“Travel is ENCOUNTERS” (フロリダ篇) #6

“Travel is ENCOUNTERS” (フロリダ篇) #6

Contributed by T.T.Tanaka

Local / 2018.08.06

Key West, FL, USA; by T. T. Tanaka

“夏本番---In the height of summer”

ヘミングウェイの家近くのカフェ。
キューバ葉巻をもったパナマ帽の男たちが集まり、女性の歓声が絶えず響いていた。
外は夏本番。ジリジリとsunshine。
さっそうと女性たちが歩いてゆく。肩とひたいがキリリと反射して。
シトラスの香りが一瞬遅れてやってきた。
カリブからの南風に乗って。




Key West, FL, USA; by T. T. Tanaka

St. Augustine Beach, FL, USA; by T. T. Tanaka

“波の音、風の声。”

どこまでもどこまでも続く砂浜。
車で乗り入れてもいい。Runwayと呼ばれている。ときどき、砂との相性が悪くってもぐってしまってブワン。。

でもこのBreezeがたまらない。
波の音、風の声。
だから週末がサブじゃなくて、メインなんだ。
大西洋, Atlantic Ocean。
もうひと泳ぎ。もうひと波乗り。
この時間が大切。うん。だから一人でもくるよ。彼や彼女ともくるけど。
顔をなでるBreezeの向きが変わった。
太陽も動いたね。
でも私の影はまだ短い。夏はうれしい。




Everglades, FL, USA; by T. T. Tanaka

“サバンナで二人”

どこまでもどこまでも続く草原。
大湿地帯。
東京都の10倍くらい!はある。絶滅危惧のパンサーや、ワニ、カメ、熊、蛇、ミサゴや大鷲、フラミンゴ、マナティーもいる。地平線が見えるこのサバンナには誰もが茫然としてしまう。ただただ自然の光・風・雨、さまざまな命がはるか向こうから押し寄せてくる感覚なのだ。この距離感がもしかしたら本能的な感覚なのかもしれない。
目線の向こうに見えているのは子供の時に見た景色、いや、自分たちの祖先たちの記憶なのかもしれない。。

「ほら、ヒロアキ、ぼーっとしないで、ちゃんと水分とってってば。。!」「キャ、キャロライン。。 き、きみは、スイートだ。。。!」




BigCypress, FL, USA; by T. T. Tanaka

“シャワーがPopに・・”

毎日、突然あっという間ににわか雨、シャワーがやってくる。
夏の証拠だね。
そう。だからときどき頭のはるか後ろを見ておかないとね。一気にやってくるから。
今日はシャツがずぶずぶ、したたるほどシャワーにやられちゃった。。。
でも、駆け込んだMiccosukeeインディアンビレッジでやさしいまなざしの人たちにもあたたかなアートにも出会えてうれしかった。お蔭さまで着替え用に買ったTシャツはpopなワニT-シャツだった。まさか、自分にとって貴重な思い出と素敵なおみやげになるとは思わなかった。

一気に自分を駆け抜けて行ったシャワーだったけど、しっかり自分の中に刻まれ残されていた。東京で雨に会うと、あのすさまじいフロリダシャワーがとっても恋しい。。




Everglades city, FL, USA; by T. T. Tanaka

“海はつながる”

こんなことは人生初めてだった。
夕方から激しいシャワー。時速100㎞の四駆は20m 先の車のテールランプだけが頼りだった。カリブからの湿った南風で激しい雨がフロントグラスを打ちつけていた。スマホをあてに午後6時に着いた小さな町は昨年のハリケーンの跡がまだ残っていた。期待していたレストランは跡形もなかった。モーテルのすぐ横のレストランに入り、簡単なステーキを食べジンジャーエールをあおった。激しい雨の音を聞きながら。チップを払ってレストランを出てエンジンをかけた。ブオン。

でもせっかくだ。メキシコ湾の縁まで行ってから寝ようっと。そしたら縁に止まった瞬間に雨が止んだ。どんどん雲が消えていくではないか。。明日も暴風雨予想なのに。え、太陽が出たよ。あ、メキシコ湾に沈む直前だ。向こうはKey West, そしてCubaだ。あ、あかい。わーーー! そ、それに、何気に振り返った東の空には虹が出ているではないか! しかも、半円状に綺麗に全部つながっているのだ。 茫然と水平線をみつめ、30秒ごとに円弧を見上げていた。
とってもとってもまぶしい幸せな時間だった。
子供の時に海辺で遊んだ感覚が戻ってきた。

そよ風にあたりたい・・・

フロリダの、
地平線と水平線。
緑の線と青の線。
フロリダには二つのラインがあるのだ。もしかしたら、この二つを見たくてフロリダに来ているのかもしれない。

フロリダでは毎日の自分の空間のサイズ感がまるで違うのだ。
東京では遠くてせいぜいほんの数メートル。一番頻度の高いスマホとの空間は数10cmだからせいぜいその数倍の空間の生活だ。それに遠くの山々は見ようにも目の前で視界は人や建物でブロックされている。
アメリカ大陸南東端にある巨大なフロリダ半島は標高が平均30mほどしかなく、大小の湿原をたくさん抱え、東と西は大西洋、メキシコ湾に面している。

二つのラインは地球の表面そのものだ。
遠くのラインを望む自分の背はいつのまにかすっと伸びちゃっている。
気づくと、色々な鳥の声、蛙の声、虫の声、風の音、波の音が聞こえてくる。
そして、風がそっと頬をなでていく。
やさしさに包まれる瞬間だ。
東京や大都市がなくしてしまったもの。そよ風。

砂浜の貝殻に目をおとした瞬間、童謡「浜辺のうた」 のメロディーがそよ風にのって流れてきた。
そよ風は過ぎた時にもそっとつれていってくれるのかもしれない。

また、来よう。

Photo/essay by T.T.Tanaka

イラストレーター by 瀧口希望


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