えもーしょん 大人篇 #30
くじらの空に
2016~/カイト・大人
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.05.15
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#30
「くじらの空に」
(2016~/カイト・大人)
ねぇ、くじらみたいだね。
夏の日の夕方
目黒川を歩く2人。
空には、大きな入道雲。
「あれはさ、ペガサス」
と、君。
「あれは、くじらかなぁ」
と、ボク。
「手、繋いでもいい?」
珍しく、君がそんなことを言う。
びっくりして、思わず
「へ!」
なんて、声が裏返ってしまったけど
笑って、そっと
ボクの手を包む君。
「手を繋いだ後、別れると凄い寂しくなるでしょう?」
「だから、なんか嫌なの」
「そ、そっかぁ」
「今日の夜ご飯はなにがいい?」
「サラダがいいな」
「この前の、本の表紙のも食べてみたいけど…」
「本の表紙…あれは少し時間がかかるよ…」
家に帰り
ご飯を作る君の後ろ姿に
鼻血が出そうになる。
「かいと〜オリーブオイル取って〜」
と、君。
「あ、あのちょ、ちょっと待って!」
いてて、となっているボク。
君がそんなにもかわいいから…。
「ねぇ! オリーブオイル!」
「ちょ、ちょっと、本当! ちょっと待って!」
と、必死に落ち着きたくとも
君が、そんなにもかわいいから…。
「もう! いい!」
「本当、ごめんね」
チラッと、ボクを見た君が
火を止めて、こっちにやってくる。
突然、ボクの上に乗り
キスする君。
「ん、唇にカサカサあるよ」
「取れるかな」
と、キスする君。
「取れた」
と、君。
鼻血が飛び出し
くじらの空へ飛んで行く。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!