えもーしょん 中学生篇 #59
そろそろ
2010〜2013/カイト・中学生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.10.29
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#59
「そろそろ」
(2010〜2013/カイト・中学生)
もう、無人島擬似体験が始めって3日目になる。
朝、起きるたびに近所の同級生がボクらの安否確認にくるけど
ここで死ぬはずもないし、倒れるはずもない。
そんなことよりも、安否確認に来た同級生が2回目の安否確認に来ないほうが
よっぽどボクは心配だった。
なぜか、海を目の前に暮らすボクらの間で
この、無人島擬似体験が上手くハマってしまったようで
次から次へと、家の電話が鳴り
同級生から無人島生活の開始を告げられる。
このままでは、ボクらの学年が学級閉鎖になるんじゃないかと
心配するほどみんなが無人島生活をスタートさせた。
一番、最初に企画を立てたノリスケはやはりパイオニア的存在のようで
アドバイスを求め、彼に電話をかけてくる人も少ない。
彼は、やはり一枚上手だった。
この、無人島擬似体験で一番の問題はトイレ問題だ。
先日にお話ししたように、ボクらの生活範囲はあくまでも
この、ウッドデッキの上のみであるため
当然トイレはない。
それでも、贅沢にジュースとお菓子が山盛りのテントでは
漫画、お菓子、漫画、ジュースと繰り返し
常にお腹は膨れている。
それにテントの中は漫画でいっぱいのため
本屋さん効果が少し感じられやたらトイレへ行きたくなる。
そんな時は、渋々家に中のトイレを使うわけだけど
あまりにもボクがトイレへ行くのでパイオニアは
1日5回までというルールを作った。
これが2番目のルールだ。
それに、意外とやっかいなのが
トイレへ行く際は、トイレまで目を閉じて行かなきゃ行けない。
という、もう意味のわからない条件までついてきた。
どんなに、我慢の限界が来ようと目を閉じて行かなきゃならない。
もし仮に、途中で開けてしまった時は30秒間石になるらしい。
夜中、「あーダメだー!」
苦しそうな声がテントの外から聞こえた。
トイレへ向かったパイオニアが寝ぼけて目を開けてしまったのだろう。
「大丈夫ー?」と一応心配して見に行くと
パイオニアはボクの気配に気づき振り返った。
そして、また目を開けてしまった。
額には、今にも漏れそうです。と言わんばかりの冷や汗が垂れている。
「が、頑張って…」
ボクは、クスクス笑いながらテントのメッシュから見える。
星を見上げ、擬似体験も悪くないな。と
ようやく楽しくなってきた。
続く
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!