Travel is ENCOUNTERS (グリーンランド篇) #34

Travel is ENCOUNTERS (グリーンランド篇) #34

Photos, essay by T. T. Tanaka

Local / 2020.12.21



“ヤァ!ヤァ!ヤァ!”
Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

冷たく、冷たく、乾ききった闇を一気に切り裂いた光線。
凍結岩盤が反射する。指先がピリリと痛い。
澄みきった北極圏の朝日はまぶしい。



地表は砕けた小石の未舗装道路。
朝6:30 港の方へ、町の真ん中へ、下りてゆく。
あ、まさかの人影。わーい。「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」 って思わず声を出して手を振ったら、向こうも手を振ってくれた。近づいてきたら、おじさん。
ほら。にっこり。話しかけてくれたんだけど、グリーンランド語わからないよ~。とっさに間抜けなことに日本語で「おはよー。いい天気ね~。」って笑顔であいさつしてしまった。そしたら思いっきりハグ。まったく言葉が通じてないのに握手までしてバイバイしたよ~。
そういえば、僕のおじさんにとっても似ている気がする。いい笑顔に朝から会えてうれしい。



町の中心に下りてきたら車も走っているけど、みんな歩く歩く。
結構速い速い。寒いものね。さっさと。
でも素敵でしょ? 笑顔。



高い送電線はあるけど高い建物はないの。ひろーい。空も。
地面はちょっとステージみたいなんだ。
シルエットもきれいに決まるの。
素敵。
あ、ポーズ、ありがとう。
女性が元気いっぱい。



こっちはベビーカーを押すママ。大きい歩幅。
どんどん行くよ~。ベイビーもスピード感、身につくよね。
これは町で一番大きなアパートみたい。海まで歩いて7分。北極海まで。



一人で歩けるのよ~! 完全防寒して。ほら。よっちよっち。
お母さんがこけないようにやさしく背中をフォロー。
パッツンパッツンにアスファルトも凍ってひび割れしている。



陽をあびて目覚めたアパート。
窓ガラスの光はあたたかく反射する。
あ、お父さん、お母さんと手をつないでいるね。
ブルーの壁がほっこり。






“Children’s world”
Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

「いえーい。待て~!」 「わー!! ひや~!」(と言っているみたいです。☺)
粉雪が風でささささと足元を舞う道路。
鬼ごっこはここでもというより、ここでは健在。
もう必死でおっかける顔が真剣。まだ零下5度くらいだから顔は凍らないかしらん。



この子はガードレールの上にのぼって、「お迎えこないかな~」って向こうの方、チェック中。手で鉄柱持っているけど、車が来たら片手を目いっぱい振るんだね。真っ先に見つけて、真っ先に見つけてもらうのよね。うん。
でも、落ちないように気を付けてよ~。



友達と待っているの。ここ、バス停。放課後、お家に帰るんだけど、そう、動いていないと指も息吹きかけないと凍っちゃうよ~。
何年住んでも寒いのは寒いの。



運動場にサッカーゴールが向き合っています。だいぶ陽が傾いたね。今シーズンのサッカーもぼちぼち終わり。





さっきまでのみんなの歓声は消えて家路に小さな人影が向かう。
日暮れはやっぱり少し寂しい。秋はもっと・・。



そうそう、子供のころ、よくやったなあ・・なぜか、くぐってのぼってゆくの。
ちょい近道。ちょいうれしい。ふふ。
ケガしないでね。



「おかあさーん。帰りたくないよ~・・・」
その気持ち。よくわかるよ~。みんなで走り回っているの楽しい。
これだけ広い運動場は楽しい。でも、雪がないのは3か月くらい。



みんなが帰った後、ちょっと残るのがドキドキするんだよね。
いけないいけない早く帰らなきゃと思うんだけど。不思議なスリルがあるもの。
もう降った雨はすぐにカチンカチンに凍ってしまう。ジャンプして着水(氷)しても割れないの楽しい。
すべってこけるけど。だってこの時しかないんだ。もうすぐ雪でいっぱいになっちゃうから。
向こうは北極海。
空がドラマチックに流れている。
子供たちのシルエットが今でも頭に残っている。






“To the place where people gather”
Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

旅先でも人の流れをたどってゆくと、よくガソリンスタンドやスーパーにつながります。
そう。車も人も必ず行くからね。
つい足先が向いてしまうところ。
人恋しくなると特に。





ガソリンスタンドはいろんな音であふれている。エンジンの音、タイヤの音、ドアの音、鍵の音、店員の声、ドライバーの声、ガソリンポンプの音、お店の扉の音、キャッシャーの音・・・
え、ここ、ごろんごろんと大きな石がブロックがわりに。。 そう。 地表はぜーんぶ岩盤だから。





人が集まってくるところにはまだまだポスターが貼られている。
ちょっと懐かしい。
カラフルだなあ、楽しそうだなあと思ったら、サーカスのポスター。
そうかあ。体育館がメインの会場なんだね。いろんな天候からも守れるし。
グリーンランド5か所もまわるんだ。
大人気のあったかーくなる盛り上がりエンタメだね。見てみたかった!!





