Travel is ENCOUNTERS
“Down by the Riverside”
フロリダ II 篇 #66
Photos, essay by T. T. Tanaka
Local / 2023.09.20
“スワニー川下流野生保護区”に来たよ
一泊したフロリダ北部 Lake Cityから更にスワニー(Suwannee)川沿いに約120km下ってきた。メキシコ湾はもうすぐ。
ここは 1979年に国に制定された野生動物保護区Lower Suwannee National Wildlife Refuge. 広さは210km2もあって川沿いに32km, 海沿いにも32kmをカバーしている。ここの保護区の目的は特定の動物の保護ではなくて、いきものたち全体のため、そして、わたしたち人間のためにもこの河口流域全体の環境を保全していくことなんだ。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
中に入るとこんな感じ。空に向かってぐーんと高~く木々たちが広がって育っている。15m以上はあるよね。ゆっくり流れる風にさまざまな葉っぱの音がまじる。ときどき鳥の声が明るくのっかってきて楽しい。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
少し低めのところには、一面のグリーンカバー。その下にはひたひたと水がたまっている。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
トレイルを15分くらい歩くとスワニー川岸まで到達する。
フロリダならではの内陸まで広がる白い砂。未舗装の道をあるくとシャキシャキっと気持ちいい音がする。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
まぶしい緑。くっきりシルエットの大木。まっすぐな幹にまじってカーブしたものも見える。糸杉、松の木、楓(カエデ)がたくさん。ノウゼンカズラがからんでいたり、ときどき鳥の巣のようなヤドリギも見え隠れする。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
目の前に現れた折れた木の株。直径50cmはあるかしらね。表面には緑の苔が育っている。折れてから大分の年月が経っているんだね・・ 落雷にあったのか、ハリケーンの強風で折れたのか・・
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
川近くになると湿地の上にウッドデッキ。快適にこの上を進む。
お、目の前の手すりのそこにどうして君、いるのかしら・・・?
アノールトカゲ。まわりの緑になじんで君も緑。
この子は、器用に背景とか感情(ほんと?)に合わせて色をブラウンやグレーに変えられることができるからアメリカカメレオンともいわれるらしい。でもどうみたってカメレオンじゃないけど・・
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
着いた~~!! 一気に目の前に広がるスワニー川。上流でみたときと景色がぐんと変わってまた素敵。向こう岸まで200mはありそう。川にせり出すような感じのウッドボードからの眺めがいいんだ。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
糸杉(Cypress tree)が水の中から育っている。
川の流れはここでもゆっくりゆっくりで音がほとんどしないの。静か・・。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
対岸の糸杉を望遠レンズで撮るとこんな感じ。
結構高さがあって、あちこちの枝からスペイン苔(Spanish moss)が垂れている。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
ウッドデッキは川にせり出していて、釣りをしたりもできるんだ。
ほらね。二人おしゃべりしながら・・・
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
遠くから水しぶきとエンジンの音が一気に近づいてきた。
海から上がってきたんだね。メキシコ湾から。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
この人たちは上流から。大きな浮き輪も乗せて。このボートは双胴船だから海にいっても揺れないでのんびりできるのよね。川沿いだとこんな感じで海に直接行けるんだね。いいなあ。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
っと、その船が行ったあとの航跡が波になって押し寄せて来るなあと思ったら下流からプカリプカリと進んでくるものが・・・ わーっ、わ、わに! (alligator)
びっくりした~
でもずーっと目で追いかけていると、可愛いんだわ、なかなか。泳ぐと背中が見えて。この子は小さめの50cmくらいかしらね。上流にゆっくりゆっくり泳いでいく。卵から孵化したときの赤ちゃんワニは10cmもないくらいだから大分成長したんだね。
これからも元気に育ってね~。
“15kmのNature Drive Loopに入ったよ~”
