ICONS
もしも
Contributed by anna magazine
People / 2018.12.11
そう聞かれたら、あなたは何を選ぶだろうか?
大切にしているいろいろな物の中から、ひとつだけ。
あらゆるモノやコトの流行の移り変わりが激しい時代だからこそ、そんな”ひとつ“を知ることがとても特別なことに思える。
ある人にとって特別な意味を持った「アイコンアイテム」と、それにまつわるストーリーを少しだけ紹介する企画「ICONS」。
第一回目は、外資系商社でアメリカを代表する時計ブランド「TIMEX(タイメックス)」のマーケティングを担当する野口類さん。
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Item Data
Item: Engineered Garments×BEAMS BOY×TIMEX Original Camper
Brand: TIMEX
Release Year: 2016
Country: Japan
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―あなたにとっての「アイコンアイテム」とは?
2016年に作った、Engineered Garments×BEAMS BOY×TIMEXのトリプルネームで作った別注キャンパーです。
―なぜそれがあなたにとっての「アイコンアイテム」なんですか?
TIMEXを代表するモデルである「キャンパー」は、もともとベトナム戦争期にアメリカ軍の依頼を受けて作ったもの。でも1990年にデザインが変わってしまって、それ以降オリジナルと同じデザインのものは作られなくなってしまったんです。もともとの目的は、企業を宣伝するためでも嗜好品でもなくて、「時間を伝える」という目的のためだけに作られていたんです。そんなある意味究極のプロダクトと言えるものが廃れてしまったことに納得がいかなかったんです。
制作は大変でした。当時の設計図も残っていなかったので、デッドストックを3Dスキャンしたり、手で触ったりして、5〜6年交渉や試行錯誤を繰り返し、2015年にようやく復刻が叶いました。その翌年、BEAMS、Engineered Garmentsとのコラボレーションが実現して作ったものがこのモデルなんです。
今はもうなくなってしまいましたが、アメリカのTIMEX本社近くに、同社の時計がアーカイブとして残っている「タイメックス・ミュージアム」というのがあって、そこでみた約100年も前の「バーバークロック」(理髪店などの大きな鏡があるところで、鏡越しでも時間がわかるように文字が裏返しで針も逆回転する時計)からインスピレーションを得たデザインです。
最大の特徴は、文字盤の文字だけじゃなくブランドのロゴも反転させているという点。通常であれば、ブランドロゴを反転させるのはブランドとしては許容しがたい。それでもこの企画が通ったのは、決して表面的な模倣ではなく、「ロゴも全て反転させた時計があった」という事実に基づいているからなんです。一緒にアメリカに行ったBEAMSのバイヤーさんの声掛けに始まり、Engineered Garmentsの鈴木大器さんもメーカーも、そういうストーリーに共感してくれて実現した企画なので、とても思い入れが深いですね。
日本人は、モノの背景にあるストーリーを理解して感動したり、ロマンを感じてモノを買ったりする人が多い気がします。モノありきではなく、動機から入る。実際に消費者としての僕もそうやってモノ選びをすることの方が多い。モノを作るということは、大量生産であったとしても、何かの小さな部品を作るのに必ず作った人の意図や意識が含まれます。作られた時代や、作った人のストーリーに思いを馳せる。それが後づけであったとしても全然いいと思うんですが、僕はそんな風にモノを選びたいと思っています。
これは僕いつも言っていることなんですが、100万円の時計でも、8,300円の時計(オリジナルキャンパーの値段)でも、1秒を刻むのにかかるのは同じ1秒で、そこに値段の差はないんです。そして、人は誰もが「時」からは逃れられない。時計を買った時のことや、時計を付けてしたことなど、時計は「モノ」ではあるんだけど、そういう「時」を過ごしているんだと感じてもらえたらいいなと思います。
―あなたの「アイコンアイテム」の基準はなんですか?
「値段」と「価値」が釣り合っていること。
極端な話、値段は3万円でも10万円でもいいんです。高いものが良い、安いものが悪い、品行方正であれと言いたいわけではなくて、その「価値」に自分が納得しているということが大事だと思います。TIMEXでいえば、「良いモノを安く」という大量生産が可能にする「値段」と、5年・10年後に付けても古びないデザインの「価値」との釣り合いが取れていて、「TIMEXだったら間違いない!」と思ってもらえるブランドでありたいですね。
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anna magazine
「anna magazine」は、ファッションからライフスタイルまで、ビーチを愛する女の子のためのカルチャーマガジン。そして、「anna magazine」はいつでも旅をしています。見知らぬ場所へ行く本当の面白さを、驚きや感動を求めるたくさんの女の子たちに伝えるために。