ネットはあるけどスーパーの入り口にはきっとここしか掲出しない張り紙もベタベタ。車や家具の売ります、買います、アパート情報、リサイクルお知らせなど。
そうそう。とにかく、早く買い物しないと陽が落ちてゆく。
つい急いでしまう。スロープの表面はすべらない金網ね。
次から次に人が出入りして、やっぱりうれしい。
自分も生きている感じがする。



そ、子供たちも、親たちと一緒に来ることが多いけど、にぎやかにぎやか。
わ、マジシャンみたい。大きく叫んだら、隣の男の子がこけたよ~。
あ、ここは、ね、7-11じゃなくて、7-21なの。閉店が21時だから。






“静かなる音”
Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

町の中心といってもモールがあるわけではなく、数軒のお店やバス停や案内所があるだけだけど、そこから7分ほど歩くと、もう海岸。
夕方の海岸は空に何本も雲の川が流れているみたいだった。





足音にオッと思ったらランニングで坂を下る女性が一人。
はるか向こうには氷山が浮かんでいる。
人の声は聞こえない。海の音だけが静かに流れている。教会がひとつ。
教会の塔と屋根と窓がとっても整然としてきれい。
グリーンランドでは殆どの人がルター派のキリスト教徒。ここは地球上で最北にある教会といわれている「Zion’s Church」。 1780年頃にたてられ、のちに一部は病院になったとのこと。





アーチの窓の向こうに岩肌が見えている。
風向きが変わるとすぐ粉雪で十字架がかすむ。





向こうに見えるのは今の病院。北極海の氷山を望む位置にある。
教会の入り口の装飾がまあるい。
北極海の海の音、氷山の音、風の音が静かだけど音楽のように奏でている。
あ、そういえば、これ、へ音記号みたい。
低い音も響いているね。






“Home”
Ilulissat, Greenland, Denmark; by T. T. Tanaka

海の縁に着いた。まさに岩盤。
大きく緑っぽい裂け目が入り、でも波に削られてきたんだね。
つるんとした岩肌。
遠くには氷山



海の中にずーっと入っていってゆく岩盤。
砂浜でもなく、磯でもなく、岩盤。先端は青い海になじんで見えなくなっている。



つるんとした遠浅岩盤に流れ着いた氷山のカケラ。引き潮で取り残されている。
病院の窓からも毎日変わる白いカケラたちが見えていると思う。





思わずひきつけられてしまった氷山のカケラ。思いっきり近づいてみたら人の身長もないくらい。中にはもう明日には水になって消えてしまう小さなものも。
氷の表面が紋様になっているものがあってびっくり。どうしてこんなのができるのだろう。何年前のもの? ひょっとして10万年以上前のものなのかしら?
中には帽子をかぶってマフラーをまいたようなカケラ君もいるよ。





陸の氷河で何年も圧縮され河口に流れた雪たち。海に放出され浮かび漂流。
小さくなってまた岩盤に戻ってくる。



それはそれは長い旅だったろう。
よく帰ってきたね。思いっきりだきしめたい。
ここは君のHomeなんだよ。よく頑張った。ここで溶けていいよ。

※ “Home” 同名のJazz tuneがあります。検索してみてください。



“Going home”

さ、家に帰ろう。
そ、仕事終わりにして帰りたい。
今日も疲れたね。お疲れ様。
ああ、自分に返りたい。

でも、忘れていた感覚があった。

もう、家に帰ろう。
いや、まだここにいたい。
みんなともっといたいよ~。
けど、帰らなくっちゃ。

いやだよ~。
グリーンランドの子供たちに出会って思い出した。
短い夏の日々。友達と外で一緒に思いっきり遊びたい。
秋の声を聴くともう零下。指も凍えるし、体も震えるし。
そしておひさまもすぐ沈むけど、待って~!
もうひと蹴りしたい。一緒にボールを。
もうひとジャンプしたい。一緒に氷の上を。
ここでは大人たちは足早だ。陽が当たってあたたかいうちに少しでも多く用事をすませたいから。
でもその大人たちも子供のまだここにいたい気持ちはよーくわかっている。
そのまなざしはやさしい。

そして毎日、目にする海岸に流れ着いた氷山のカケラたち。
自分の子供の時よりもずっとずっと前からのタイムカプセル。
自分の視界にあるカケラたち。
よくここまで帰ってきたねという感覚になるのだ。
なんかたまらなく愛らしいというかギューッと抱きしめたくなる。
ここがhomeだよ。
とっても冷たい空気で指先も凍るけど、
そこにはあたたかい時間が流れていたんだ。

※ “Going home (家路)は同名のクラシック曲, それをアレンジしたJazz曲も多くあります。検索してみてください。



Photos, essay by T. T. Tanaka
イラスト by 瀧口希望
(※2020年より前の取材を元に書いております。)

グリーンランドに関することはこちらのグリーンランドノートをチェック。


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