えもーしょん 中学生篇 #45
ボクの夏休み
2010〜2013/カイト・中学生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.08.07
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#45
「ボクの夏休み」
(2010〜2013/カイト・中学生)
前期の成績表で
国語の評価「1」を取ったことから
8月までの1週間。
実際には、1週間半
仙台で塾を開いている。
ママの方のおじいちゃんの家に行くことになった。
出発当日
リュックに着替えを入れて
ビーサンではなく、スニーカーを履いて
サーフボードは持たず
筆箱を持って駅へ向かう。
今日は、波がいいらしい。
家の前をサーファーが嬉しそうな顔をして
通って行く。
「辛いな」
ボクは、彼らと逆方向に駅へと歩く。
駅へ向かう一本道は
海へ向かう一本道でもある。
何人もの、サーファーとすれ違いながら
ボクは、ひたすら駅へと歩いて行く。
駅に着くと、海水浴だろうか
浮き輪を膨らましながら歩くヤンキーチックなお兄ちゃんや
ピチピチギャルが、改札前で楽しそうにしている。
ボクは、それでも
「1週間、1週間だ」
と、心を強く持ち
特急列車に乗って東京駅へ。
駅前のキオスクで買った
じゃがりこをストレスのあまり
ボリボリと一瞬で平らげ
涼しい、列車に揺られ
眠ってしまった。
「次は東京〜」
と、微かに聞こえ
ハッ! と目を覚ます。
おぉ〜あぶね〜
長ーい東京駅を歩く。
夏休みのキラキラした広告がチラつくけれど
「1週間、1週間」
と、唱えた。
新幹線乗り場に着き
もらったお小遣いで初めて駅弁を買った。
駅弁=電車の形のお弁当。
だと思っていたけれど
全部がそうではなかった。
少し、恥ずかしいけど
せっかくだから…
と、電車の形のお弁当を買って
新幹線に乗った。
仙台までは、どれくらいかな…。
いや、知らない方がいいか。
もう、ここまで来たら逃げられない。
強くそう感じたボクは
ここに来て、初めて
もう、行かなきゃいけないんだ。
と、悟った。
それにしても、1週間も
勉強をしたことがないボクは
どちらかというと
勉強が嫌。というよりも
こんなに勉強ができるのか?
と、自分を心配していた。
それに、おじいちゃんと会うのは
恐らく、6年ぶり?
年末年始に電話で少し会話するくらいで
本当のところ、顔を覚えていない。
「仙台駅に着いたら、おじいちゃんが待ってる」
と、ママに言われたけれど
お互い、顔を覚えていない確率が高い。
「大丈夫かな…」
と、色々心配しつつも
やはり、涼しい列車に揺られ
眠ってしまう。
揺られ、揺られ、揺られ
かなりの時間、眠ってしまった。
「ちょっとやばいかも…」
そう思ったが
「次は仙台〜」
と、またもベストタイミング!
「ラッキ〜」
と、食べ忘れていた。
駅弁を思い出し、ダッシュで食べる
「うん、電車のお弁当箱の普通のお弁当!」
荷物を持って、仙台駅で降りる。
改札のど真ん中で、明らかに誰かを待っている
1人のおじいちゃんがいた。
「絶対そうだな…」
少し、慎重に改札を抜けると
その、おじいちゃんは
知らんぷりをして、まだ遠くを見つめている
すると、そこに違う家族がやってきて
人違いだったことに気づく
「おかしいなぁ」
辺りを見回すが
おじいちゃんらしい人物がいない
「少し待ってみるか」
券売機の横でジッーっと待つが
一向に現れない。
心配になっていると
ちょうど、ママから電話が鳴った。
「もしもーし」
「大丈夫!?」
「なにが?」
「なんか、おじいちゃん用事で行けないみたい!」
「え?!」
「おばあちゃんが、帰りの新幹線に乗せるって言ってたけど合流した?」
「誰もいないよ!」
「あらら」
「あらら、じゃないよ!」
「どうすればいいの?」
「駅員さんに東京行きの新幹線どれか聞いて東京駅まで戻って来て!」
「え!?」
「パパと迎えに行ってあげるから!」
「へ!?」
「東京駅に着く時間わかったら教えてね!」
「え、う、うん!」
「はーい、あとでね〜」
と、突然帰ることに
駅員さんに東京行きの新幹線を尋ねると
ちょうど、10分後に出ると
急いで、チケットを買い
帰り分の駅弁をさらに買った
「牛タン弁当」
せっかく、ここまで来たんだ
これだけでも食べなきゃ!
願ってもなかったことが起き
少し、戸惑いながらも
夕方には家に着き
サーフィンが出来てしまった。
ボクの不思議な、夏休みのスタート。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!