試合に勝てない。

えもーしょん 高校生篇 #4

試合に勝てない。

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / dec.19.2019

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#4
「試合に勝てない」
(2013〜2016/カイト・高校生)

16歳のボクは
悩み、もがいていた。

小学生の頃
一緒にサーフィンを始めた同期が
全員、プロになったからだ。

毎日、朝、昼、夕、海に入り
彼らと同じ時間、少し長く海に入り
練習をしては、自宅でもトレーニング。

普段のフリーサーフィンでは
彼らよりも少し、上手い日もある。

それなのに、笑ってしまうほど
試合に勝てない。

理由は1つ。

極度のあがり症だからだ。

大会当日

AM 4:30

まだまだ、朝日の気配はない
真っ暗な朝。

すぐに、パジャマから着替え

ボードを車に積み込む。

前日に、柔軟剤に浸けて柔らかくしておいた
ウエットスーツ。
かなりいい仕上がりだ。

50度のお湯をポリタンクに入れ
車に積む。

爆睡しているパパを叩き起こし

ママが、用意してくれたスムージを持って
大会会場へ向かう。

途中のセブンイレブンに寄って
コーヒーを買うパパ。

パパ「かい、レッドブル飲むか?」

車で寝ているボクに、優しく話しかけるパパ。

ボク「うん、ポカリとメロンパンも」

大会当日の朝は、決まってセブンイレブンの
メロンパンを食べる。

パパがセブンから戻ると
ボクを元気づけようと
オールドファッションを買ってきてくれた。

メロンパンよりも
先にオールドファッションを食べながら
会場に到着。

会場の波を見て、少し安心した。

昨日までの、湖のような海とは裏腹に
腰〜腹ほど波がある。

大体の、選手は
大会が始まる前に会場で練習をするが

ボクは、濡れたウエットスーツを着て
戦いたくないから、朝は入らない。

自分の試合が近づくと
バクバクし始める、心臓。

「大丈夫。大丈夫。大丈夫だよ」と
自分に言い聞かせる。

それでも、心から
「何がだよ!!!」と声が返ってくる。

10分前に受付で
ゼッケンをもらい海へ向かう

基本、赤、青、黄色、白の4色で

ボクは、赤と黄色と一緒のヒートはなぜか
大体負ける。

1回戦目は、ゼッケン青
それほど、緊張するわけでもなく
目をつぶっても勝てた。

2回戦目は、白
まぁなんとか、2位で次のヒートへ

3回戦目、ゼッケンは黄色
あぁ、やばい。

ここから全てが狂い始める。

「気にしなきゃいいさ」とわかっていても

体は震え

心臓の鼓動が聞こえる。

海に入り、沖へパドルする

過呼吸で上手く、体へ酸素が伝わらない。

当然、他の選手よりも

パドルは遅く

1番最後に、沖へ到着。

波に乗っても、足に力が入らない。

頭が真っ白になって

すぐにコケる。

ビーチの方を見ると

呆れて、どこかへ向かう

スポンサーの人達。

怒っているだろう

パパの姿。

もう、いっそこのまま

ここで死んでしまいたい。

そっちの方が、みんな注目
してくれるだろうに。

そんな事をいつも考えながら

あっという間に12分が経過し

終了の鐘がな…。

結果は言うまでもない。

また、この日も

表彰台で、満面の笑みを浮かべる
同期達を横目に
家へ帰る。

すれ違う知り合いからの

「おつかれ」が嫌味に聞こえて

殺意が湧く。

ボクは、サーフィン向いていないのかも。

そんな事は

小学生6年生の頃に感じていた

ただ、ここまで来たら

もう、戻れないんだ。

でも
「戦いたくないんだ」ボクは。

サーフィンは戦うスポーツじゃない

文化だ。

ボクは知っていた。

でも、大会に出てるサーファーは基本バカだ。

わかってくれない。

パパも。

家に帰り、荷物を部屋に運ぶと

いつもの声で呼ばれる。

パパ「かい!ちょっと来い!てめー!」

始まった。

「ボクのパパはJリーガー」へ続く

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