渋滞

海と街と誰かと、オワリのこと。#16

渋滞

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.01

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


東京へ向けてお父さんと出発したが、案の定すぐに渋滞が待っていた。そりゃそうだ、わざと渋滞に向けて出発したような時間なのだから。SAでコーヒーとチョコスーンを買ってもらわないと。ナビの予想到着時間は2時間40分後、時間通りに到着したらギリギリ夕方になる前に到着できる。暗くなる前には引越し作業を終わらせたい。

荷物の不在通知が届いた、念のため一番遅い時間の再配達を申し込む。組み立てるのはベッドのフレームと少し大きめの棚だけ。ドライバーのセットも車に積んでおいたからすぐに終わるだろう。

父「コーヒー飲むか。。。」

僕「そうだね」

父「1人暮らしは楽しいぞ」

僕「うん、楽しみ」

父「学大はお店も多いし困らないよなぁ」

僕「住んでたの?」

父「友達が何人か学大住んでたな」

父「お父さんは、オワリが生まれるまで幡ヶ谷に住んでたよ」

僕「そうか、今度行ってみるよ」

父「幡ヶ谷?」

僕「うん」

父「なんだっけな、あのお店の名前」

父「大きなカニの看板のお店があったんだよ」

僕「ご飯屋さん?」

父「そう、美味しかったんだよ。行くなら見つけてみて」

僕「覚えておくね」

SAに到着。ゆっくりしたいけれど荷物が心配だから、コーヒーとスコーンをテイクアウトして車に戻る。渋滞はこのSAの先の出口までだった、それからはスイスイと車は走った。
海沿いの道から、田んぼが見える道路を走りトンネルを潜って山を抜ける。だんだんと建物が見えてきて、だんだんと建物の背が高くなって行く。気がつくと空は狭くなっていた。けれど僕は今全然窮屈ではない。

不動産屋さんに寄って鍵をもらった。家から持ってきたキーホルダーに早速つけた、自分の部屋の鍵だ。自分だけの秘密の鍵のようで嬉しい。もう一つのスペアキーはお父さんに渡した。不動産屋さんに家の近くのコインパーキングを教えてもらったので2人で向かう。道が狭くなってきて、いよいよ東京にやってきた実感が湧いてきた。

コインパーキングに車を止めて、漫画の段ボールをお父さんに持ってもらい洋服とその他の段ボールを持って家に向かう。

続く



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