“おいしい水  Água de Beber”

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“おいしい水 Água de Beber”

奄美大島篇 #72

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / 2024.03.26



“奄美に来たよ!”


地図 鹿児島県



地図 奄美大島



佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


ほんの3時間前に都内にいたとは思えない。
目の前に広がる白波の音、気持ちよい海風。太陽がまぶしい。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


僕が初日にたどり着いたのは人口 200人ほどの笠利町佐仁。
午後のお日様が傾いている。海のすぐそばには数件のお家だけ。思いっきり海風で誰もいないなと思ったらビーチにティーンエージャーが二人。おしゃべりしながらそぞろ歩き。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


二人はだべりながら立ち止まったと思ったら、ちょい、海に入って戯れた。
沖の海流はこわいから島の人は遠くまで入り込んで泳がないとのこと。
でも裸足で海と触れるのはすっごく気持ちよく大好きなんだそう。
波の反射がまぶしい。はじける海の音も元気いっぱい。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


そこは浅瀬なんだね。クロサギが波の中に立ってお魚ねらい。
押し寄せてくだける波を背景ににくっきり見えるシルエット。
さっきから光の感じがどこかと似ているなあと気になっていたら、なんと、アメリカ南部、フロリダ半島真ん中辺と奄美は同じ北緯28°お日様の角度や動き、光線の強さも同じなのだ。お月様やお星さまの見え方も同じになるんだね。
久しぶりの日本の南の海。楽しみだ~!


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


カモメが空高く鳴いた。見上げると水色にほんのり夕焼けの色がまじってきた。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka



佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


たのしい雲の形がいっぱい。その雲たちがまぶしくなってきた。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


お日様の光が海にキラキラしている。
サンセットを見れると一日を幸せな気分で終われそうな気がして嬉しい。
この島の素敵な時間が流れている。


“Blue Heaven”

東京23区よりも大きい巨大な島。その奄美大島に8日間いることにした。
反時計回りに北からまわってゆく。着いたこの日はそのまま夜を迎えてレストランにゆく。島の北の方の西海岸に面して小さな港がぽつぽつと点在しているエリア、外金崎, 亀崎(笠利町)というところ。


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


昨日まで波が高かったみたいだけど、今日は静かで波ひとつない。つながれた船も静かに停泊。歩いている人は僕しかいない。海の色を見ようとスマホで照らしてみたら、少しグリーンが反射してきた。海水に手を入れてみたらあたたかい。


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


目が慣れてくると夜空が蒼く染まっているのが見えてきた。
山もしっかりつながっていてシルエットと遠くの灯りも少しあるのがわかった。
深呼吸してみると旅に来た感じがじわーっとしてきた。


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


何日も前から初日には思い切って素敵なレストランを予約していた。
この海岸あたりは on the beachの民泊がいくつかできていて、その中にあるレストラン、2 waters. 真っ暗な道路でどこに車を止めようか迷っていたら店の中からわざわざ誘導に出てきてくれた。ありがとう。


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


扉をあけるといきなりにぎやかな英語の会話と食器の音が聞こえてきた。
カウンターにすわるとまさにon the beach. サンセット時にまたこなければ・・・
まずはドリンクよね。ワインは巨峰のデザートワイン含めて色々。カクテルは、オリジナルのモジートやマルガリータ、奄美の黒糖焼酎ベースのドリンクもあってここに泊まれば飲めたのになあと後悔・・・。
ノンアルカクテルにも目をひくものが・・ これにしよう。Blue Heaven. 洋梨とレモンのフレーバーが効いた奄美の海を想うフローズン。添えられたエレガントな白いお花。バニラのような甘い香りがふわっとただよってきた・・・。これは日本のあたたかいところ原産のランの一種。園芸用に大事に育てられているフウラン(風蘭、富貴蘭)。野生は珍しく奄美でも絶壁にわずかに残っているとのこと・・


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


私の隣は香港から来られたカップル。その向こうはフランスから。
いきなりインターナショナルになっていてびっくり。
みんな思い思いにのんびりおしゃべりしてお食事しながら過ごしている・・


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


島野菜のピクルスを頼んだ。ゴーヤに島ラッキョウ、シシトウ、トマトに人参。シャキシャキで苦みも効いていい感じでピリリと辛い。


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


次は、こんなに大粒で緑が美しいイタリア産の有機オリーブ。


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


島魚のカルパッチョ、サラダ仕立て。
このお魚は姫鯛でシコシコで歯ごたえがよく、上品な甘味で旨味たっぷり。


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


こちらはカリカリっと芳しいフレッシュなエビがお塩とゴボウのフライと一緒に。


(外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


口直しには、バジルが効いた本日のパスタ


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


そしてメインに島豚モモ肉のハーブマリネ、自家製ハム。
旨味がしっかり酸味の効いたソースで引き立っている。
美味しい。たっぷりいただいてしまった・・・・!
都会を忘れてお腹の幸せにひたってぼーっとしていたら、
「外にプールありますからよかったらどうぞ~」
「え、on the beachにプールあるんですか?」
「はい。二種類の水ということで、 ここのレストランは 2 waters っていう名前になったんです。どうぞどうぞ。」


外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka



外金崎, 亀崎(笠利町) 奄美大島 by T. T. Tanaka


窓をあけると広がるデッキ。あらーーーー!
ブルーのプール! さっきのドリンクみたいだ。 ライトが反射して底のタイルの濃淡が美しい。
頭の上からは砂浜に押し寄せてはひいてゆく波の音が降ってくる・・・。
二種類の水。 2 waters. とっても幸せな気分。
ふと、同緯度のフロリダビーチで聴いたボサノバの「おいしい水」(作曲アントニオ・カルロス・ジョビン)が頭の中を流れてきたのだった。あなたは雨で私は花。あなたの愛がなければ私は枯れてしまう・・


“Vividな朝が来た!”


