“Flavorful Taipei 台北”

Travel is ENCOUNTERS

“Flavorful Taipei 台北”

台湾篇 #61

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / 2023.04.19



“新都会オアシス 松山文創園区(Songshan Cultural and Creative Park)”


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka



台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


ワンちゃんが懸命に何かくわえながら駆け寄ってきた。僕に近づくなりボトン。落としたのはハンドボール。あらー、君のくわえた歯の跡がたくさんついてる。このボール、大好きなのね。
ここは広大なウッドデッキ。しかも大都会、台北なんだ。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


緑いっぱい。お日様も目いっぱい。池もあるし、遠くにはヤシの木とビルのシルエット。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


大きな池に映るのはホテルや書店などが入っている台北文創ビル。反対側をみると太陽がどんどんのぼってゆく。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


是非一回ここへと淳ちゃんと典子さんに連れてきてもらったんだ。ここは2001年に台北市政府に市指定旧跡となり、2011年に松山文創園区に衣替えして一般開放された広大な元たばこ工場跡なのだ。日本統治時代の1937年に台湾総督府専売局松山菸廠として設立され、後に台湾菸酒公売局の工場として1998年まで稼働。最盛期には20億本のたばこが生産され、2000名の工員たちが働いていた。託児室、病院、宿舎、娯楽室、食堂などが完備された大きな工業村となっていたとのこと。広大な池は、消防、通風、水量調節のためにつくられた蓮の池だったもの。今はカエルや様々な虫たちが棲息するビオトープ(生態池)。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


この建物はかつてのボイラー室で重油を燃焼させ蒸気をつくり工場の動力を発生させていた。左には当時の煙突も残っている。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


保存された建物の前を様々なひとたちが通ってゆく。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


発足当時の表札も残る当時のオフィス棟も工場棟もいろんなアートの展示や雑貨販売やイベントなどに使われて若い人たちも集まっていてにぎやか。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


さまざまなアンティークにも遭遇する。これは19世紀にメンデルスゾーンやシューマンが活躍して瀧廉太郎も留学したドイツ、ライプチヒ(Leipzig)で作られたレーニッシュ(RÖNISCH)ピアノ。リヒャルト・シュトラウス、セルゲイ・ラフマニノフなどが好んで使ったビアノ・・


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


アーチ状の通路がずーっと続いている倉庫群。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


人々が出会い、新しいものが創られてゆく基地みたいな空間。とっても素敵。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


今は閲楽書店(Yue Yue Bookstores)になっているこの建物は元託児室。工員の子供たちが遊んだり休憩したりできる施設だった。芋の葉っぱがゆったりゆれる横にブルーグリーンの木の壁。中にはほんのり明かりが・・


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka



台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


屋根のデザインはちょっと日本的。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


書店の前を、女性が元気よく木漏れ日の中、過ぎてゆく。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


ガジュマルも育つ中、ぐるっと池のまわりを散歩できるんだ。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


水際に育つ鮮やかな黄色い花は熱帯から温帯で育つカンナに似たダンドク(檀特)。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


こっちは熱帯に育つペンタス(Pentas) ピンク鮮やか。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


こちらは石垣島でも見られる花火のような放射状に花が咲くサガリバナの実。水辺近くでゆーらゆら。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


縦長の葉っぱの向こうにはヤシの木。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


低い声で鳴く鳥がいるなと思ったら鳩ちゃん。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


工場棟に入ると明るい中庭のバロック庭園に通じている。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


お庭でちょっと陽気なリズムで雀が鳴いていると思ったら当時造られた噴水池のすぐそばに。そのまわりには浴女像があったりちょっと違う時間が流れている。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


工場から倉庫まではベルトコンベヤーで運んでいて当時の先端設備だったみたい。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


そしてずらっと並ぶ当時の倉庫たちは今、さまざまなアート空間に変身。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


古い建物と新しいビルディングと。それらが生まれ変わった創造空間でつながれている。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