保護区にはフロリダ州、郡道路347号からの入口が北と南の二つある。それらを自然の中、未舗装のままの道路がつないでいるんだ。その距離は9マイル(約14km)もある。その間は道路をはみ出さない限り、自家用車で移動してもいいんだけど商用車やゴルフカード、オフロードバイクや、標的射撃、キャンプや乗馬は禁止。普通に自転車や、リーシュにつないだペット、野生生物観察、釣り、写真撮影、狩猟(要規制遵守)はOKとなっている。ルールを守っていれば多くの人がアクセスできて広大な自然そのものを堪能できるのが嬉しい。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida,USA by T. T. Tanaka
地図とかパンフが欲しいなあと思っていたら、保護区オフィスの標識。
行ってみよう行ってみよう。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
↑地図を見ると今、メキシコ湾に流れ込むスワニー川の広大なデルタ地帯にいることがわかる。
生き物や植物など色んなリーフレットもある。
なるほどなるほど・・・ この湿原にはスワニー川からコンスタントに養分が供給され、海岸にある多くの島々の間からの満ち引きのある潮が流れ込んでいる。250種を超す種類の鳥たちが観察でき90種類以上の鳥たちが巣をつくっているんだ。 ツバメ鳶, 白頭鷲, コウノトリ!, ミサゴ(osprey), オウゴンアメリカムシクイ(Prothonotary warbler), フクロウ, 七面鳥, イソシギやその親戚たち, 千鳥, 鴨(Diving duck), トキ!, さまざまなサギたち・・。それに マナティーやチョウザメ, 鹿(White-tailed deer), オオヤマネコ(Bobcat), ハタネズミ, 狸, カワウソ, コウモリ, ワニ, さまざまな蛇や亀, 陸亀たちを見ることができるんだって。お魚さんたちも貝類もいっぱい。
スワニー川、すごい、メキシコ湾えらい。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
すごいわ~ えらいわ~ とぶつぶつ言っていたら、
「どこから来たの~?」とレンジャーの人が・・・
「はい。日本から。カメラマンなんです。さっきスワニー川のほとりまで往復してきました~! ここの自然のままの林は気持ちいいですね~。鳥の声もいろいろ、ワニも見えたし、体もリフレッシュできました。素晴らしいですね~」
「そうか~!! よかった、よかった。 嬉しいよ~!! そうなんだ、ここは自然のままが楽しめるんだ。あ、そうだ、これね。僕が今朝とった大きな蛇なんだよ。」
スマイルはじける顔を僕に近づけて、今朝撮った大きなCottonmouth蛇をスマホで見せてくれた。
「日本にいる多くの人達はフロリダにこういうところがあるって知らないんです。ここのオフィスも一緒に撮ってお知らせしていいですか~?」
「おー。全然いいよ~。僕はJohn. こんな感じでいいかい?」
思いっきり手をふってオフィスを後にした。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
事務所を出るとまぶしいループ道路が・・。
もったいなくってゆっくりゆっくり進んでゆく。砂の音を聴きながらハンドルを切って松の木の向こう、次のカーブへ・・。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
サギが飛んで行くのが見えた。小川が流れている近くに止めて歩いてみる。
わ、松の木とヤシの木の枝の間から大きな白い鳥が羽ばたいた。トキだね。長いくちばしがカーブしている。その真下の木陰。真っ赤な点がすばやく左に右に・・。あ、その鳥さんはCardinal(ショウジョウ紅冠鳥)ね。
足元に目線を落としたらヒメジオンみたいなピンクの花がいっぱい。そこにブーンと飛んできた虫さんがランディング。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
こちらはorbweaver(球状のクモの巣をかけるクモ). この辺に多く繁殖しているらしいんだけどオレンジ色まじりの緑色がつやつやしていてきれい。ダーウィンが1832年に採集したものらしい。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
ピンクの花にピッと飛んできたのはセセリチョウ. カリブ海からフロリダあたりまで見られるThree-spotted Skipperと呼ばれている蝶。羽のところに3点白いスポットがある 。さかさまでもうまく花につかまってこれから蜜をすうところ。器用だね。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
羽を元気いっぱい広げているこの蝶はパラメデスといわれるアゲハ蝶(Palamedes Swallowtail)
理由はわかんないけどギリシャ神話の英雄の名前で呼ばれている。10cmくらいの羽にはクリーム色の斑点が続いていて美しい。
調べてみたら、この蝶、すごい防衛技を身につけているんだそう。卵からかえったばかりのちっちゃな時は、グレーと白まじりの鳥の糞そっくりに見え、ちょっと大きくなると今度はgreen snakeという蛇みたいになり、頭の付近には光る目があって黄色のふちどりで口を大きくあけているように見せるんだって。でこの「偽装」で敵をごまかせないときには最終兵器として、鼻をつくような匂いを発する・・!
