World street skateboarding Rome 2023
世界のトップスケーターたちがローマに集結 -01-
ー WOMEN’S FINAL ー
Photos:Leonardo Rodriguez
Interviews & Text:Aco Hirai
Local / 2023.07.14
イタリアの太陽が燦々と照りつける6月18日。
1年後のパリオリンピック予選をかねたスケートボード・ストリートの大会「WST:ローマ・ストリート2023」がついに幕を開けた。
6月20日に行われたオープニングでの練習風景。
今年は、6月18日から25日までの8日間で、実際に競技がスタートするのは3日間の公式練習が終わった後の21日から。そして、24日にセミファイナル、25日にファイナルが行われる。
私は、選手の健闘ぶりをレポートすべく、セミファイナルが行われる24日にローマへ入った。
そして、去年の大会で、日本人女子が表彰台を独占するという快挙を達成したこともあり、今年はさらに彼女たちの活躍から目が離せないでいた。
会場は去年と変わらず、オッピオ公園内に特別に設置されたスケートパーク。パークからは壮大なコロッセオを望むことができ、選手たちや観戦者みんなのテンションを上げてくれた。
そして、迎えた25日のファイナル。
オープン予選、準々決勝、準決勝を勝ち抜いた男女8名ずつが決勝へと駒を進め、女子は8人中5人が日本人という、去年の活躍が蘇ってくるような期待に満ちた顔ぶれだった。
準決勝を1位で通過し高成績が期待される赤間凛音選手、去年の大会で3位というポテンシャルの高さを見せてくれた織田夢海選手、難易度の高いトリックで魅了する西矢椛選手に加え、わずか13歳ながらスケボー界の新星と言われるクロエ・コベル選手、2021年に娘を出産しカムバックしたガブリエラ・マゼット選手、そして、伊藤美優選手、上村葵選手、ライッサ・レアウ選手の8名。
女子ファイナル前の練習中。中央は西矢椛。
ここでルールをおさらいしておこう。
決勝での採点方法は、「ラン(45秒間でパーク内を自由に滑る)」を2回、「ベストトリック(単発の技の凄さを競う)」を5回行い、このうち「ラン」1つと、「ベストトリック」2つのベストスコアの合計が最終得点となり、順位が決まる。
男子と女子の練習時間が終わり、まだらだった観覧席はいつの間にか大勢の観客で埋め尽くされていた。
7:30pm、いよいよ女子の決勝が始まった。
トップバッターは、東京オリンピックの金メダリスト、西矢選手。
1本目のランで、85,60という高得点を出し、全体のレベルを引き上げた西矢椛。
スピーディで力強い滑りが印象的だったのは、ガブリエラ・マゼット。
途中、転倒し一度はパークから去ったが、すぐにカムバックし会場を沸かせた上村葵。
実は、ランからベストトリックへ移るウォーミングアップ中に転倒し、怪我の状態が心配された上村選手。観客たちが心配そうに見守る中、怪我の治療を終えすぐにカムバックしたものの、身体の痛みもあり、ベストトリックをうまくメイクできない様子だった。
しかし、4本目のベストトリックで、92.84という最高得点を叩き出し、会場からは「Bravissima!!」という彼女を称える歓声と共に拍手がおくられた。
会場にいるみんなが彼女の健闘を称えた瞬間だった。
準決勝から安定した滑りを見せてくれたのは伊藤美優。
大健闘だったものの、表彰台には一歩届かず4位という結果に終わった、ライッサ・レアウ。
1本目と2本目のベストトリックを見事にメイクし、高得点を出した織田夢海。
彼女がバンクに立つと会場に歓声が響き渡る。人気度、実力ともにトップクラスの注目スケーター、クロエ・コベル。
1本目のランで88,61という高得点をマークし、調子の良さがうかがえた赤間凛音。
そして、優勝を決めたのは5本目のベストトリックだった。
