みんなが笑うお葬式があるといいね。

えもーしょん 小学生篇 #25

みんなが笑うお葬式があるといいね。

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / mar.27.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#25 「みんなが笑うお葬式があるといいね」
(2003〜2010/カイト・小学生)

パパは、窓を開けてタバコに火をつけた。

ボクは、そっとDVDプレーヤーを閉じた。

ママは、黙って前を向いていた。

パパは、134をかっ飛ばして高速に乗った。

パパは、タバコの火を消して窓を閉めた。

窓から入る、風の音がなくなって

重い、沈黙が生まれた。

ママは、沈黙に耐えきれず

ラジオをつけた。

すると、ORANGE RANGEのミチシルベが

流れた。

ママは、泣き始めた。

パパは、涙を堪えていた。

ボクは、YOHのラップの部分を

しっかり歌った。

最後の語尾を強調して歌うのも。

今度は、鼻をつまんで

大好きなYAMATOのパートも完コピ。

パパは、笑っているのか泣いているのか

分からず、とりあえずむせていた。

ママは、ますます泣いていた。

ラジオは、なんと

ORANGE RANGEメドレーで

その後、上海ハニー

ビバ★ロックと続き

途中のキリキリマイでは

しっかり、悩殺、悩殺! と

ヘッドバンド。

最後は花でフィニッシュ

最高のライブを繰り広げたボクは

とにかく、爽快だった。

ちょうど、アンコールを待っている頃

車は、高速を降りておじいちゃんの家に到着。

そこで、ライブを終えたボクら3人と

おじいちゃん、おばあちゃん、親戚のみんなとの温度差がある事を確認。

空気を読んで、黙り込んではみたものの

ボクと、パパ、ママは

頭の中で上海ハニーが無限ループ。

こりゃ、長い1日なるぞ

ボク達3人はそう思い、Bメロが終わった。

次はサビ、クライマックスだ。

ひいお爺ちゃんは、生前

「死ぬ時は、自宅で死にたい」

そう、言っていたそうだ。

突然、倒れてから救急車で運ばれ

病院に何日か入院した。

ボクも、ママと2人で

お見舞いに行った。

その頃は、元気で

鼻に差し込む酸素のチューブを

ボクにも、つけてくれた。

「こんなに、元気だったら死なないね!」

ボクは、そう言って

「またね!」と言って

病室を後にした、扉を閉めた瞬間

ひいお爺ちゃんは、とてつもなく咳をしていたけれど

ボクは、気にしなかった。

それから、症状は悪化した。

おばあちゃん達が話し合った結果

ひいお爺ちゃんは、自宅に帰ってきたらしい。

そして、今日

パパが、タバコに火をつけ

ボクにスクランブルエッグを食べるな。

そう言った、時に死んでしまったのだ。

みんなで、おじいちゃんの家から

ひいお爺ちゃんのお家に向かう。

いつもの、豪邸に着くと

間抜けなプルートが、珍しく

古屋で丸まっている。

主人を亡くした事を悟ったのか。

家の中に入ると、みんなが泣いていた。

とてつもなく、重い沈黙が流れていた。

けれど、ボクは

もちろん、おじいちゃんの家から

ひいお爺ちゃんの家までの間

ORANGE RANGEメドレーを熱唱した。

上海ハニーは、3回歌った。

そのため、笑ってはいけない空気で

お父さんのお姉さん、ボクにあたる。

おばさんが、なにかを思い出したかのように

吹き出した。

すると、それを見た

おばあちゃんが、「あれか」と

言わんばかりに、吹き出した。

そう、恐らく

ボクの上海ハニーだ。

いつも、歌っているのに。

こんな時ばかりは、面白く見えたのかもしれない。

ボクは、大人しくうつむいていたのに

突然、ごつん!!!

と、パパのゲンコツが飛んできた。

ボクは、大人しくうつむいていたのに。

その後は、お葬式をして

火葬をして、みんな

ボクが

お箸からお骨を落とさないか

ヒヤヒヤしながら見ていた。

何回も、嬉しそうにやるもんだから

泣いているのか、笑っているのか

分からないようだ。

まったく。

その後、ひいお爺ちゃんのお家に戻り

色々、片付けをして過ごした。

ボクは、1週間学校を罪悪感なく

休めることに、戸惑いを感じながら。

1週間後、ボクとパパ、ママは

1度、ボクらの家に戻ることに。

家に戻り、ひいお爺ちゃんとの

思い出をよく思い返す。

1年に1度しか会わなかった。

けれど、みんなそれは

とっても当たり前のようにしていた。

ひいお爺ちゃんが、その間。

1年間、なにをしてどこに行って

なにを食べていたのかなんて

ボクは、なにも知らないことに気がついた

今、電話して聞いてみたいが

もう、話せることはない。

これが、「死ぬということ」か。

と、初めて死を感じた。

「優しい人から、死んじゃうね」

ママはそう言った。

「そうだね」

パパは、言った。

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