海と街と誰かと、オワリのこと。#4
喫茶店
Contributed by Kite Fukui
People / 2023.01.11
家を出て自転車で学校へ向かう。3年間往復したこの通学路ももうすぐお別れだ。海沿いの国道をまっすぐ、ずっとまっすぐ20分ほど自転車を漕げば学校に着く。
教室からはいつもサーフィンをしていた海が見えた。ずる休みしてサーフィンをしている時も海から教室が見えた。時間も、座る場所も、とにかくなんでも決められた学校が窮屈で退屈で、教室から海を見ていると自由を見ているようだった。
ーー学校に着くと、正門でゆきとあきほが待っていた。
あきほ「よっ」
ゆき「おはよう」
僕「お待たせ、おはよう」
ゆきのバックを自転車のカゴに入れる。あきほが私のもお願い。とカゴの空いたスペースに入れた。
3人で近くの喫茶店へ向かう。
あきほ「ランチ、間に合うかな」
ゆき「間に合うと思うよ、今日は金曜日だからカレーだけど」
あきほ「カレーかぁ、このあとバイトなんだなぁ」
ゆき「私カレー頼むから、少し食べる?」
あきほ「ありがとう、じゃぁ私はサンドイッチの頼もうかな」
ゆき「オワリ、お昼ご飯食べてきた?うどん?」
僕「うん、うどん。コーヒー飲む」
喫茶店に入ると、ゆきが日替わりランチを、あきほはサンドイッチのランチ、僕はコーヒーを注文した。
「もう卒業だね」
とあきほが言った。その言葉の後に2人からオワリはどうするのかと聞かれることはわかっている。なんとなく、今はその話をする気分じゃなかったからごまかしたいけれど毎回ごまかしているから流れに身をまかそうと思い質問をまった。
「オワリは卒業したらどうするの?」
やはり、あきほが言った。ゆきの表情が少し曇ったように思えた。あきほとゆきは卒業後
美術大学へ進学する。いろいろ考えて僕は受験をしなかった、なんとなく都会で1人暮らしをしながら働こうと決めていた。だけど、2人が進学する姿を見てなんだか僕だけ取り残されてしまう気がして寂しい気持ちと、少しの焦りが正直心に潜んでいる。少しの焦りはきっと、このままでいいのかな。と言う気持ちから生まれた。
僕「1人暮らししながら働くよ」
あきほ「どこに住むとか、家とか見た?」
僕「まだ見てないよ」
あきほ「卒業前になんとなくでいいから見た方がいいと思うよ」
ゆき「いま見てみる?」
ーーなんだこの用意されたような会話は。。
きっと、ゆきが心配してあきほに相談したのだろう。
僕「うん、なんとなく見てみようかな」
あきほが物件情報サイトを開き、大体どの辺がいいか聞かれた。
ゆきとデートした時に行ったカフェの近く、「中目黒駅周辺はどうかな」と伝えると
「ないと思う」と即答。別になくてもいいから、ちょっと見てみて。と伝えると
意外と、出てきたようであきほは自分の家を探し始めた。
物件探しに夢中になっているあきほのことをゆきと2人でじっと見つめる。
「お待たせしました」
ゆきが注文したカレーが先に来た。
「いい匂い〜」とあきほ。
「いや、物件は?」とゆきの視線を僕はわかっている。
なんとなく身をまかせたら、カレーに救われた。
続く。
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