「サウナのあるところ」を語る男と女

TYPE OF MOVIE-映画を観る男と女 #9

「サウナのあるところ」を語る男と女

Illustration : TOMIMURACOTA

People / 2019.09.19

同じ映画を観ているのに、男と女で感想が全く違うことがある。印象に残っているシーンも、劇中の曲に対する評価も違う。「TYPE OF MOVIE」では、そんな男と女の感性の違いにフォーカスを当てながら、今注目の映画をご紹介! 第9回目は「サウナのあるところ」です。


「サウナのあるところ」を観て、
最高のサ活を目指そうと決心した男と
明日からすこしだけ男たちに優しくしようと思った女。




「サウナのあるところ」について


自宅やオフィス、夏小屋のプライベートなサウナから、湖畔や街なかの公衆サウナまで、約550万人の人口に対して約300万個のサウナがあるという、サウナの本場・北欧フィンランド。日本人にとってのお風呂のように、フィンランドの人々にとって、サウナは生活の一部であり欠かせないもの。本作では、50年以上連れ添った夫婦、父と3人の息子、気のおけない友人同士、仕事終わりの会社仲間、スイミングプールに集うシニア、クリスマスのお務めを終えたサンタ、寒さを凌ぐホームレスなど、様々な人たちがサウナで過ごす姿が描かれており、フィンランドの人たちのサウナの楽しみ方を垣間見ることができる。また、フィンランドの春夏秋冬の美しい自然とともに、DIYによるキャンピングカー型や電話ボックス型のサウナ、そのまま湖に飛び込めるサウナ小屋、首都ヘルシンキや2018年に世界サウナ首都を宣言したタンペレの歴史ある公衆サウナ、ランプを吊るしたテントサウナなど、バラエティに富んだユニークなサウナが登場する。世界幸福度ランキング2年連続1位(2018/19)となったフィンランドの人々の日常に、サウナのある“幸せ”を感じさせる異色ドキュメンタリーだ。

男と女の映画レビュー


Q1.あなたのサウナに対するイメージは?


男/サウナが大好きで、普段からよく利用しているので、疲れた心と身体を癒す、大人の(特に男性の)憩いの場というイメージ。

女/もの好きな男性達が通う、マニアックなイメージ。私自身、あまりサウナには入らないので、暑い、息苦しいというイメージも大きい。



Q2. 裸の男たちがサウナで熱く語り合い、涙を流している姿はあなたにどう映った?


男/まるで教会で懺悔をしているように見えた。日本のサウナで泣いている人は見かけませんが、“裸の付き合い”という言葉があるように、お風呂やサウナというのは、どこか開放的な気分になって、色々と深い話をしたくなるのかも。

女/フィンドランドの方達にとってサウナがこんなにも特別な場所なのかと正直驚き! フィンランドのサウナの歴史についてとても興味が湧いた。

Q3.お気に入りのシーンなどを教えて!


男/仕事終わりのサンタクロースたちがサウナに入るシーン。子供や親に対する愚痴をこぼす姿が、なんだか可笑しかった。

女/サウナでおじさんが「物を壊すのが得意」という話をしていて、こどもの話をしているかとおもったら、オチで結構立派なクマが登場して「なるほど…。そういうことか」と妙に納得してクスッとしてしまった。



Q4.この映画の見所を教えて。


男/淡々と語られるさまざまな人生の話を聞いているうちに、いつの間にか自分の人生を振り返っていました。そんなきっかけを与えてくれる映画。驚きや感動はなくとも、貴重な映画体験になることは間違いない。もちろんサウナー(サウナ愛好家)は必見。

女/男性が涙を流したり、すごくデリケートな話をしたりしている姿って、普段なかなか見られないと思うので、女性の方達におすすめ!



Q5.「サウナのあるところ」に、あなたなりのキャッチコピーをつけるなら?


男/「いろいろあってこそ、サウナは気持ち良い」
なんの根拠もないけれど、疲れている時こそサウナは気持ち良いし、悩んでいる時こそサウナのリラックス効果を実感する。最高のサ活のためなら、もう少し頑張ってみようかな、という気分になります。

女/「明日からすこしだけ男たちに優しくしよう」
普段心にしまっている悲しみや虚しさを唯一解放できる特別な場所でゆっくりと語り出す姿を観て、とても愛おしく、優しくしてあげたいと思った。



そして、3人目(男)のレビュー


サウナの魅力を再発見


今回、映画を鑑賞したのはサウナーの男とサウナに無関心な女。いろいろな問題や試練があってこそ、サウナは気持ち良いということを再認識する男と普段無口な男たちが胸に秘めている思いを語り出す姿に愛おしさを感じた女。視点がまったく異なるレビューとなったが、共通してフィンランドのサウナ文化への驚きが色濃く反映された結果となった。日本のイメージといえば、暑くて息苦しい空間の中で、おじさんが無言でじっと耐えているシーンを連想する。しかし、フィンランドでは大切なコミュケーションの場。究極の癒しやデトックスの場としてだけでなく、日本の銭湯・温泉文化にも通じる、人とのつながりを感じる場としてのサウナの新たな魅力を本作で再発見することができる。そんな今作は、サウナが好きな人にも、そうでない人にもぜひ観て欲しい! きっと今まで思い描いていたサウナに対するイメージが変わるはず。映画鑑賞後、サウナで語り合うという休日のコースも是非ともおすすめしたい。



【作品情報】

「サウナのあるところ」
2010年/フィンランド/フィンランド語/ドキュメンタリー/81分/カラー/ビスタサイズ(1.85:1)/5.1ch/DCP
原題:Miesten vuoro 英題:Steam of Life
日本版字幕:額賀深雪 字幕監修:坂根シルック
©2010 Oktober Oy.
後援:フィンランド大使館、公益社団法人 日本サウナ・スパ協会
提供・配給:アップリンク + kinologue


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