すご・・・。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
自転車くらいのスピードで30分くらいゆくとちょっと開けた明るいエリアになったので止まってみた。Pond 6 という標識がある。一帯は石灰岩質だからそれがすり鉢状にちょっと落ち込んで池になっている感じかしらね・・ きれいな水が空を反射している。緑の木々が池のまわりを縁取って、水面には蓮が沢山その葉っぱを浮かばせている。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
そうなんだね。水際にはトンボも沢山飛んでいる。シオカラトンボのようなライトブルーの子もみかけたし、この子はHalloween Pennant(ハロウィーンの旗)と呼ばれている子。羽の模様が派手で蝶のように見える。 存在感あるでしょ?
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
池には大きい蓮の葉っぱも育っているけどこんな小さな葉っぱたちもある。日の光をあびてキラリキラリ。
ときどきアメンボウの水紋が見えたりしているけど濃いブラウンの水は静かに横たわっている。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
と思ったら、
えーっ!
突然顔を出した小亀ちゃん。
かわいいーー!
あら? その横の蓮の葉っぱから顔出ししているのは、河童ちゃん?
“メキシコ湾に着いた”
更に30分くらい南西にループ道路を進むと Barnett Creekというところに着いた。スワニー川の河口に広がる大きなデルタ地帯。メキシコ湾に面したところ。陸地の縁ね。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
今まであった茂みが一気に木の少ない湿地帯の湿原に変身する。さえぎるものがなくってお日様の光線がダイレクトに地面に照り付ける感じになる。白い砂地の道路が眩しい。(来た方向を振り返っています)
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
目の前が陸地の終わり。目の前はメキシコ湾。
元気なヤシの木が主役になっていますね。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
こんな感じでサバンナのようなというか、下は沼地。遠くにもヤシの木たちが見えています。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
あら、気づかなかった。目の前のヤシの木にバッタ君がちょこっと。
潮風に動かないシルエット。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
潮の干満でゆったり海水が入ってきたり、川の水がまざったり・・。
雲の影がその水面を動いてゆく。
あ、草の向こうで魚がジャンプした。
すぐ近くで小さな水面を走るお魚の音もする。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
気になる動きがあると思ったらシオマネキ(Longwave gulf fiddler crab)ちゃんがいました。元気いっぱいにハサミを使って潮、招いています。ブルーの甲羅が綺麗ね。
うーん、シラサギたちや、狸や亀たちの好物らしい・・。
魚の餌にもグッドなんだそう・・。
うーん、かわいそうな気が正直してしまう・・
“貝塚だよ!!”
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
そして、更に南側の湾に面したところにShell Mound (貝塚)があってそのエリアが保全されているのだ。
誰でも簡単にアクセスできて、海岸はこんな感じの湿地で、海には釣りの桟橋備えられている。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
フロリダで、アメリカ合衆国で、貝塚っていうのが頭の中で結びつかなくて・・・。
これがこのエリアの地図なんだけど、半円の濃いところが盛り上がった貝塚になっているんだ。
行こう、行こう!
