旅

えもーしょん 中学生篇 #57

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / oct.27.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#57
「旅」
(2010〜2013/カイト・中学生)

無人島に持っていくなら何を持っていくかと

休み時間、友人と教室の隅で話をしていた。

ナイフ、薬草図鑑、モリ、釣竿、ライター。

まぁ、そうだね。そうなるよね。と特に変わったものを

選ぶことはなかった。

秋も深まり、そろそろ冬になろうかという時期に

定番アイテムだけ持って無人島へ行ったらどうなるのか?

試してみないか? と親友のノリスケ(カビゴンのような見た目で心優しきヤツ)

が、言った。

「無人島って言ってもこの辺にはないぞ?」

と、ボクがいうと彼はベランダから茅ヶ崎方面を指差し

「あそこ」と言った。

ボクは知っている、彼が指差したあのサメの尾びれのような島は

島っぽいが、ただの大きな岩だ。

それに、陸から見る分にはいい。

ずっとみているとなんだか行けそうな気がしてくる。が

そんなことは、とうの昔にボクらが実験済みだ。

ボクは、半分もいかないところで

大きな潮の流れを感じ、直感的に帰れなくなると感じた。

先を行く友達に帰ろう!と叫んだが彼はもうマラソン状態でパドルしている。

ボクは、彼が気付くまでかなり時間かかることはわかっていた。

だけど、1人見捨てて戻るなんてことは出来ず

彼が後ろを振り向くまでじっと波待ちを続けた。

何分後だろうか、ようやく彼が後ろの気配に違和感を感じて

振り返った、しかしその頃にはボクと彼との距離はかなり離れていた。

「大丈夫?」と恐らく心配した彼はこちらに向かって大きく手を振った。

ボクは「だめー!」とバッテンのポーズをしたが

なぜか彼は、「オッケー!」とポーズをし

先を急いだ、もう知らない!とボクは先に戻り

砂浜についた頃には、彼の姿は水平線のかすかな

ボヤけた境目にいることがわかった。

恐らく、彼はたどり着くだろう

そして、戻った頃にはボクらのコロンブスになるに違いない

ボクらが決して辿りつかない、行きたいとも思わない

未開の地を彼は開拓したのだから。

そもそも、行けるか行けないかという話だったのに

彼はいつ、どこで「行きたい」に変わったのだろうか

いつの日か、彼に会えたのなら訪ねてみたい。

そんなことがあったので、ボクはあの島を指差すノリスケに

「やめたほうがいい」と一言いった。

続く


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