えもーしょん 大人篇 #40
やっぱり温泉は最高
2016~/カイト・大人
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.07.10
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#40
「やっぱり温泉は最高」
(2016~/カイト・大人)
ホテルに着くと
彼女がチェックインを済ませて
ボクらは部屋へ向かった。
部屋に入るとすぐに、
強烈な臭いのするまい泉を
お風呂場に連れて行き、
シャワーとシャンプーで洗い流す。
「熱海の水道は気持ちいいね」
彼女に聞こえないようまい泉に言った。
無視されたが、
気持ちがいいようだ。
洗い終わると、
数回ブルブルさせ、
タオルで
そのモジャモジャした毛を優しく拭き、
「行っていいよ」
彼にそう伝えると
一目散に彼女の方に向かった。
「あらまいちゃん、綺麗になったね」
彼女がまい泉にそう伝えると
彼は嬉しそうに、
部屋中を駆け回り嬉しそうに、
ソファの上のクッションに
おしっこをした。
「あっちゃあ…」
ボクと彼女のため息が部屋の中に響いた。
ボクがクッションを洗っている間に
彼女は浴衣を用意してくれていた。
ちょうど洗い終わるころ、
「終わった?」
と彼女がやってきた。
「浴衣を着て、温泉に入りに行こう」
「ありがとう」
そう言って、
ボクらは浴衣に着替え温泉に向かう。
男湯と女湯の扉の前で、
「大体40分くらいかな」
と彼女。
「終わったら連絡して」
とボク。
浴衣を脱ぎ温泉に向かう。
人はいない。
体を洗い、
室内のお風呂はスルーして、
露天風呂へ向かった。
「これが肩こり、腰痛に効くお風呂か…」
ボクはしっかり首まで浸かる。
熱海の海と山を
一望しながら、
大きく深呼吸をして空を見上げた。
ここには、
都会の騒がしい音も、人も、ビルもない。
今見えるのは、
空と海と山。
ただそれだけだ。
どうやらボクは、
都会の騒がしい日々に疲れていたようだ。
大事なのは、
温泉よりも
リラックスすることだったのかもしれない。
元気になったボクは、
少し温泉から身を乗り出して
女湯を眺めた。
見えるはずもないか…。
だが嬉しかった。
こんな事を思うことが、
元気になった証拠だからだ。
海と山と空を見つめ、
心の底から彼女に感謝を伝えた。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!