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
7mの高さに盛り上げて作られた半円の貝塚。そこを巡る前にその内側にあるひろーい円形エリアを歩く。Lower Suwannee野生動物保護区になるはるか昔、なんと3000年前から人が住んでいた地域なのだ。
この円形エリアでは大規模のお祭りが西暦400~650年の間、一番昼の長い、夏至(6/21前後)に行われていた。今のジョージア州からも含め広域から人々が集まっていたよう。60リットル!もの大きな「鍋」が発見されているんだけど、牡蠣(カキ)や魚のボラや鳥、亀などが料理されていたことがわかっている。100人にも満たない村落のここに数百人もの人々が賑やかに集まったのだ。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
背後にある半円の貝塚を上ってゆく。不思議な感覚になるのは、その当時からの貝がいっぱい足元に露出していて、いいのかなと思いながら、その上を歩いていくのだ。この貝殻、12億個!!!!もあるんだそう。ちょうどもともと自然にある砂丘---1500年前の最後の氷河期のときにできた---の上に作られている。そして、その半円の最先端と半円の中心を結ぶと、夏至と冬至の日の出の方向となる!! 太陽はこの間二つの世界を旅し、先祖の霊も往き来すると言われている。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
これ、一面、貝殻だらけ。白く見えるのは全部そう。
なんと、ここが遺跡として保全される前の1970年代は私有地で、道路の砂利や肥料や建築用材として掘り出され使われていた。スワニー川河口エリアには貝塚が数か所あったようなんだけど、ほとんど掘り出されて元の形がなくなってしまい、奇跡的にこの場所だけが残っている。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida, USA by T. T. Tanaka
そもそも牡蠣に右と左があると知らなかったんだけど、この貝塚には「左殻」が「右殻」よりずっと多いのだそうだ。右殻は「ふた」みたいな方で「身」がついていてそれをはがして食べるんだけど、食べたらその右殻は海に戻されていたんだ。浅瀬の養分になって小さい牡蠣の栄養のために・・・。 一方、左殻は貝塚の建築の材料として集めて使われた・・・
そんなことが発掘から気づけるんだね。
そして、お魚、ボラの骨も貝塚から沢山出土している。このメキシコ湾沿いにはボラ(mullet)がいっぱい棲息しているからね。僕も最初にメキシコ湾を訪問したときにあまりにもあちこちでみられる魚のジャンプにびっくりして地元の人に教えてもらった。卵がカラスミになるあの魚ね。数十センチくらいに大きくなっているのも結構みられるんだ。ところが出土するボラの骨は殆どがそんなに大きくない3才ものなんだ。ボラは3才になったときに最初の産卵で湾の深いところにもぐっていくんだそう。なんと、この2km南の島に同時代に牡蠣殻でつくられた仕掛けが発掘されている。水中深くもぐっていく3才のボラを大量にお祭りのために捕獲していたようなんだ・・。
(※フロリダ大学などの最近の研究)
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida,USA by T. T. Tanaka
驚きの連続の中、貝塚を歩いて一周してきた。
メキシコ湾に浮かぶ島々が美しく、思わず深呼吸。
スワニー川が流れ込むメキシコ湾。潮の満ち引き。吹いてくる風。
3000年も昔から人々が住み続け、西暦400~650年の間、命と太陽・宇宙を感じながら祭りには広域から人々を集めていた先住民たち 。その住人たちは忽然と姿をこの一帯から消している。その原因はまだわかっていない。ハリケーンにやられたのか、それとも徐々に変化した環境のせいで住めなくなったのか・・・。
Lower Suwannee National Wildlife Refuge, Florida,USA by T. T. Tanaka
素敵な景色の中、チャプチャプ・・・という波の音。
昔からこの景色は同じなのだろうか?
