THIRTY-AGERS #005 - Kohei Yamasaki

「自分で取捨選択していくのが30代」

Contributed by LUKE magazine

People / 2018.11.22

Thirty-agers企画がスタートし、早速応募していただいたのが大阪でセレクトショップ『タータスストア大阪』を営んでいる山崎 康平さん。今回はお店で働くスタッフの方から「ぜひ山崎店長を取材して欲しい」との連絡を受けてお話を聞かせてもらうことに。26歳で店長を任され、今年から新たにPACIFIC STANDARD TIMEという取り組みも始めるという山崎さん。スタッフも憧れる彼の30代の歩みを紹介する。


やりたくないことをやっている時間は無い


−早速ですが、30代ライフはどうですか?
34歳になったんですが、20代の頃とは考え方がだいぶ変わったように思います。30代半ばに差し掛かって、なんとなく人生の折り返しという年齢も近づいてきてるのかなって。そう考えたときに時間を大切にしようという意識が強くなりました。

−「時間を大切に」とは具体的にはどんなことですか?
自分のやりたいことにできるだけ時間を費やしたいってことですね。人生の最後にあの時期無駄な時間を過ごしていたなって後悔をしたくないんです。やらなくてもいいことはやらないが最近の自分のテーマですね。

−30代に入ってそうした考えになったことで、何か変化したことはありましたか?
良い意味で周りの視線を気にしなくなりました。20代の頃は周りの目が気になってどんなことでもできなければいけないのではという考えでした。でも、苦手なことももちろんあって、そういう部分の能力を伸ばすにはどうしても時間がかかる。30代になって、苦手なことに時間をかけるなら、自分の得意な部分を伸ばそうと考えるようになりました。

−苦手な部分はどうやってフォローしているんですか?
昔は自分の弱さを見せると相手の信頼を失うんじゃないかと思っていました。今はそこも含めて自分という人間を見てもらって、僕が弱い部分はスタッフにサポートしてもらいながらやっていければいいんじゃないかっていうスタンスに変わりました。それぞれが協力しながら目標を達成していくチームになれたらいいなと。

−みんなでサポートをしながら仕事をできるのは理想ですね。
自分の得意なこと、苦手なことが分かってくるのが30代なんだと思います。苦手な部分をスタッフに上手く補ってもらっているので、歳を経るごとに一人じゃ生きていけないなと感じることが多くなりました。


自分が学んだことを若いスタッフに伝えていきたい


−以前とはスタッフとの関係性も変わったんじゃないですか?
20代は自分のことで手一杯でしたが、下の世代のことを考えるようになりました。今お店で働いているスタッフが二名いて、どちらも20代後半に差し掛かる年齢です。僕がこのタータスストア大阪の店長を任されたのが、26歳の時。そう考えると彼らも人生の新たな段階に入っていかなければいけない年齢だと思っています。今後、彼らが生きていく上で役立つようなことを伝えていけたらと考えています。

−どんなことを伝えていきたいですか?
『タータスストア大阪』で働くまえに別業種の企業に勤めていたのですが、その時の上司が、退職するときにくれたアドバイスがあって、「まずは人のためになることをやれ、自分のことはあとでいいじゃないか」という言葉、もう一つ「信頼は積み上げるのが難しいけれど、それを失うのは一瞬。常に嘘をつかずに真摯に向き合いなさい」という言葉。当たり前のようでいて、なかなか実践できないことだと思っていて、この二つは今も仕事をする上で大切にしています。色々な人と接する中で年々実感することでもありますし、だからこそ一緒に働いているスタッフにも伝えていけたらと思っています。

−同世代のことを意識することはありますか?
僕らがお店を構えているエリアが大阪の中で谷町六丁目というエリアになるんですけど、最近メディアで“谷六”と取り上げられることが多くなってきたんです。7年前お店をスタートしたときはそんなことはなかったんですけど、ここ数年同世代の人たちが個性的なお店や人情味のあるお店をオープンし始めて、注目され始めたんです。それぞれのオーナーが尊重し合ってますし、自分も一緒にこの“谷六”を盛り上げていきたいなという気持ちになっています。


周りに流されず自分らしく生きる。


−30代のうちにやっておきたいことはありますか?
長いスパンで考えていることはないですが、今は新しく始めた「PACIFIC STANDARD TIME」(以下、PST)という取り組みを知ってもらい、みんなに面白いなと共感してもらうことが目標です。

−どういった取り組みなんですか?
アメリカ西海岸の新興ブランド同士のコミュニティ情報を発信していく試みです。洋服の買い付けでアメリカ西海岸に行く機会がよくあります。サンディエゴやロサンゼルスといった南の方から、ポートランドやシアトルといった北の都市まで回っていると、場所は離れているのにブランドのオーナー同士が友人関係だったり、コラボアイテムを作っていたりする現場を見かけることがたくさんありました。でも、そういった西海岸のブランド同士の関係性を紹介している日本のメディアってあまりないんです。なので、まずはカリフォルニアで若いブランドがコミュニティを築いて面白い動きをしているってことを発信していけるものを作っていきたいなと思ったんです。ネットを使って情報を発信していくのもそうですが、このお店のバックヤードに人が集まれるスペースを作って、実際にカリフォルニアからブランドを呼んで立体的なイベントを行うということも考えています。

−プロジェクトの中で何か具体的に形になったものはありますか?
僕が被っているこの帽子もPSTの企画のプロダクトとして作ったものです。エベッツというシアトルの帽子メーカーに別注で作ってもらいました。エベッツのスタッフともカリフォルニアの買い付けを通して知り合って、親しくしてもらっています。今後、PSTとしてこうしたブランドコラボアイテムも作っていく予定です。

−山崎さんにとって格好いいとは?
周りに流されず、自分らしく生きることですね。ファッション業界はトレンドが目まぐるしく変わります。そういった中で「自分はこういうスタンスでやってる」ってバシッと言えたら格好良いですよね。

−現在34歳、今後40代ということも視野に入ってくると思いますが、どんな40代になっていたいですか?
自分のやりたいと思ったことができる人になっていたいですね。今でも年一回はアメリカに行けていますけど、他の地域も見てみたいですし、そういう自分のやりたいことができるような仕事のスタンスでいられたらいいなと思いますね。

30代半ばに入って自分のことだけでなく、周りのスタッフのことも十分に気にかけている山崎さんの姿を見て、まだまだ自分はThirty-agersとしての心構えがなっていないなと痛感させられた取材でした。自分の得意・不得意なことを判断して、理想に向かいThirty-agers道を邁進する山崎さん。Thirty-agersが目指すべき一つの形ではないかと感じました。


Yamasaki Kohei/ タータスストア大阪店主。
https://turtoisestore-osaka.com
https://www.instagram.com/turtoiseosaka/?hl=ja
https://pacificstandardtime.jp/
https://www.instagram.com/pacificstandardtime_pst/


-Shop-



山崎さんが店主を務めるタータスストア大阪。国内外のアウトドアブランドやサーフブランドのアイテムを中心に扱う。緑の亀がトレードマーク。

-Shop Item-



PACIFIC STANDARD TIMEのアイテムとして、シアトルの帽子メーカー「エベッツ」に依頼して作ったキャップ。今後もアイテムは増えていく予定。

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