土曜日の昼は具なしラーメン

えもーしょん 小学生篇 #26

土曜日の昼は具なしラーメン

(2003〜2010/カイト・小学生)

Contributed by Kaito Fukui

People / apr.21.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#26 「土曜日の昼は具なしラーメン」
(2003〜2010/カイト・小学生)

ブーンブンブーンブブンブブブブブブ。

パラリラパラリラ。

海沿いを走る、暴走族が

今日も、うるさい。

「昼から〜〜〜にね」

前を歩くさやちゃんの声が

ブンブンとかき消される。

ある日、隣の家の

さやちゃんと、海へ渡る

陸橋の上で、134号線を見下ろしていた。

左車線は、熱海方面。

右車線は、江ノ島方面。

土曜日の朝は、やっぱり少し混んでいる。

「富士山へ3台、ナンバーは千葉と静岡、湘南です」

と、さやちゃん

「はい、こっちは2台。湘南ナンバーが江ノ島へ向かいました。恐らくサーファーです」

と、ボク

「千葉〜、千葉〜、湘南〜、品川〜、品川〜」

と、さやちゃんはまだ続けた。

「ベンツ〜、トヨタ〜、トヨタ〜、ジープー、ゲレンデー、ホンダー」

「かいとくん、そっちはどうですか?」

「はい、こっちはベンツがやや多めです」

「ありがとうございます、こちらは富士山が光っています」

「さやちゃん、これ、なんの時間?」

ボクは、お腹が減って少し

強めにさやちゃんに聞いた。

「なんの時間なんて、ダメね。かいとくん」

「時間に意味なんてないのよ」

と、さやちゃんは得意げな顔でボクに言った。

過ぎゆく、車を2人でただ見つめ

30分ほど、無言の時間が流れる。

「今日、お昼ご飯なんだろうね」

「ボクは、ラーメン食べたいな」

「ラーメンか、私はチャーハンがいい」

「土曜日のお昼に食べるラーメンって美味しくない?」

「かいとくんのお家のラーメン、具がないじゃない」

「そんな事ないよ! ネギが入ってる!」

隣で、笑うさやちゃん。

「かいとくん、今日私のお家でご飯食べる?」

「ママが、ラーメン使ってるよ。きっと…」

「えー、じゃあ私も行ってもいい?」

「具なしラーメンだよ?」

「ネギが入ってるんでしょ?」

「ま、まぁね」

「じゃ、行こ!」

さやちゃんは、白く細い綺麗な手で

ボクをつかみ、歩き出す。

途中、落ちていた

松ぼっくりを蹴りながら

2人で、並んで歩く

家に着き

「ただいま〜」とドアを開けると

具なしラーメンの匂いがする。

「醤油ね今日」

と、さやちゃん

「いや、塩の可能性もあるよ」

「どっちにしろ、具なしには変わらなそうね」

「そうだね」

2階に登ると、ママが

ラーメンを作っていた

「あ、かいお帰り〜」

「あら、さやちゃんもお帰り〜」

「お邪魔しまぁす」

「もうすぐ、ラーメン出来るよ〜2人とも手洗ってね」

そう言われ、手を洗い

席につき、具なしラーメンを待つ。

しかし、いつもそうだが

具なしラーメンと、分かっていても

もしかしたら、もしかしたら?

今日は、煮卵が入っているかも?

煮卵ではなくても、茹で卵入っているかも?

そんな、期待をしてしまう。

毎週、土曜日は具なしラーメンに

謎の、期待をするのだ。

「もしかしたら、卵入ってる?」

と、さやちゃんが言った

ボクは、笑う。

さやちゃんは、「やっぱり同じこと考えているのね」と

ボクを見て笑う

すると、ママがやってきて

テーブルにラーメンを置いた。

ボクとさやちゃんは

また、笑う。

「やっぱり、具なしラーメンだね」

「そうだね」


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