![“Travel is ENCOUNTERS” (アソーレス篇) #25](https://container-web.jp/wp-content/uploads/local_post/23397/20200323/title-1500x590.jpg)
“Travel is ENCOUNTERS” (アソーレス篇) #25
Photos, essay by T. T. Tanaka
Local / 2020.03.24
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“The girl from Lisboa”
私;「はーい。何撮ってるの~? あーーー!! なーに。それ・・・。ヒトデ・・・・?」
The girl from Lisboa;「Portuguese man of warよ~~」
素敵なまなざしでニッコリ。
私; 「え・・・? jelly fish(クラゲ)じゃないの?」
The girl from Lisboa; 「ちがうみたいよ。あ、危険、危険、絶対触っちゃだめよ~。でもきれいでしょ!」
白い歯がピカリ。
私; 「 ブ、ブルーですね~ 浮袋みたい」
The girl from Lisboa; 「インスタにあげちゃおうっと。リスボンの友達に見せちゃうの。」 注)リスボンはポルトガルの首都
その目がキラリ。
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すごい。浮袋みたいなものから足がずーっと3m以上もある。(足跡と比べてみて・・)
打ち上げられてしまったんだね。
これ、カツオの烏帽子(エボシ)いわゆる電気クラゲ。猛毒で「足」は10mは普通にあるらしく、長いのだと50m!もあるらしい。これはチビちゃんね。小魚やエビやカニなどを刺した毒でコロリとさせて食用にして生きているらしい。日本の海でも台風到来時に打ち上げられることがあるとのこと。でも自分では泳げなくて烏帽子のような「帆」をたてて風を受けて海流にのって移動しているんだって。すごい生き方だ。
アソーレス付近ではよく見られるらしく、Portuguese man-of-war(ポルトガルの軍艦!)っていわれている。昔、コロンブス航海の頃のポルトガルの帆船(キャラベル船)に似ていたから以降そう呼ばれているらしい。ちなみに、コロンブスが1492年に新大陸発見後に航海中のスペイン建造のサンタマリア号が座礁しちゃったので、随行したポルトガル帆船キャラベル船に乗り換えたらスピードが速くって速くって大喜びした・・・んだって。。カツオの烏帽子君は風にのるのが得意だったみたい。
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The girl from Lisboa?; 「じゃあね~! ビーチ楽しんでね~」
スマイルが後ろ姿になって過ぎてゆく。
私; 「は、はーい。また宝物に出会ってね~」
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ビーチはこの絶壁からずーっと続いている。
岩の近くは海の音が響いたと思ったらザーッと、そしてサーッと細かい音になって白波が消えてゆく。
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あ、彼女の足跡かもしれない。
裸足のビーチ歩きは海も感じて気持ちがいいもの。
波の音がまた近づいてきた。
フットブリントも波に溶けていく。
あれ? もしかして、彼女に会ったのは夢だったのかな。。。
The girl from Lisboa
今日も素敵なビーチだ。
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“Sweet and lovely ”
照りつける太陽。頬撫でるbreeze(そよ風)。
そうなんだ。ここぞというタイミングで屋台があって嬉しい。
カートのボードにはアソーレス産ジェラートって書いてある。チョイスがパイナップルと、くるみと、マリアクッキー(まあるいバニラ風味のクッキー)入り!と、ストロベリーと、メロンと、抹茶!と。
3ユーロ。うーん。どれもこの島名物で10秒迷ったけど、パイナップル入りを頼んだ。
“It’s good choice! I love this best. ”
ってお兄さんがずり落ちそうな眼鏡をこぶしでおさえつつ、にっこりコーンにスクープしてくれた。
おー。香がふわーっと浮いてくる。。 あまーい。すっぱーい。素敵だ~。
デザートは本当に幸せにしてくれる。
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二人とアイスクリーム。向こうには大西洋。
南半球のブラシの木がここで大きく育っている。薄緑色のつぼみがふくらんで今にも咲きそうな赤い花弁がのぞいている。
まぶしく、そして、ちょっとウキウキする。
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後ろは海しかないの。青い海だけ。
The Atlantic(大西洋)。ずーっとずーっと。
青い海原に横に何本も帯がうすく走っている。その中を帆をはったヨットがゆっくりすすんでいる。あれは1000メートルくらい先なのかしらん。その向こうはブルーが淡く淡くなってゆく。
目標物がない遠くをずーっと見ているときもちいい。いつもの日々にはないもの。
アイスクリームのスイートが澄んだ体にはいりこんでゆく。
水平線にふと浮かんだあの人の笑顔。
Sweet and lovely。
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“Wave”
朝目がさめると海の音が聞こえている。リズミカルなひくーい音。ときどきまじる波しぶきの高い音。
カーテンを上げると朝もやが山に沿ってどんどん上がってゆく。
もう一度目を閉じると海の音が体の中まで入ってくる。
おはよう。
アソーレスの天気は温暖だけどきまぐれで雲が一気にかかって雨がきたりもする。
おだやかな夏でも様々な波がやってきてドラマチックなんだ。
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遠浅のビーチに押し寄せた波は細かい泡をここにもあそこにも残してゆく。すぐ、消えちゃうけど。
弧を描いた女性が波の合間に飛び込んでいる。イルカかと思った。
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波が過ぎると足元を潮が陸に向かってゆく。
