ボクの、3痛

えもーしょん 大人篇 #36

ボクの、3痛

2016〜/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.07.06

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をエッセイと写真で綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#36
「ボクの、3痛」
(2016〜/カイト・大人)

蒸し暑い、梅雨の夜。

ボクはうなされていた。

幾度となく、寝返りをしても

枕の位置を変えて見ても

ベストなマイポジションが見つからない。

が、そんなことではない。

うなされているのは

肩こり、腰痛のせい。

なにかの、誰かのせいにはしたくはないが

こればっかりは、しょうがない。

とにかく、酷い。

腰痛は、足の裏に冷や汗が出るほど

痛く、そして生まれたての小鹿のように

足に力が入らない。

肩こりも、酷い。

肩甲骨の下あたりから

肩にかけて、凝り固まっているような…。

さらには、肩こりのせいか

頭痛が、治らない。

朝、目が覚めると

第一声は決まっている。

「あったまいたい」

「肩痛いし、腰痛い」

隣で寝ている、彼女が

「また? 病院行きなよ」

と、寝ぼけたまま適当に返してくれる。

ボクは、はーはー言いながら。

「頭痛い…肩痛い…腰痛い…」

を連呼する。

彼女は、少し呆れた様子で

「大丈夫?」

と、言ってくれるが

大丈夫。なら痛いと言わない。

こちらは、痛くて痛くて

今にも、頭がおかしくなりそう。

「痛いって言われても、なにもできないなぁ」

と、彼女が言った。

そう。

まさに、その通り。

肩こり、腰痛、頭痛。

この、3痛は

ボクにとって、比較三原則よりも

身近にあった。

あれは、小学3年生の時。

家から、学校までの通学路の途中に

接骨院が出来た。

普段なら、新しいお店かぁ。

そんな風に素通りしていたが

お店の前に、見慣れた自転車が。

誰かいるのかなぁ?

なんて、中を除くと

普段は、真っ黒のウエットスーツに身を包んだ

おじさんが、なんと

真っ白の白衣を着て

おばあちゃんの、背中をさすっているではないか!

「え!? ちょ、え!?」

このお店は、一体なんだ!

接骨院ってなんだ!

学校へ行くのをやめ

すぐさま、家に帰る。

玄関を開け、靴を放って

階段を一つ飛ばしで駆け上がる。

ドアを開けると、ちょうど

お母さんが、朝のニュースを見ていた。

「ねーねー! 接骨院ってやばいよ!」

と、お母さんに伝えると

「あ〜!行ってきた?おじちゃんのお店でしょう?」

「かいとも、行く?」

「え、大丈夫なの?」

「ん?」

「おばあちゃん専用じゃないの?」

「大丈夫だよ、電話しておくね」

と、お母さんに言われた通り

午後3時

はじめての、接骨院に行くことに。

ドアを開けると

「おー! かいとー!」

と、おじちゃんが明るく迎えてくれた。

「お、なんだ緊張してるのか?」

と、ボクの肩をさすると

「おー、凝ってんなー」

そのまま、顔が切り抜かれた

ベッドに横たわり

揉まれること、30分。

ボクは、爆睡していた…。

起き上がると

「凝ってたよ〜珍しいね若いのに」

と、おじちゃん。

側でおばちゃん達も笑っていた。

体は、確かに軽い。

「こりゃ、くせになりそうだ」

そう言って、おじちゃんに別れを告げ

家に帰る。

くせになり、週3で通い始めたボク。

恐らく、これのせいで

少しの痛みも大きな痛みに感じているのかもしれない。

あるいは、かれこれ

10年以上、接骨院に行っていないせいか。

気のせいか…。


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