アソーレスノート

アソーレスノート

text by T.T.Tanaka

Local / 2020.02.26

Azores(アソーレス)諸島は大西洋に浮かぶ9つの島からなっています。ポルトガルに属しています。リスボンから1200km、アメリカの東海岸からは3900km。リスボンから飛行機直行便で真西に2時間。アメリカのボストンやカナダのトロントなどからも直行便で4時間くらい。
太平洋の真ん中にあるのがハワイとすると、まさに大西洋の中にはアソーレス諸島があるという感じなのだ。だけどほとんどの日本の地図には掲載されていない。理由は日本を中心にした地図だと、右端のさらに右か、左端の更に左で海になって切られてしまっているからだと思うんだ。
緯度的にはリスボンと同じくらいなので、寒くも暑くもなくまさに温暖ですごしやすいエリア。夏は平均温度は20度少し、冬は14度くらいで雪はまず降らず零下にもならない。
ちなみにAzoresとは鷹(hawk)の意味です。鷹はいないはずなんだけどね。。


日本から飛行機でのアクセスは比較的簡単で、リスボンかフランクフルトなどで乗り換えれば到着する。フランクフルトだと一回の乗り換えで着いちゃいます。リスボンからだと国内便なんだけど、便によってはアソーレス経由でアメリカ ボストンやカナダ トロント行きの国際線扱いとなる。まさにこの素敵なアソーレスを経由して地球を一周することができちゃうんだ。



アソーレス諸島はポルトガルの一部なのでヨーロッパの最西端になるんだけど、地質学的にもユーラシアプレートの端っこにあたるらしく、基本的には島は火山でできている。9つの島があって、富士山のような形のピコ島ではワインが美味しいし、テルセイラ島にはアメリカの基地もあり復活した街並みもあって、それぞれ世界遺産登録を受けている。最大島はサンミゲル(Sao Miguel)島。
サンミゲル島は芋虫の形をしているといわれる横に約70㎞、縦に約10㎞の島。観光バスのツアーもあるし、個人で色々動きたい人にはレンタカーも簡単に予約できるので移動で困ることはないと思う。宿泊場所もさまざまなネットで予約は簡単にできる。島にはいくつもの町、村がある。小さくても教会や広場、そして地場のレストランやお店など気軽に楽しめる。全体としてはのんびりしていてこちらからあいさつするとほぼ全員から笑顔が返ってくるの。。
火山、カルデラ湖、崖、遠浅のビーチ、渓谷など自然の変化に富んでいる。僕のイメージだとまさに伊豆半島をそのまま大西洋にもっていったような感じなんだ。
はるか昔1541年にポルトガルは日本に到達したんだけど、以降さまざまな交流が続き、江戸時代に日本から杉やアジサイやさまざまなものがこのアソーレスに導入された!! といわれている。火山や地獄谷のような噴出しや湖は本当に伊豆箱根にびっくりするほど似ている。

産業は漁業、農業、そして盛んになってきた観光業。
昔は燃料補給の油のために捕鯨も行われていたが今ではホエールウォッチングが盛んになっている。アソーレス諸島は海底の地形も多様。大きな海流も流れているため様々なお魚が豊富にとれる。マグロ、サバ、ハタや、タコ、イカなども美味しくて多くの人達に愛されている。
温暖な気候で農作物も色々育ち、オレンジはスペインのバレンシアオレンジが世界でメジャーになる前はアソーレスのオレンジが主流だったようだし、様々なお野菜もみずみずしい。牧畜もヨーロッパ大陸からもたらされ牛、豚、ヤギ、鶏など沢山いるし、乳製品もいろいろで様々なチーズ、バターを楽しむことができる。お料理も本国に比べてオリーブオイルベースだけでなくバターベースのお食事も多いといわれている。林業では日本杉があちこちで植林されていて切り出されて活用されている。杉並木も散見される。
島内にはヨーロッパ唯一ともいわれる茶畑もあって緑茶や紅茶が生産されていてなんと抹茶ベースのスイーツも美味しい。

歴史的によく言われているのは1427年に発見されて以降、南米新大陸進出の航路にあたり、財宝が陸揚げされたところでもある。しかし、それ以前から人々は住んでいて、紀元前の地中海南のカルタゴ人(ベルベル人)の遺跡が2011年に発見されている。
ちなみに、ポルトガルからのブラジル永住は1500年くらいからで、東に向かった彼らは1541年に日本にも着いている。その頃、ポルトガルは世界で最初のグローバルな国だったといわれることもある。
アメリカ、フランス、イギリス、ロシアなど列強の中で地政学的にも鍵となるエリアなのだ。
今でもテルセイラ島にはアメリカ軍が駐留している。

自然界で発見された哺乳類は9種といわれている。コウモリやネズミやウサギ、それにイタチの一種の小型の日本にもいるイイズナ(飯綱)などだ。
植物も人が交流する間にどんどんヨーロッパ大陸から移植されていて、また、日本からも杉やアジサイなどがもちこまれていて一気に広がった。固有の草木花はかなり肩身の狭い状況になっている。観光の人気はヨーロッパでもアメリカでも高まってきていてリゾートもどんどん洗練されて素敵になっていきているけど生態学的にはもっともっと配慮が必要になっていくと思う。

ちなみに、アメリカ紙・USAトゥデイは「大西洋の真ん中で、最も神秘的な場所」と呼んでいます。エメラルドのビーチ、澄んだ青い湖、なだらかな牧草地、火山の洞窟、海に広がる朝焼け、飛沫をあげて峡谷に流れる滝……。UNESCOは2009年この自然豊かなアソーレス諸島を「生物圏保護区」に指定している。この島々は多くの人たちが「地球の楽園」と形容しています。

色んな発見、驚きが素敵な時間の中で得られると思うので、この大西洋のど真ん中の島々に身を置いてみることを是非おすすめしま~す。


イラスト by 瀧口希望




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