怪我すると

えもーしょん 小学生篇 #44

怪我すると

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / jul.30.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#44
「怪我すると」
(2003〜2010/カイト・小学生)

もう、若くはないのに

自分はまだ若いと、苦しいが

自分に言い聞かせているパパは

なんと、この夏

38年間の人生初の、ボディーボードに立つ

という、チャレンジに挑んでいる。

それも、スネ〜ヒザという

悪条件の中、海水浴客が

見つめる、その先で

彼は、ボディーボードに立つという

チャレンジに挑んでいるのだ。

さて、立てるのか、立てないのか

心配そうに、見つめている海水浴客は

痛い視線を送っているのかもしれないが

そんなことは、気にしていられない。

なぜって

今、目の前に

奇跡の一本、モモサイズのセットが現れたのだから。

必死に、必死に、パドルをするパパ。

「おーっと、海水浴客もエール送っています」

「頑張れ、頑張れ、と子供を海に連れてきたパパさん達がエール送っています」

「パパさん代表、あのセットをつかめるのでしょうか!」

「もっと、もっと、もっと、パドルしないと! とみんなの心の声が聞こえます!」

「肩に気をつけて! と優しいギャラリーもいるようです!」

「まだ、まだ、40は先の38歳! 行けるか! 行けるのか!」

「おー!!! 行けそうです!」

「立つか、立つか!」

「立てません! 立てません! しかし、まだ波は続いています!」

「立て! 立て! 立て!」

「ギャラリーの声援もだんだんと熱くなってきました!」

「立てるのか!!!」

「立てるのか!」

「あー、立てません!」

「そして、あーーー! っと転倒!」

「砂に乗り上げた際に、引っかかったようです!」

「大丈夫か!」

「ギャラリーも、心配そうに見つめています!」

「お! 起き上がりました!」

「ライフセーバーは、笑っています!」

「なんとも、恥ずかしい!」

「恥ずかしい!!!」

「こちらに来ないで欲しい!」

「いま、砂だらけになった体を流しに再び海へ戻りました!」

「もう一度、トライするのでしょうか!」

「あー、っとリタイヤ! ここでリタイヤです!」

「海水浴のパパさん達から暖かい拍手! ありません!」

「しょんぼりと、こちらへ戻ってきます!」

相当疲れた様子で戻って来たパパ。

「どうだった?」

「首が痛い」

「大丈夫?」

「いやー、病院行った方がいいかもなぁ」

「週末、千葉行けないじゃん!」

「行けない…な…」

「……怒」

「とりあえず、病院行って決めようか」

「とりあえず…? ね…」

「とりあえず…」

2人の間には

「だから、無理だって言ったでしょ」

と、お互い同じ言葉が聞こえている。

続く。

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