子供たちのはしゃぐ声、釣りで盛り上がる歓声・・・
元気よくハサミをふりかざすシオマネキたち・・・
とっても大事な時間を感じることができた。
ありがとう。
“Down by the Riverside”
あーかわいかったな~
池でひょっこり顔出しした亀ちゃん。
あーあのスマイル、素敵だったな~
レンジャーのJohnさん。
今回もいろんなことに遭遇して、またもや驚きの連続だった。
まさかの貝塚。
貝塚について関心を今までそんなにもったことがなかった。そもそも日本にしかないもので人々が食べたあとの貝の殻を積んだものだろうぐらいにしか思っていなかった。
アメリカ大陸の先住民たちが1600年ぐらい前に築いていたその塚にはいろんな知恵が積もっていた。そして今の我々よりはるかに宇宙は近い存在で生活の中にあったんだね。
水源のジョージア州のOkefenokee湿地から400km近くスワニー川沿いに下りてきたんだけどその最中はドラマだらけだった。みてビックリ。調べてビックリ。川ってそんな驚きを生むのかしらん?
ふと、音をほとんどたてずに静かに流れてゆくスワニー川をみつめていたら、 “Down by the Riverside” という曲のメロディーが頭の中をよぎった。僕の好きなジャズギタリスト, Wes Montgomeryの演奏。この原曲はゴスペルソング。いろんなミュージシャンたちが元気いっぱいノリよく明るく歌っている。改めて歌詞をみたらビックリ。
“I’m gonna lay down my sword and shield
Down by the Riverside・・・
I ain‘t gonna study war no more・・”
“剣も盾も置いてしまおう。川岸へ降りてゆこう。
もう戦うことを学ぶのはやめにしよう・・”
今の世の中の軍事侵攻のことも浮かんでしまうけど、ベトナム戦争のときには反戦歌として歌われていたんだそう。実は元をたどると19世紀のアメリカ南北戦争の時から奴隷たちの多くが労働歌として歌っていた・・・。そして歌詞はもともと、旧約聖書からの文言で、川はヨルダン川をさすとのこと。ニューヨークにある国連本部ビルの壁に刻印されていてレーガン大統領も国連総会で引用している。
フォスターの作詞作曲した「はるかなるスワニー川」も黒人の故郷を想う気持ちを映していたけど、この曲もまたその時代につながっていた。
生き物にとってなくてはならない水。その水がながれゆく川。川には時代を民族を人種を超えてひきつける力と、大事なものに気づかせる力があるように感じる。
Down by the Riverside.
Photos, essay by T. T. Tanaka
※ “Down by the Riverside” 機会があったら検索して聴いてみてください~ 多数のミュージシャン達に歌われてきている。古くはビング・クロスビー、エルビス・プレスリー、ナットキングコール、ポール・アンカ、ピーター・ポール・アンド・マリー、ウイリー・ネルソン・・・。ジャズではウエス・モンゴメリーやジミー・スミス、ルイ・アームストロング、オイゲン・キケロ、ハンク・ジョーンズ、ウィントン・マルサリス、クリスチャン・マクブライド・・・。
吹奏楽部のマーチングバンドでも結構演奏されることがあるし、 1960~70年代のマクドナルドのCMソングではその替え歌が使われていた。
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T.T.Tanaka
のっぽの体形からつけられたニックネーム、トーキョータワータナカ。出身は兵庫県。フォトグラファー/エッセイスト。今までに30ヶ国以上を旅してきている。アメリカではフロリダ州などに在住経験あり。マーケティングの世界に身を置きながら同時にフォトグラファーとして国内外で活動してきている。国内外各地の風景、街、人、いきものたちのお茶目なサプライズを自由に切り取って写真制作および展示、スライドショーを展開してきている。写真集ENCOUNTERSシリーズ(Ⅰ,II,Ⅲ,Ⅳ,V,VI,VII;日本カメラ社)は幅広いファンから愛されている。最新刊ENCOUNTERS in Pakistan (みつばち文庫)は子供たちのピュアな笑いがいっぱい。