Photos, essay by T.T.Tanaka
Local / 2019.08.20
緯度的には41~45度で青森~稚内の位置。アメリカ合衆国の北西部。カナダからアメリカの西部を高度2000~4400mのロッキー山脈が縦に、ワイオーミング州の西部を通っている。大陸分水嶺で西に流れる水は太平洋にそそぎこむか、東に流れて地中にしみ込むか、ミズーリ川に流れ込んでメキシコ湾まで到達!するんだ。 すごい分かれ目。ちなみにワイオーミングとはインディアンの言葉で「大きな河床」を意味するんだって。全米最古の国立公園Yellowstone National Parkやその隣にはTeton National Parkがある。
州は東西に800㎞くらいもあり、州の東半分はフラットでグレートプレーンズ(大草原地帯)と呼ばれている。このエリアに全米最初のNational Monumentの Devils Towerや牧場などでも有名なララミー市もあるんだ。景色は西部とかなり異なるよ。
日本から州西部のイエローストーン国立公園やTeton国立公園にはJackson Hole空港で降りるのが便利。カリフォルニア主要都市から2時間くらいワンストップ。東部のDevil’s Towerへの最寄り空港はGilletteでコロラド州Denverから1時間ちょい。いずれも空港でのレンタカーアクセスはグッド。 州内では車移動前提ならば宿泊地に困ることはまずない。
この地域は、野牛が豊富に生息していたのでこれらをハントするカウボーイたちとインディアンたちの摩擦や悲劇も多かった。カウボーイたちの荒馬乗りを競うロデオのイベントは昔から盛んでワイオーミングは別名Cowboy stateといわれているんだ。色々な町に昔からのカウボーイの馬具や衣類、アートがみられる。西部開拓時代の牧場での争いは1953年の映画Shane(シェーン)や1980年のHeaven turns into Hell(天国の門)などに描かれている。
ワイオミング州は一方でEquality stateともいわれ、全米では1869年、一番最初にに女性に参政権を拡大した州でもある。
1868年に大陸横断鉄道ユニオンパシフィック鉄道が南側を東西に走りロッキー山脈を越えてカリフォルニアとつながった。1871年(明治4年)明治政府が岩倉具視使節団一行がこの鉄道に乗っているんだ。近代日本の建設に燃えた岩倉具視以下、木戸、大久保ら48名、その中には4名の津田梅子など若手女性留学生たちも。彼らは木造蒸気船でサンフランシスコに着いたあと、大陸横断鉄道に乗り、カリフォルニア州都サクラメント、東のユタを通り、ロッキー山脈を超えワイオーミングの南部を通り、ネブラスカのオマハ、シカゴ、更にワシントンに向かったんだ。アメリカも数年前に南北戦争が終結し、大統領は北軍を率いたグラント将軍で、鉄道最盛期でもあり新しい時代を迎えていたのだ。
道路は州の南部に他の州とつなぐルート80が東西に突っ切る。北部には90号が東から西に向かって走るが途中から曲がって北のモンタナ州に超えていってしまう。北西部のロッキー山脈にはふとーい道路ではなく、くねくねとした道路が多いけどカントリーロードを楽しむことができるんだ。
産業は鉱業と観光業。そして農業。
鉱業では、石炭は全米最大の産出州、天然ガスも第二位、石鹸・紙・ガラスなどに使われる重炭酸ソーダ(トロナ)の埋蔵量は世界最大! らしいんだけどちょっとびんとこない。観光業は、国立公園などに年間600万人以上! 訪れている。その半分の人々はYellowstone公園を訪問する。農業は歴史もあり畜産(牛肉)、干し草、テンサイ(ビーツ)、穀物(小麦・大麦)、羊(ウール)など。
ちなみに、ワイオーミング州では、所得税、個人の資産税、相続税はゼロ! なんだ。
大学はララミー市にあるワイオーミング大学一つだけで、他にコミュニティーカレッジが8校。
日本との直接的な文化交流は少なく、一つあった姉妹都市が2006年に解消されて今ひとつもない。第二次大戦時の日本人強制収容所はここワイオーミングにもあった。ハートマウンテンといわれるところで、一万人を超す日本人が1942年~45年まで収容され、今でもその跡が残っている。
イラスト、ロゴデザイン by 瀧口希望
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T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。