ツインフィンが好きだ

えもーしょん 高校生篇 #34

ツインフィンが好きだ

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.06.04

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#34
「ツインフィンが好きだ」
(2013〜2016/カイト・高校生)

結局、濡れたウエットスーツに

袖を通し、彼女を大切に抱え

自転車を漕ぎ、海へ向かう。

気がつくと、風は変わっていて

心地よい、夕焼けが

ボクの背中を優しく暖める。

長い坂道を降れば

船が並ぶ、漁港。

その先に見える

綺麗なピークが

お帰り。

と、ボクを迎えてくれた。

素直に、ただいま。

と、言えず。

なんか、ごめんね。

そんな気持ちで

リーシュをつけて

パドルする。

彼女の浮力は

ボクを水面から押し上げ

優しく、包むような

安定感があった。

もう、ボクは彼女にメロメロ

こんなに海の中で

幸せを感じたのは

いつぶりだろうか。

波待ちをしていると

誰も手を出さなそうな

波がやって来た。

最近、ちょっとした

美学的な事を見つけた。

同じ、ポイントで

サーフィンしている

それは、それは、とてつもなく上手い

サーファーが居た。

彼は、いつも

のんびり、サーフィンをしていて

誰も手を出さない

波だけを乗り

1人で気持ちよく乗っているのだ。

そんな彼の美学を

ボクも取り入れようと

今日から頑張ることにした。

以前なら、誰よりも

アウトで波を待ち

一足早く、移動して

波に乗っていた。

今は、そんなこと必要ない。

なぜなら

乗らなくても、乗っても

別にどっちでもいいからだ。

ツインフィンの彼女は

優しく、波に押され

ボクは、流れるように立った。

彼女に身を任せ

彼女の思うままに波に乗った。

初めてサーフィンをした

あの日のように。

ボクは、ボードを動かせなかった。

あの日

ボードが向かう、方向へ

ただ、進むしかなかった。

それでよかったのだ。

それが、ボクにとって

サーフィンだったのだ。

ツインフィンが好きだ。

サーフィンがしたい。


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