すくすく伸びる女王ヤシにまぶしいライティング。
若いカップルの足取りも軽やか。
なんか、ウキウキしてきた。
ありがとー。じゃ次に行ってみよ~


“迪化街” (ディーホアジェ Dihuagie)”


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


松山地区から5kmほど西に移動すると台北を北西に流れゆく淡水河流域近くになる。ここには台北で最も歴史ある問屋街の一つ「迪化街」 (ディーホアジェ Dihuagie) があるんだ。あっちこっちでいろんな香りがただよっている。このお店にくると甘いかおり。お菓子にもお薬にもなる真っ赤なナツメや黒いナツメが山盛りに。黄色い黄耆(オウギ)という根っこもある。利尿・強壮・血圧降下・末梢血管拡張などのお薬になるんだそう。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


こっちはなんと、これでもかと並ぶさまざまのカラスミのお店。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


こんなに大きな袋が並んでいて何かと思ったらなんと、干しシイタケ(香菇)がぎっしり。傘のてっぺんが裂けて花のようになっているのは花菇っていうみたい。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


18世紀末から19世紀中頃の清朝末期にかけて、ここ淡水河沿いに貿易関係の商店が街を作り出し、清朝時代には樟脳、20世紀初頭の日本統治時代には茶葉が台湾の特産品に。台湾全土から乾物、漢方薬、お茶、布などが集まり人も行き交い台湾随一の賑わいだったとのこと。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka



台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


そんな中にカフェもあちこちにあって嬉しい。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


そして1917年に建てられたバロック調石造り壁面の3F建ての建物。台湾初の西洋薬局WATSONだったところ、その2Fと3Fが ASW Tea House.


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


かつてとっても大事な輸出品だった茶葉。紅茶もそうだった。階段を上がって店内へ入ると英国風の落ち着いた空間。棚には様々のお茶缶が並んでいる。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


わ、パイナップルスコーン、マンゴスコーン、シトラスマドレーヌに黒ゴママドレーヌ、3種の味が楽しめるフルーツゼリーのパート・ド・フリュイ ・・これらを選べるアフタヌーンティーセット、サンドイッチまでメニューにあって・・・ うーん。でもお夕飯が迫ってきているの。涙をのんでお茶だけをセレクト。でもそのお茶も細かく産地と品種がずらっと・・。半発酵の烏龍茶から全発酵の紅茶までさまざま。栽培方法も表記されているし、コーヒーのようにブレンドするか、シングル産地にするか・・ なかには1980年頃に開発された金萱(きんせん)茶というのも。なになに、ワイングラスで飲んで、次に茉莉酒を加えて楽しむ・・・ ノンカフェインのハーブティーもいろいろあるし。
迷った末に僕は大好きな半発酵の青茶系の青心烏龍に。淳ちゃんと典子さんは紅茶系に。楽しみ~


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


外を見下ろす窓際の席にはイギリスの図書館のように緑のバンカーズランプが並んでいる。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


カウンターの近くに飾られているあやつり人形が明るい外を眺めている。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


わーいい香りがやってきました! なんと、出してくれた茶葉も一緒に。びっくり。葉っぱが全然刻まれていなくって一枚一枚広がっている。
青茶系は青味があるし、紅茶系はほんのりピンク色になっている。
このあったかい茶葉からもなんともいえないいい香りがただよっている。
僕がいただいた青茶系の半発酵茶の烏龍茶は本当に渋くなく芳しく甘い香りがしてしかも後味さっぱり・・嬉しい。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


窓際には静かに本を読みながらアフタヌーンティーを楽しむ女性が・・・
外から漏れてくる人の声、車の音。
漂う香り。
いつもと違う素敵な時間がゆっくり流れている。

深呼吸を何回かして外の景色をぼんやり眺めていたら生まれ故郷の神戸の街を思い出した・・・・
さ、じゃ、出かけようかしらね。
なごり惜しく階段を下りて通りに出て歩き出した。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


通りにはいろんな香が流れてくる。コーヒーのいい香りがと思ったら、なんでそこに寝ているの?