8人中、7人のトリックが失敗に終わり、最終ライダーは赤間選手。
この時点で、暫定トップはオーストラリアのクロエ選手。それを追うのは暫定2位の赤間選手。その差、6,64ポイント。
緊張が走る。
そんな張り詰めた空気の中、会場のみんなが息を飲みながら最後の赤間選手のトリックを待った。
プレッシャーに打ち勝ち見事5本目のトリックを決めた赤間凛音。観客のテンションを最高潮に高めた瞬間。
そして結果は、90,07という高得点を叩き出し、赤間選手が見事優勝した。
優勝が決まった瞬間、織田夢海と抱き合う赤間凛音。
会場内に「君が代」が響き渡った表彰式。
<女子決勝結果>
優勝 赤間凛音(日本)263.90
2位 クロエ・コベル(オーストラリア)261.43
3位 織田夢海(日本)246.38
4位 ライッサ・レアウ(ブラジル) 240.57
5位 伊藤美優(日本)234.48
6位 上村葵(日本)230.42
7位 ガブリエラ・マゼット(ブラジル)200.90
8位 西矢椛(日本)160.69
昨年のローマ大会では惜しくも4位だった赤間選手が本大会を制した。
そして、3位は織田選手、5位は伊藤選手、6位は上村選手、8位は西矢選手という結果に終わった。
セレモニーが終わり、フィスト・バンプを求められ、それに応える赤間凛音。
女子の決勝終了直後、パークからウォーミングアップエリアへ向かう彼女たちの元へ多くの報道陣が詰めかけた。私も駆け寄り少しだけ話を聞くことができた。
―赤間さん、優勝おめでとうございます。今の気持ちを教えてください。
すごく嬉しいのと、びっくりが止まりません。
―5本目のトリックが決まった瞬間とっても感動しました、どんな気持ちでしたか?
あの技は、ここで一回も練習していなかったので、きまらないと思っていました。それが決まったので超嬉しいです。
―決勝の前にご両親から何かメッセージはありましたか?
「とりあえず自分の滑りを頑張ってこい」と、応援してくれました。
報道陣に囲まれ取材を受ける赤間凛音。
続いて、2位のクロエ選手をキャッチ。
―おめでとうございます。今の気持ちを教えてください。
ありがとう、今はとっても興奮しています。そして、今日はとっても楽しめました。2位という結果はすごく嬉しいです。
―今夜は何かお祝いする予定ですか?
んー、わからないけど、今から男子の決勝を見て、とにかく楽しい時間にします。
続いて、3位の織田選手。
―おめでとうございます! 今回の大会はどんな気持ちで迎えましたか?
今回は絶対優勝するぞ! という強い気持ちでやっていました。
―大会を終えてみてどうですか?
最後の技をちゃんと決めたかったけど、決められなかったのが悔しいです。でも、3位という結果を残せたことはとても嬉しいです。
―今の気持ちをどなたに伝えたいですか?
応援してくれた家族やコーチ、友達みんなに。優勝はできなかったけど3位だったよ、と伝えたいです。
―自分のスタイルをどんどん出していきたいと話していましたがどうでしたか?
得意とは言えないんですけど、フリップから入るトリックを見せつけられたんじゃないかなと思っています。
そして、ナショナルチームの宮本美保コーチに選手の活躍ぶりを聞いたところ、「西矢椛は、今回狙った技に乗れなくて残念でしたけど、赤間凛音の成長であったり、織田夢海の本番での強さというのが、今回の大会で見ることができて、日頃の成果が出たのがすごく嬉しいです」と、胸の内を語ってくれた。
10分の休憩を挟んだら、次は男子のファイナルだ。
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Aco Hirai
2004年オーストラリア移住、2005年帰国、2019年マルタ島留学、2020年イタリア移住。 海外で活躍する日本人を取材したImhereマガジンを不定期で発信しています。(インタビュイー募集中)