えもーしょん #5
ラブシーンは、ほどほどに。 帰って来たボク。
2003〜2010/カイト・小学生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2019.12.06
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#5 「ラブシーンは、ほどほどに。 帰って来たボク」
(2003〜2010/カイト・小学生)
とりあえず、頭が真っ白。
基地に入り、椅子に座り
やっとバローズを下ろす。
一点だけを見つめるボク。
階段を登る、記憶から、遡る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一段、また、一段
ゆっくり、そうっと
絶対、音が出ないように登る………
階段と、ドアの下の1センチもない隙間。
見えるのは、裸で倒れるママ。
うーーーーーーーーーーーーん。。。
固まるボク。
起き上がり、なにやら揺れる2人。
曇りガラスの向こう側。
超えては行けない、踏み込んでは行けない
そんな世界が記憶の中で広がる。
叫ぶボク、殺虫剤をかけられ
あたふた動き回る虫のような2人。
それに、またビックリするボク。
あぁ、そして今ここにいるのか。
状況を理解して、少しゆっくりする。
日が落ちて来て、仰向けで寝ている
バローズを再び抱き抱え
基地を後にする。
海から家へ向かう道。
一歩一歩が重い。
家へ近づくにつれ
さらに重い、なんだか空気も重く
一気に10kg程太った気持ちだ。
開かないでくれ!!!と願ったが
普通に、開く玄関のドア。
はぁ。。。ちょっと待ってよう。
ひとまず、バローズをシャワーで洗う。
ーーーーー。ーーーーー。ーーーーー。
シャワーの音だけが聞こえる。
どことなく、あっ。んっ。って
音を探してしまう。
バローズを洗い、タオルで拭き
抱っこして
階段を登る。
富士山に登っているような、高さだ。
上まで着きたくない気持ちと
少しワクワクする気持ち。
自然と、息が荒くなる。
バローズのようだ。
階段を登り、曇りガラスのドアの前。
立ち止まる。
浅い、深呼吸をしてドアを開ける。
ご飯を作るママ。
パソコンをしているパパ。
荒れた痕跡もない、リビング。
??????????????????
「おかえりー。」とママが言う。
「おー、かい。」とパパが言う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おー、かい。!!!???
そんな事、今まで一度も言われた事ないぞ
やっと、不自然さを感じた。
この2人、何かおかしい。
一周回って、開き直った感じを出す
ママ。
キョロキョロするパパ。
別に仕事もないくせに
真剣そうにパソコンを睨む。
ふふっ。2人の弱みを始めて掴み
生まれて始めて、優越感を感じた。
とりあえず、何も知らないふりをして
テレビを見ていた。
「ご飯出来たよー」とママが言う
席に着き、ご飯を食べる。
全く、会話がない事に笑いを堪えられず
遂に、口が開く
「ねーねー。パパとママ、さっき何してたの?」
鼻から、お米が飛び出すパパ。
狂ったように、爆笑するママ。
少し、大人になった、ボク。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!