漂流物語 脱出篇

えもーしょん 高校生篇 #25

漂流物語 脱出篇

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.10

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#25
「漂流物語 脱出編」
(2013〜2016/カイト・高校生)

もう、これ以上日焼けはしないだろう。

むしろ、日焼けというよりも

ボクの肌は、赤黒く

火傷に近い、日焼けをしていた。

今日も、サンサンと照りつける太陽に

起こされ、目が覚める。

ムカつくほどに

完璧な三角ピークが

「おはよう」と言っている。

微かに揺れる、ヤシの木は

静かにボクを見守っている。

さて、今日こそは

この島を脱出しなくてはならない。

なぜなら、今日の夕方は

ナルトの再放送があるからだ。

ジャックとエリザベスは

遥か沖を通りかかった

貿易船を見つけ

島にある、ジャックの

お酒をありったけ木にかけては

燃やしていた。

その煙に、気がついた

貿易船が、助けに来たのだ。

確か、そうだ。

見渡す限り、貿易船はいない。

この島にあるのは、綺麗な海と

ミルキーなきめ細かい砂浜

それに、ずっと同じように

揺れ続ける、ヤシの木だ。

ん?

なにか、おかしいぞ。

風の向きが、毎日同じだ。

それに、同じ波は一度として

現れないはずなのに

完璧な三角ピークは

毎回、同じ波が繰り返し割れている。

待てよ、このミルキーなきめ細かい砂浜も

昨日の、ボクの足跡が消えているではないか。

そうだ、そういえば

ボクは、ここまで

どうやって、やってきたのだろう。

「痛い」

思い出そうとすると

頭が割れそうだ。

くそ。

おかしい。

ボクは、どうやってここへ来たのか。

島を一周、歩いてみる。

戻ると、ボクの先ほどまでの

足跡が消えている。

おかしい。

完璧な三角ピークは

どこへ行っても、同じ場所で

同じ距離感で割れている。

まるで、ボクが動くと同時に

島自体がまわってはいるかのようだ。

そういえば、この島に来てから

ほぼ、この

ミルキーなきめ細かい砂浜にずっといた。

中央部の森には

全然入っていない…。

ヒントがあるとするならば

中央部の森に間違いない。

ボクは、着ていたTシャツを脱ぎ

クルクルと、ねじり

頭に巻いた。

まるで、受験勉強に励む

受験生のよう。

さぁ、行こう!

と、森へ一歩踏み入れた瞬間。

ゴツン!!!

と、なにかが頭に降ってきた。

ハッ!

見覚えのある、屋根裏部屋だ。

どうやら、なってしまったのか

頭に降ってきたのは、ココナッツではなく

寝落ちして、倒れた際に頭をぶつけたのだ。

日焼けで、痛かった肌は

火傷とまでは、いかないが

天窓でしっかり、焼けていた。

完璧な三角ピークへ泳いだのは

恐らく、このムンムンとした

サウナ状態の屋根裏部屋で眠ってしまったからだろう。

しかし、眠っていた割には

しっかり、最後までページをめくっている。

夢か、幻想か、それとも

この、雑誌が

魔法の本なのか。

みんなも、試してみて欲しい。

最後まで読んでくれて、ありがとう。


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