Travel is ENCOUNTERS(アソーレス篇)#24

Travel is ENCOUNTERS(アソーレス篇)#24

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / feb.26.2020



思えば遠くに来たもんだ。
Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

女 “気持ちいい風~”
男 “まわりぜ~んぶ大西洋だ~。来たぜ、ヨーロッパ大陸から1500km、ヨーロッパの一番西の端だ~”
女 “あら、ここ石畳よ。ずっと向こうから続いてきてるわ。”
男 “白く光っているね。君の顔も素敵に光っているぜ。”
女 “わ。美味しそうな香りがしてきたわ。今晩何食べるの?”
男 “あ、え、あ、この島はお肉もお魚もグルメだってさ。今日は海際だからタ、タコかな。”
女 “あら。いいわね。アソーレスワインを一緒にご馳走してくれるのね~。あなた、素敵。”
男 “ア、アソーレスワイン?(レアで高そう・・) そ、そだよ。も、もちろん。。”
(実はピコ島で醸造していて手頃でとっても美味しいんです)
ここはアソーレス諸島の最大の島、サンミゲル島。ポルトガル領。
アメリカ東海岸からは4000kmある。そう。ポツンと大西洋の真ん中にあるから日本の地図では右か左に切れちゃうからまず載っていない。だから多くの日本人にはほとんど知られていない。時計回りの大海流にのってクジラが回遊し、あるときから人々は船にのって新大陸南米を開拓し財宝をのせての帰途、寄港したのだった。
そう、太平洋の真ん中にあるのがハワイとすると、大西洋の真ん中にあるのはアソーレス諸島なんだ。僕は偶然外国の地図でこの諸島を見つけて俄然行ってみたいと思ったのだった。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

アソーレス諸島は9つの島からなっていて、サンミゲル島が最大。東西×南北が70㎞×10kmぐらい。佐渡島の9割くらいの大きさかしらね。人口は14万人で諸島全体の約60%がこの島に住んでいる。昔から発達した港町ポンタデルガーダ(Ponta Delgada)の海岸沿いにはホテルが並んでいる。こんなアーチの中を素敵なシルエットが往来する。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

リスボンから真西に位置していて年中温暖。真冬でも零度以下になることはない。いろいろな植物がいきいき育っていて、ほら、このブラシの木も元気にツーリストをお迎えしてくれる。これからどんな植物に出会えるかも楽しみなんだ。







Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

この島は1444年に入植がはじまっている。16~18世紀の建物が多い。これは18世紀に作られた町への門。ポルトガル本土と同様の白と黒ベースでデザインされている。広場の入り口にはキリリと深紅のゼラニウム。
海を向いてベンチで座っていると海の音が風に乗って聞こえてくる。
あ、それ、影じゃなくて、パイナップルのデザイン石畳だね。
コロンブスは1493年に最初の大航海の帰途にアソーレスに寄っている。スペインやイギリスたちもここを争奪して様々な歴史がこめられているんだ。新大陸ブラジルを作り上げていった頃のポルトガルは地球で最初のグローバル国だったともいわれている。同じころ、彼らはアフリカの最南端から東に進みインドを経てマカオ、日本まで到達していたんだ。
ここは彼らの最西端。僕は彼らのかつての最東端からここに着いたんだ。
Where am I?
Why am I here?
とっても不思議な時間の流れを感じる。
でも触れてゆく風はとっても気持ちよかったのだ。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

2人で右のかなたを眺めて、
母 “あっちずっといくとアメリカなのね?”
父 “そうだな。4000kmか。あいつ元気にしているかな?”
母 “Bostonは雪降るのよ”
父 “寒いのつらくないのかな。夏休みにはリスポンに帰ってくるんだろ?”
母 “どうかしら。Boyfriendできたって言ってたし。。”
父 “え・・・・”

船の汽笛が星条旗の帽子の向こうから響いてきた。ゴォ~~~!

