海と、砂浜とおじさんと。

えもーしょん 高校生篇 #7

海と、砂浜とおじさんと。

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.01.14

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#7
「海と、砂浜とおじさんと」
(2013〜2016/カイト・高校生)

シャンシャンと、輝く太陽と

蒸し暑い、無風の夏の朝。

「はよ、海へ行かんかい」と

言わんばかりに、どんどん

暑くなるではないか…。

自転車の、スタンドを立て

上半身だけのウエットスーツを

カゴから取り出し

ビーチを歩く。

朝露で湿っている、砂が

疲れた、ボクの足を優しく包む。

ゆっくり、そぅっと…。

ボードを波打ち際に置き

朝のストレッチ。

首、肩、腕、胴、足と。

ゆっくり丁寧に

伸ばしていく。

最後に、シャヴァーサナで

フィニッシュ。

はぁ、このまま眠りたい。

リーシュを付け

海へ。

少し、水は冷たく

川のよう。

昨日の晩に、どうやら南風が吹いたようだ。

ボクは、堤防の流れを使い

沖へ出る。

堤防の先端で

ぐるぐると巻いている、渦のタイミングを

見計らいながら

たまに襲いかかる、セットを見計らいながら

沖へ出る。

はるか、沖

見える視界の最大限沖から

波が割れている。

ボクは、今日はここかな。と

堤防から、約20mの位置で

ようやく、波待ちをした。

「ふぅ」と一息。

今日は、何の練習をしようか。

波を見ながら

想像する。

エアーとか、縦リップとか

チューブとか

そういうのは、好きじゃない。

普通に、ゆっくり早く

気持ちよく、情緒不安定にサーフィンを

するのが好きだ。

しかし、大会に勝つためには

点数がつく、サーフィンをしなくてはならない。

その、葛藤が

高校生になってから芽生え始めた。

多分、今まで

物心つく前からの、両親の洗脳が

少し溶け始め、自我が芽生えてきたのだろう。

さて

今日は、どうするか

勝つために、サーフィンをするか

まぁ、試合も近いしな。

それもいい。

けど、待てよ。

こんなにも、綺麗な空と太陽

ビーチでは、親子が幸せそうに

遊んでいるのに…?

いやいや、無理だろう。

腐っても、ボクはボクだ。

今日は、思う存分

カービングしようじゃないか。

20m先、ポコンと

セットが水平線から顔を出す。

ふふふ。

ようこそ。そして、ありがとう。

セットを見つけた、三、四人が

右へパドルした。

ふふふ。

「こっちだよ」と

ボクは左へパドルする。

すると、どうだ。

ビビデバビデブー。

地形は、左に砂が付いていることを

ボクは知っていた。

見事に、ボクの真ん前

ピンポイントで

ピークが出来上がり

「えええええええ」とびっくりする。

おじさんを横目に

テイクオフ。

続く


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