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


海の音の中いつの間にか寝てしまって奄美の朝が来た。
なんとなくウキウキしている自分がいて、民泊のカーテンをそっと開けてみたら・・


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


もう夜明けが・・。モコモコした雲が墨色からブルーにどんどん変わってきた。
屋根のシルエットの向こうに今日の空が見えてきた。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


古ーい木造の建物の窓をあけてみると、あらら、ウッドデッキがもうけられていて、ちっちゃなプールが海際にある! 向こうに見えている海から気持ちのいい波音も流れてくる。
風が吹くとプールの水面がすこーし揺れる。夏だとここに身体ごとつかって、海を眺めるの最高よね。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


キッチンの窓の横にもデッキ。海が明るくなってきた。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


海岸そばの堤防道路をワンちゃんがお散歩。ピンクのお母さんと、くるっと尻尾がまあるいワンちゃん。朝のフットワークがいい感じ。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


窓際には貝殻とヒトデ。きっと、すぐそこの海からよね、ほっこり嬉しいインテリア。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


民泊の大きなお家の廊下にはこんなカリブ由来のハンモックがさりげなくおいてある。
連泊してお昼寝したい・・
さ、朝食前に近所をお散歩してこようっと。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


玄関をガラガラとあけると、塀の上にさりげなくおかれたサンゴ。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


目の前の砂浜におりると、ピンクの昼顔が元気いっぱいに迎えてくれた。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


あ、これは手のひら大のアコヤ貝。ビーナスの誕生の貝だよね。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


この子もアコヤ貝。
中は真っ白で光っているんだね。
この辺の砂はちょっとゴールドが混じって濃いめの色なんだ。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


波よけの防波堤防。
よくみたら、鳥ちゃんが首をかしげてのんびり・・・
もうすぐお日様がのぼってガンガン晴れて暑くなってきそう。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


あ、スズメちゃんたちも沢山集まってきた。仲間同士とおしゃべりをしたと思ったらチュンっと飛んで行く。
夜のうちに下りていた雲もどんどん上がってゆく。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


明るくなってシルエットだった木々の緑も見えてきた。これは奄美大島に多いアダンの木ね。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


こちらのビビッドな赤い色のお花がテイキンザクラ(堤琴桜)。葉っぱがバイオリンに、花が桜に見立てられている。どこかで見たことあるなあと思ったらカリブの島で出会っていた。カリブ原産なんだそう。見ているとウキウキ体温も上がってくる。


佐仁, 奄美大島 by T. T. Tanaka


そしてハイビスカス。
ピンクもレッドもイエローもある。そぞろ歩いていると塀の上から花びらを広げていて元気いっぱい。
よーし、元気になってきた。
さあ、奄美大島周回に出発しよう!!
どんな旅が待っているんだろう。
楽しみ。


“おいしい水 Água de Beber”

突然、奄美大島に行ってみようと思った。日本の南の島・・。なんどもなんども地図を見ているうちにじわじわとその存在の大きさに気づいてきた。

同じ鹿児島県の鹿児島から380kmも離れている。東京から沖縄を話題にして訪れる人たちは多いけど、そのすぐ近くの奄美大島とはそれほどの往来がない。東京23区よりも大きな島! だし、直行便に乗ると羽田から2時間ちょっとで到着できるのに・・・。
自分も島のことをほとんど知らなかった。大きな島は車でないとまわりきれないこと、生態圏的には沖縄本島とダブる部分も多く、マングローブの北限になっていたり、ガジュマルやサキシマスオウの巨木やバナナ(芭蕉)、月桃などの木々が育っていたり、オオゴマダラなどの蝶、アマミノクロウサギ、鯨やイルカ、様々なお魚たちの回遊やマグロ養殖。歴史に刻まれた遣唐使、平家、琉球王国、薩摩藩、西郷どん、太平洋戦争、対馬丸、日本返還・・・。大島紬、相撲、画家 田中一村、サーファー、ビーチ、お魚もお野菜もフルーツも畜産品も新鮮で豊富。鶏飯をはじめお料理は日本固有の親しみ深い味わいのものが多く・・ そして極めつけはコロナ禍中の2021年に沖縄本島の北部とともに奄美大島は世界自然遺産に登録されたこと。以降、興味をもった日本フリークの外国人達もじわじわ訪れるようになっているのだ。リゾート・観光というイメージが強くなかった島のあちこちで民泊も整備されてきている。

実際に来てみたら初日から日本では久しぶりに全身で味わう一面の海の素晴らしさ。気づいた同じ緯度のフロリダの太陽の動きとまぶしさ。リラックスして体中が溶けていくのが心地よかった。そしてon the beachのレストラン。地元の食材とともにいただいたBlue Heaven ドリンクウォーター。
おかげさまでおいしくて体中が生き返った。
ドリンクにそっと添えられていた素敵な白い蘭のお花。
お花にとってお水は大事な存在。お水があるからイキイキと花も咲くことができる。

海とプールの 2 waters. 自然の水と人々がデザインする水と。
素晴らしい水たち。

人間生きていく上で一番必要なもの。お水。
そのお水がおいしいと元気に生きていけますよね。
飲むのもおいしい、目にもおいしい。

奄美大島。いきなり、僕をいっぱいwelcomeしてくれてありがとう。
さあ、これから、皆さんと奄美大島、一緒にまわりまーす!! お楽しみにね。

Photos, essay by T. T. Tanaka

※「おいしい水」1963年にアントニオ・カルロスジョビンが作曲したボサノバのヒット曲。フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、小野リサ他今まで多くのミュージシャンにカバーされていますね。チェックしてみてください。



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