは良くても帰りは辛いとか。
藏所:やっぱり車と選択肢の少なさですかね。子供の習い事ひとつとっても、都会に比べ選択肢は少ないですし。そういう部分は正直地方は弱いですよね。
髙橋:輸入品の食材を買うと送料が高くなったり、都会であれば簡単に手に入るものが買えないこともあります。
LUKE:都会で暮らしつづけていたら気付かないことでもありますよね。酒井さんにお聞きしたいのですが、現在、宇都宮市に移住を検討している方や移住者は増えているのでしょうか?
酒井:移住の定義はさておき、単純に転入、転出者数で考えたとき、約18,000人は転入し、約18,500人くらいが転出している状態です。数字だけを見ると転入者は減っているのですが、実際の移住相談自体は増えています。令和2年度の相談件数は50件でしたが、令和3年では160件に爆上がりしていて、今年は去年よりも問い合わせが増えています。
LUKE:なぜ相談件数が増えているのでしょうか?
酒井:移住というものが注目を集めているという背景がありますね。テレワークが広まったということが大きいです。完全にテレワークの方もいますが、週に何回かは出社の必要がある方もいます。その場合、通勤1時間圏内の場所で探す傾向があって、東であれば宇都宮、高崎、つくば辺り。西であれば三島、静岡、長野、小田原など。コロナ禍を経て働き方、暮らし方を考える方が増えているので、ゆとりのある地方での生活を選択する方が増えています。暮らし方の意識の変化も移住相談が増えている要因なんじゃないかと思っています。
OHYA BASEの庭ではお子さまも楽しむことができます。
LUKE:宇都宮市への移住について、ストロングポイントはどこだと思いますか?
酒井:何よりも東京への近さ。新幹線を使えば、最短48分で東京まで出ることができます。地方にいながら、東京でも活動できることは宇都宮市ならではとPRしているんです。また、県内の他のまちを気軽に楽しむことができることも宇都宮市の強みかと。私もコロナ禍で県外に出ることを控える中で、宇都宮市内はもちろんのこと、県内他市町含め、こんなに楽しめることがあるんだなと気が付きました。交通の要所として栄えてきた町なので、鉄道や高速道路が通っているところも利点としてあります。
LUKE:酒井さんが実際に宇都宮市に住む中で、もうちょっと改善してほしいと思う部分はありますか?
酒井:宇都宮市役所の職員としても、いち住民としても公共交通が弱点というのは課題だと思っています。公共交通への取り組みもしているんですけど、より強化していきたいですね。文化施設も少ないんです。栃木県を北上すると東北になるので、宇都宮市は「関東最後の地」として東北に行く前の拠点とされていた歴史もあります。現在の宇都宮市は文化を発信していく施設や美術館などは弱い部分もあるので、そういった部分を充実させていけば、より楽しい町になると思っています。
LUKE:実際に宇都宮市に住んでいる方の好感度指数などはありますか?
酒井:全国で調査をしているわけではないので、比較は出来ませんが宇都宮市の住人は9割を越えて自分の住んでいる町が好きだという結果が出ています。その数値はどんどん上がっていますね。そうはいってもアンケート結果ですし、聞く人によっては「何もない町」だとおっしゃる人もいらっしゃると思います。そのような感想が挙がらないように、宇都宮市のいいところをしっかりと伝えられたらと思っています。
信江:東京に出た同級生に「何であんなに何もないところに帰るの?」って言われたこともありますが、私は「何もなくてもいいじゃん!」って思いましたね。だからこそ誰も気が付いていない、いいなと思えるポイントを発見したときは嬉しくなります。
OHYA BASEのクリスマスマーケットに出店していた、信江さんのブース。
LUKE:地元を出る前と現在で、宇都宮や大谷に対して見え方や捉え方に変化はありますか?
信江:もともと私は大谷にはほとんど来たことがありませんでした。大人になってから、自分の足で初めて来たんです。自分が子供の頃とは大分変わってしまったという話は聞きます。私が市内を車で走ってよく思うのは、駐車場があまりないということと、大人になったらあそこに行くのがステータス!と感じていた場所がなくなってしまった上、跡地に何もないことが寂しいですね。
藏所:私は宇都宮に戻ってきたのが4年前なのですが、これがもし10年前に帰ってきていたら、こんなに面白くなかっただろうなと思いました。東京に憧れて上京をして、戻ってきても自分らしい仕事は何もないなと。でもこうやって働ける場所があって、音楽や映画などのカルチャーの話ができる人が身の回りにいるというのは、昔と変わった点でしょうね。
LUKE:最後に地方移住を考えている方に、PRポイントなどメッセージをお願いします。
酒井:宇都宮市は「共働き子育てしやすい街ランキング2021」で、全国2位をいただいています。待機児童問題をゼロにしたり、高校3年生までの医療費の無料化などを行なっているんです。子育て支援といえば明石市が有名ですが、引けを取らないくらい評価をいただいている部分です。現在子育てをされている方はもちろん、これからご予定がある方にはぜひ宇都宮市を選んでいただきたいですし、宇都宮市だからこそ実現できる、市内にとどまらず、市外まで楽しめる生活を送っていただければと思います。いつでもご相談お待ちしております!
今回のインタビューは焚き火を囲んで実施しました。
LUKE:酒井さんありがとうございました!最後に今回のゲストの皆さまから大谷の魅力についてお聞きできればと思います。
信江:大谷はもともと、石の産業ですごく栄えて、それが衰退して廃墟だらけになってしまった地域で。まだ発展途上の段階で活動できているというのが自分の中ではポイントになっています。自分たちが頑張って、さらに若い方に来てもらいたい。それをどう発信していくかは考えていかないといけませんね。宇都宮、大谷を盛り上げたいというのが自分の夢でもあるので、発展途上の余白のある町で活動ができているのは、いいタイミングだなと思っています。
髙橋:発展途上の場所なので、移住してきてもすごく入りやすいと思います。出来上がったところに入るよりも、これから町が活発に循環し始めるタイミングで関われるって人生でそんなにないと思いますし。
藏所:大きな部分はふたりと同じです。まだまだ余白がある町。自分の動き次第で何とでもできそうなムードがあるのが、大谷のいいところで、いくらでも誰でも関わり代があります。ここで友達ができることもあるでしょうし、横の繋がりから声がかかって何かが始まることもありますので。地方のほっこり感だけじゃない面白さがあるエリアだというところに魅力を感じていますし。そんなちょっと尖った面白さが大谷にはあると思います。
大谷の皆さま、今回はインタビューを引き受けてくださりありがとうございました!
《information》
OHYA BASE
栃木県宇都宮市大谷町。「大谷でできることを増やす場所」を目指す小さな複合施設です。採石場跡地を活用したアウトドアアクティビティOHYA UNDERGROUND拠点、コワーキングスペース、コーヒースタンドなど、大谷で遊ぶ/働く/過ごす人たちの基地=BASEのような場所です。
IG:@ohyabase
LUKE magazine vol.3
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