そ、向こうの波を見てまた飛び込みたいよね。
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「おっと、波ジャンプし損ねたぜ。わー。足がもってかれるぜ~。倒れる~。ハハハ~!」
波が一気に引いてゆく。
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「ママー。早く撮ってよ~。今、今、波くるからさ~。後ろ、後ろ~!」
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午後3:30
女性; 「凧、やってみます~? 楽しいわよ~」
私; 「ありがとー。ぐーっと上げてくれる? 撮ってもいい?」
女性; 「いいわよ~。ほれ!」 ぐーーーーーー。アップアップ。
女性; 「あのね、クリスの方がうまいの。ちょっと待って~」 ・・・・・・・・
お、高い、高い。海の上に、たーくさんの波の上にあがった。あがった。風をつかんだね。二人とも。
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ビーチに腹ばいになってみる。砂のぬくもりがお腹から体全体に。あたたかーくなってくる。
本読みながらときどきうつぶせで目を閉じてみる。
低ーい波の音も振動も気持ちいい。
淋しくない。あの人のことも思えるから。
これから二人で波に乗っていけそうだもの。
裸足で一歩一歩サンダルまで戻る。後ろから体中に波音が降ってくる。
いっぱいいっぱい波を感じて元気になった。
後ろの足跡は消えるけど、前に歩いてゆく。
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“Twilight time”
お日さまをいっぱいあびて潮風にあたっているといい感じの夕方になってくる。
こがしバターの香りがただよってきて。。。
まずは、さっぱりフルーティーなアソーレスの白ワインで乾杯。
忘れずにガス入りのお水も。
レストランのインテリアにも灯がともる。
ポルトガルの船にのってはるかインド洋からきたシャコ貝もほんのりオレンジの光に光っている。
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メニューを見ると、ブルーテソースでカブを添えたタラ、サリコニア(海草)を添えたウニのクリームソース、悪役魚(!)ソースのタコのテリーヌ、かんきつ類と海草とトビコ(!)のマリネ添のマグロのたたき、とれたてメカジキのグリル、フォアグラとイチジクを添えた瓜入りスパゲッティ、エビとグリーンアスパラを添えたイカ墨のフェットチーネ、半熟卵とパルミジャーノチーズを添えたマッシュルームリゾット、ワイルドベリーとヤギチーズのリゾット。。。すごい。。。
お魚もお肉もフルーツや海草なども多くはアソーレス産でフレッシュでイキがよくって嬉しい。
迷った末、タコのテリーヌと、とれたてのメカジキをいただいたんだけど、ああ、もうジワーっとうま味がすごーく染み出て美味しい。ごめんなさい。本当に美味しかった。。 全然異国の感じがしないのがまた不思議だけど嬉しい。
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外が暗くなってくるとシェフたちがステージの上でdanceのように動き出す。
ソースを焦がす音もフライパンの音もコンサートのドラムのように聞こえてくる。
身を乗り出してつい目がいってしまう。うん。お鼻も。
この時間になるとカップルたちが海をバックにシルエットになって浮かんでくる。
一緒に食べるお食事は素敵だ。もちろん、君も素敵よ。
これからの時間に乾杯。
一日の終わりは二人の時間の始まり。
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When lights are low
日没。海の中に日没。
一気に雲が紫のベルベットになってゆく。
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今日も水平線が燃える時間を迎えた。
みんなを一気にひきつけて赤く明るく燃えあがる。
まわりは既にシーンと暗い。
舞台から太陽が下りると港もひっそり。
ほんのり明かりがオレンジに反射してゆれている。
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空に青みがすこーし残っている。
ともされた灯りにリュウゼツラン(龍舌蘭)がシルエットになって大きく浮かび上がる。
そして誰もいないプールの水だけ昼間のブルーに輝いていた。
燃えた水平線の余韻はレッドに遠く遠く。。。
とばりが下りるとお天気は気にしなくていいのだ。
そう、あの曲を一緒に聴きたいから。
あの人の腕の中で。。
お休みなさい。
When lights are low.
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“Beyond the sea”
大西洋のど真ん中、アソーレス諸島のビーチに立っていた。
遠浅の砂浜に波は長く長く続いて、くだいた白い泡を足元まで寄せてきていた。
海は不思議。
人と人をこんなに遠く離すものだけど、同時につなげてくれるものでもある。
冒険に出たいけど、つながってもいたいんだ。そう。愛している人とは。
旅に出てきたのにいつでも鳥になってその腕の中に飛んでゆきたい。
船で移動した昔の人達の思いはもっともっと強かったんだろうね。
隔たりもつながりも。
この島にいるとそんな人々の何年もの気持ちの積み重なりを感じるんだ。
彼らの海を見る時のまなざしはやさしく、少し寂しく、でも美しい。
アソーレスは自分の気持ちを強くしてくれる気がするんだ。
あ、でも、カツオノエボシ君の境地にはまだまだなれないな。。
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※こちらの記事は2019年の取材を元に書いています。
イラスト by 瀧口希望
アソーレスに関することはこちらのアソーレスノートをチェック。
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T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。
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