プール

えもーしょん 高校生篇 #42

プール

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.08.12

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#42
「プール」
(2013〜2016/カイト・高校生)

真夏の太陽に照らされて

キラキラと光る青いプール。

大きな50m 8レーンのプールで

ゴーグルをつけたまま

ウォーキングコースを歩いている君。

まっすぐ歩いては

後ろ向き、右向き、左向き。

真剣な様子で永遠と歩いている。

プールサイドのベンチに座り

プールをじっと見ている。

「飛び込まないで〜!」

ライフセーバーの言葉。

初めて、プールに行ったあの日も聞いた気がする。

毎年、毎年、夏が来ては

プールへ行くと、必ずこの言葉を聞く。

そういえば、いつからなんだろうか

それにどちらが先でこの言葉が生まれたのか

飛び込んで怪我をした人が出てから

飛び込み禁止になったかのか。

最初から、プール=飛び込み禁止だったのか。

しかし、それには少し無理がある。

オリンピックがテレビ放送された時

一家に一台テレビがなくとも

水泳の試合を見た1人の男の子が

次の日、プールで飛び込んで泳いだとする

彼は恐らく、一躍ヒーローになり

それを見た子供たちは、確実に飛び込み始めるだろう。

だから、恐らく

オリンピックを見て飛び込んだ誰かが

ぶつかり怪我をしたのだろう。

そしてまた、1人の少年が

ライフセーバーの目を盗み

バッシャーン!

勢いよく、飛び込んだ

「ボクー! 飛び込まないで〜!」

イエローカード2枚目は

「ボク〜!」

と、名指しされ直接言われるのだ。

羞恥心が芽生えた歳なら

「あ、あの子も見てる…(照)」

と、反省はしないものの

少し遠慮がちになるけど

小学校低学年の歳頃は

そんなの、お構いなし…。

ピーーーーーー!!!

と、休憩の笛が鳴った。

遠くの方から、真っ白の君が歩いてくる。

ニコニコしながら

「結構歩いちゃった(笑)」

と、嬉しそう。

「日焼け止め、塗り直さないと」

「プールなのに日焼け止め?」

「プールも海も関係ないよ?」

「そうなのね…」

背中に、日焼け止めを塗りながら

さっき、注意されていた

小学生の集団がやってきた。

「次はさぁ〜」

と、どうやったら飛び込みがバレないか

話し合っているよう。

「そっと飛び込めばいいんじゃね?」

「お前、体デカいからダメだよ」

「なんだよ! おれだって飛べるし!」

「だから! 飛んじゃダメなんだって!」

「あ! いいこと思いついた!」

「ギリギリ怒られない対決! しようぜ!」

「え?」

「プール入る時にさ、飛ばないでそっとジャンプして怒られなかったら、勝ち!」

「怒られたら、負け!」

「ぴょんって! ぴょんっ」

「えー! おれ絶対勝つー!」

「おれが勝つし!」

ピーーーーーー!!!!!!!

休憩時間が終わり

ボクらは、彼らを少し見守っていた。

そっと、そっと

飛び込もうとする彼ら

不審そのもの

ライフセーバーを釘付けに

行くぞ!行くぞ!

ライフセーバーは笛をくわえ

少年は助走をつけている。

と、その時

反対側で、1人の少年が

大きくダイブした!

不意を突かれた、ライフセーバーは

必死に、飛び込んだ少年を探しているが

時すでに遅し。

飛び込んだまま、潜り

人混みへ隠れた。

「よっしゃぁーーーーー!!!」

どうやら、彼らの作戦だったらしい

嬉しそうにしている彼らを見て

ピーーーーーー!!!!!!

ライフセーバーが笛を吹いた。


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