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


ちょうどお客さんがいないタイミングね。近寄っても片目をちょろっとあけてこちらの様子をうかがうだけ。


台北 (Taipei), 台湾; by T. T. Tanaka


このウッドフロア、いい感じの感触だし、いい香りはしてくるし、
お客さんは可愛がってくれるし、外の景色は楽しめるし・・・
至福の時間が流れているのかも・・・

急いでいく僕をどうして~? て感じ。
そうそう。こういう時間、大事にしたいです。
コーギーちゃん、ありがとー。これからも元気でいてね~

あ、僕?
待望のお食事に行くんです。はい。


“Flavorful Taipei 台北”

いよいよ台湾訪問も最終都市、台北に。
台湾訪問は、最南端の墾丁から南東端の台東、南西の高雄とそのちょっと内側の屏東、そして西海岸の台湾最古都市、台南。更に北に上がって馴染みの? 最大都市、台北。

台北には何度か訪れたことはあったのだけどのんびり歩いてみたのは今回が初めて。それがまた意外な展開に。松山文創園区(Songshan Cultural and Creative Park)というところは2001年に市指定の旧跡となり2011年に一般開放された。ここに書店やホテルもオープンして宿泊も素敵に体験できる。まさかの広い池と緑の森はまさに都会のオアシス。お日様をめいっぱい感じながら歩くと鳥たちも草花も元気いっぱいのビオトープ。古い建物群はクリエィティブな空間に変身して、若い人たちが闊歩していた。その場所が元たばこ工場とわかったときには大変驚いてしまった。

たばこは人類の歴史上その価値を驚くほど変えてきたものだ。もともとアメリカ大陸が起源でトマトやじゃがいもと同じナス科の植物。世界中で様々な種類が栽培されてきた。その香り豊かな何種類もの葉っぱをブレンドし、蒸気や熱を、また、香料を駆使して調理してFlavorfulな「たばこ」となる。

いろんなところを旅してきたつもりだけど、海外の街中で花咲く植物としてのたばこに遭遇したのはたったの2回。カリブ海のグアドループ(フランス)の古い港の脇にあった空き地でと、バルト海地方のヴェルサイユ宮殿といわれるラトビアのルンダーレ宮殿の中庭でだ。そして同様に工場跡にもたったの2回。ヘミングウェイが葉巻をくゆらせて「老人と海」を書いたアメリカ最南端フロリダ州Key West島と、今回の台湾の広大な松山工場跡だ。松山でのその新しい姿への変身には本当に驚いた。

北西に流れ海に注ぐ淡水河は18世紀末~19世紀中頃の建物が沢山残る台湾屈指の問屋街、「迪化街」 (ディーホアジェ Dihuagie)。 漢方薬や色とりどりの乾物があふれ、カフェやtea houseが歴史の流れの中でイキイキと存在感をはなっていた。そんな空間でお茶を楽しむ時間は現代でもあり、はるか昔の時間を体験しているようでもあり、また、子供時代の神戸元町を歩いているような不思議な感覚もあって、まさにFlavorfulな体験であった。

Flavorには近づいて最初にすぐふっと香るトップノートがあるけど、時間がたつとじわーっと香り味わいのある深いFlavorもある。
人に会うときにもその両方のFlavorを感じるよね。両方のFlavorがお気に入りだとその人と相性もいいしどんどん好きになってゆく気がする。

僕はね、よく先輩に言われたの。「たなかくん、君に必要なのはね、深みだよ。深み。でもね、それはしっかり身についていないとしみ出てこないんだよ。」
うーん。今更ね。無理よね。
いや、でも、昔より、僕、Flavorfulになっていません?

Photos, essay by T. T. Tanaka


※ 2023年より前の取材を元に書いております。現地のナビゲートや色々な情報は大塚典子さん、飯田淳さんにご協力いただきました。




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