夕日の魔法

夕日の魔法

Contributed by Kaito Fukui

People / aug.27.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#49
「夕日の魔法」
(2003〜2010/カイト・小学生)

いろいろ疲れて、眠ってしまったボク。

目を覚ますと

風に吹かれ、積んできた砂が

空きっぱなしの心と口に入りさらには乾いていた。

カッサカサの、心と口を潤すため

リーシュを付けて、再び海へ向かう。

3回ドルフィンしたとき

大きな、セットが見えた。

「あぁ、いいなぁ」

間に合わないボクは、ジーっと見ていた。

1人のサーファーが、ベスポジから乗ったのが見えた。

綺麗な、ラインでこちらに進んでくる。

よく見ると、あっちゃんだ。

ボクに気がついたあっちゃんは

「あ! かいと~!」

と、手を振る。

「あっちゃん~!(ボクのマーメイド~)」

と、ボクも全力で手を振る

すると、ブシュー!

思いっきりスプレーを飛ばして

進んで行った。

乗り終えたあっちゃんを見ると

物凄く、楽しそうに笑っている。

「どこ行ってたの?」

満足げな彼女の顔に

少しイラッとしても

ジェントルマン作戦が進行中のため

顔には出さなかった。

陽が落ち始め、ボクらはシャワーを浴びた。

目の前の、コンビニで

スムージーとお菓子を買って

大きな階段に座り、夕日を眺めていると

「かいとって、意外と大人な顔してるよね」

と、突然あっちゃん。

「え? そう?」

「うん、優しいし」

夕日の魔法にかかったあっちゃん。

ここまできたら、作戦も軌道に乗り始める。

「少し、歩く?」

と、彼女を誘い

自然なそぶりで、そっと

手汗びっしょりの手を差し出した。

彼女は手を取り

ボクらは、夕陽に照らされるビーチを歩き始めた。

少し歩くと

あっちゃんが突然

チューチューチュブリダ、チュブリダダ♪

と歌い始め

ボクのスムージーを飲んだ。

そして「はい」

と、渡され「こ、これは間接キスのお誘い???」

まさか!

なにも、戸惑うことなく

ストローに噛み付いた。

勢い良く吸った、あのスムージー。

実は、キミの味を探してた。なんて言えないけど。

あの味を忘れない。

ストロー間接キスで本当に満足したボクは。

正直もう帰りたかった。

あぁ、どうしようかなぁ。

なんて考えていると。

あっちゃんは、立ち止まり

「チューしよう」

と、言った。

そして、ボクは走って逃げた。

決して、後ろは振り返らずに

止まらぬ涙で前が見えなくとも

立ち止まることはなく

ただ、ただ、全力で走った。

かいとは走った。

裸足で。

大きな階段を二段飛ばしで登り

自転車にまたがると

遠くでしゃがみ込んでいるあっちゃんの姿。

涙が止まらない。

続く

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