男 “そういやさ、旅先で何なんだけど思い出した。この前のゴスペルフェス、なかなかの一体感、グッドだったぜ。”
女 “そうね。よかったわ。あなたのソロ、チームのみんなも絶賛、聴衆ものりのりだったわよ。”
男 “そ、そうかい。そりゃ嬉しいぜ。”
船の汽笛が呼応するようにピ~~!
女 “だから今年のリーダー、仕切り役、あなたに頼むわよ。。みんなあなた以外いないって思っているわ。ね。”
男 “え! そ、そんな。。 だって、おいら・・・”
船の汽笛がかき消すようにピ~~イエ~~!
女 “わー。よかった。みんな喜ぶわ~~。”
男 “ ・・・・・”
思えば遠くに来たもんだ。。 アソーレス。







Green in the island 
Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

わー。木漏れ日がきれい。
空に広がる大きな緑のカーテン。プラタナスかな。
町の広場だね。奥はアートセンター会場みたいなところ。
いろんな人たちがやってくるし、くつろいでいたりするし、にぎやか。
港から少し入った街路はイキイキした人たちの足音が響いている。





Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

もう階段があると、世界どこでも、子供たちにとっては遊園地。
上ったり下りたりおいかけっこしたり。あっちこっちに動きがいっぱい。
うーん。そうなのか。一段飛ばして階段下りてみるのか。。
こ、こわーー。
でも、足がながーくなりそうね。







Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

青銅の彫像が素敵。ごめんなさい。名前はわからないんだけど。。
子供たちを抱っこしてこの彫像に触れさせているからすごーく人望があるんだ。
皆の目線が前を向いていてうれしい。
うん。今日はあの子の発表会ね。







Design of stones
Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

お星さまがくっきりくっきりの石畳。
こっちはまあるくまあるく迫りくる石畳。
Black and whiteのハイコントラスト。素敵なデザインの上を歩いているのは楽しい。アソーレス諸島は火山だから黒っぽい玄武岩のような石は多いみたい。でも、この石灰岩みたいな白石はあまりないからはるかヨーロッパ大陸から運んだのかしら。。
それにしてもこつこつと何年もかかっての街づくり。すごい。
離れたところの小さな村にも石畳がだいたいあるわよって聞いたの。楽しみ~。
お、よろ。あ、やば、おっとっと。
そ。油断すると凸凹に足とられちゃうの。。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

ストリートを横切る待ち時間もほら。この通り。
目に飛び込む素敵なグラフィック。「横断歩道」の片側には小さなスクエアが縦列しているね。その向こうを自転車がよぎってゆく。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

わ、ここは両脇の歩道が石畳ベルト。いや、車道も石畳だけど。デザインベルトにはさまれてゆく車も様になっちゃうの。石をはむタイヤの音も石畳の存在感を高めているね。
鍵のようなデザインパターンがずーっとつながっている。職人たちの存在がwarm-heartにただよって素敵な街。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

歩道のデザインもいろいろあるの。図面をみながら職人さんが作りあげていったんだよね。すごいわ。。しかも、白石の間は土じゃなくてまた黒石なんだから。。石の形もそれぞれ少しずつというより大分違うし。。(改行)
いや、見事見事。。しばらくあきれて路上にペタンと座ってしまった。ここはまわりは1500㎞、海以外何もない島。。びっくり、にっこり。元気になれたよ~。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

この辺で引き返そうかな~と思ったらバーがあるじゃん。
外に小さなテーブルと高めの椅子が石畳の上に。
左側は港。うわ。夜、やっぱタコ食べながら、アソーレスワインだわ。
おじさんは、まだ明るいからちょいとホットグリーンティーで一休みしている。え、グリーンティー(緑茶)・・!!??









Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

巨大な鉄の塊。こんな船たちがはるか離島まで寄港していたんだね。



60㎝ぐらいはある大きな鐘。1958 Neptuneと彫ってある。出航のときに鳴らしたのかしら。

“SHIPS. Now and then.”
Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

1427年に島発見。それまで地中海南のカルタゴ人が住んでいたらしい。
新大陸、特に南米アマゾン以南への進出、ブラジル建設での帰り道は財宝を積んでここに寄港。それ以降、ポルトガル、スペイン、イギリスなどがかかわってきた。
スペイン産の有名なバレンシアオレンジはもともとアソーレスで栽培されていて1860年代にスペインに渡って世界的に有名になったらしい。それがのちにアメリカ、カリフォルニア、フロリダにわたって広がってゆく。もともとここで育ったオレンジがヨーロッパで重宝されていたんだ。全然知らなかった。ヨーロッパからアソーレスに様々な家畜も作物も植物ももちこまれ、牧畜も農業も発達し、海流にのって漁業も捕鯨も盛んだった。この離島はさまざまな船の出入りとともに色々な国とつながって発達してきた。
あちこちに、昔の船の写真や絵が残っていたりする。歴史。。。
あら。このおじさんは葉巻くわえているね。ここでははるか南半球の香りもくゆらされていたんだ。







Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

出船、入り船、帰り船。
遊覧船もクルーズ船も。
バケーションを楽しむファミリーのスーツケースがガラガラと港からやってくる。
きっとこの通りは昔から人通りが絶えないんだろうね。
あれ? 親子の向こうに見えるの、船よね。あれ何・・? パラボラアンテナが沢山並んで空に向いているよ。巨大な船じゃん。えー。
気になって調べてみたらフランス海軍の船。ミサイル追跡船Monge(モンジュ) A601。 1990年に建造。大陸弾道ミサイルや人工衛星発射支援のためのレーダー船。。。500㎞ぐらい離れたところからコイン大のものを追跡できる能力があるらしい。。。 え~。。。。 ひえ~。。。。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

え、これは? 熊。金色熊。船の煙突にゴールデンベア。どこかのスポーツブランドじゃないよね。。。
うーん。あらー。。これ、カリフォルニア州立大学の船! もともとは1987年製でアメリカ海軍の最速の海洋観測船。最先端のV16エンジンと潜水艦と同様のソナーを搭載して海底測量ができるらしい。すごそうだ。1996年にカリフォルニア州立大学の海事観測船になったそう。下水処理施設、ジムやライブラリーも装備。航海技術など習得して士官になるための訓練船みたい。
大西洋の離島にふらっときてしまったけど、ここはずーっと昔からヨーロッパとアメリカ大陸が交叉しているところ。そう。人が往来してきたんだ。今も昔も。
なんか圧倒されてぼーっとしていたらスズメがちゅんと頭上で鳴いた。
ここにもいてくれたスズメちゃん。ほっとしたよ。ありがとう。僕の心のざわつきは静まっていった。
この島の旅には何が待ち構えているのだろう。今と昔が出会えるのかな。







Walls and Windows
Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

ストリートを歩いてゆくと壁の絵が上から横から飛び込んでくる。
これはタイルなんだ。一枚一枚色付けして焼いてあるんだね。
光が鮮やかにキラリキラリ。
あ、このウィンドウは黄金のクリスチャン。ヒューマンタッチに出会うと嬉しい。空気がイキイキと流れてくる。







Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

ドキ、ドキ。。 次から次に美女に見つめられるなんて。。
ウィンドウの奥から素敵なまなざし。石畳を過ぎる車のヘッドライトがウインクしたみたいだった。うん・・僕もファインダーの中で。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

薄曇りの午後、ウォームライトがあたったマネキンにドキっ。。
ピンクの壁の前に素敵なdress in window。デザイナーさん。頑張って~。応援するよ~。





Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

あ、お魚さん。金目みたいにおめめが大きい。これ描いた人はこのお魚が美味で大好きだからなのか、お目目が気に入ったのか。。うーん。どっちもかも。。
こ、これはなんだー! ステッカーみたいなんだけど、うーん。。。頭にタコがへぱりついちゃってるし、巨大なウナギだし、巨大なツブ貝(バイ貝?)がでーんといるし。 いや、これ、身近においしいお魚がこれでもかって沢山いるってことよ~。 わかった。いくぞ~。レストラン~。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

パイナップル。パイナップル。
小粒に大粒。ウィンドウに頬摺り寄せてこっち向いてます。
そう。この島は温暖でアナナス(パイナップル)が沢山栽培されているの。アナナスソルベ食べるもんね~。



Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

壁のこのかわいい子はなーに?
わかったの。この子、イイズナ (飯綱)(Mustela nivalis)。肉食類最小の20㎝前後のイタチの仲間。アソーレスでは自然には哺乳類はウサギ、ネズミ、コウモリなど9種類が確認されているようでその一つ。日本の東北にもいる子がこの離島にもいるんだね。とってもかわいくて小さいけど、狐より運動力がすごいらしく、垂直に飛び上がって鳥をハンティングしたりする。最近、イギリスの公園でキツツキに飛びついてそのまま飛行!していたのが目撃されたんだよ~。絶滅しないでね。ウォールペイントされていてとっても嬉しい。どこかで会えないかな。。

Ponta Delgada, Sao Miguel, Azores, Portugal; by T.T.Tanaka

わー。青い壁が迫ってきたと思ったら、巨大なクジラさん。
昔からクジラが回遊する大きな海流の中にアソーレス諸島はある。クジラは人類とは色んな歴史があったけど、今はホエールウォッチングでその命を見学することができる。
巨大なマッコウクジラ。
アートになったクジラさんも素敵だ。ここは港の近くで自然にあふれているわけじゃないんだけど、人々の気持ちがあたたかい。
さあ、明日からは島の奥に、端っこに、どんどん行くよ~。楽しみだ~。


“So far away, close to you.”

アソーレス(Azores)に来てしまった。
大西洋のど真ん中、ヨーロッパの最西端になるといわれても全くイメージがわかなかった。ポルトガル領でリスボンから真西に1500km, アメリカ大陸から3900kmという数字でもピンとこなかった。ネットで見る景色も意外なものにあふれているわけではなかった。でも、びっくりと発見の連続で毎日は面白く素敵だったのだ。
一番大きな島のサンミゲル(Sao Miguel)島。一番中心の港町、ポンタデルガーダ(Ponta Delgada)。
視界一面の海と空。両方とも青いけど、この青はいつもの旅先よりもっともっとはるか向こうまで続いている気がする。
そして、荷物を置いてホテルを出たところからいきなりBlack and whiteの石畳が目の前にどんどん迫ってくる。人々が長年かかってつくりあげた石畳。つるっと光って人々の声が足音が反射している。
大陸からはるかにはるかに離れたところなんだけど全然寂しい感じがしなかった。
そうなんだ。すごーく遠くにくると、不思議に人と人とは近くなる気がするんだ。
その空間に流れている時。そこにいる人たちだけに流れている時。
頭を過ぎる鳥の声も、しぶきをとばす海の音も、食べ物のゆたかな香りも、潮風のほほをなでる感触ですら、ドキドキ感じてしまう。
だからその気持ちをみんなでうきうき確認しあいたい。
So far away, we are closer to each other.
遠いからあなたともっと近くなれる気がする。


イラスト by 瀧口希望


アソーレスについてまとめたアソーレスノートはこちら

#23(ワイオーミング篇)はこちら
#22(ワイオーミング篇)はこちら
#21(ワイオーミング篇)はこちら
#20(ワイオーミング篇)はこちら
#19(ワイオーミング篇)はこちら
#18(ワイオーミング篇)はこちら
ワイオーミングについてまとめたワイオーミングノートはこちら

#17(アリゾナ篇)はこちら
#16(アリゾナ篇)はこちら
#15(アリゾナ篇)はこちら
#14(アリゾナ篇)はこちら
#13(アリゾナ篇)はこちら
#12(アリゾナ篇)はこちら
アリゾナについてまとめたアリゾナノートはこちら

#11(カリブ篇)はこちら
#10(カリブ篇)はこちら
#9(カリブ篇)はこちら
#8(カリブ篇)はこちら
#7(カリブ篇)はこちら
カリブについてまとめたカリブノートはこちら

#6(フロリダ篇)はこちら
#5(フロリダ篇)はこちら
#4(フロリダ篇)はこちら
#3(フロリダ篇)はこちら
#2(フロリダ篇)はこちら
#1(フロリダ篇)はこちら
フロリダ州についてまとめたフロリダノートはこちら

Tag

Writer