パパ、ママ。明日から。

えもーしょん 大人篇 #1

パパ、ママ。明日から。

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2019.12.23

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#1
「パパ、ママ。明日から」
(2016~/カイト・大人)

薄く、オレンジ色に光る
朝日が海面から顔を出す。

空や雲、砂浜が次第に燃えていく。

朝露で濡れた、砂浜を
裸足で歩く。

人生の半分以上、過ごした海。

悔しい時も嬉しい時も
師匠や、家族の愛を感じた時も
初めてキスした時も
ボクの人生は海だった。

2016年4月。 海東18歳。

遂に、ヒッピーハウスを出る日がやって来た。

朝焼けを見て、色んな事を思い出しながら
家へ戻る。

朝ごはんを作るママの背中が
大きく、そしてどこか寂しく見える。

最後まで、素直になれない父。

ボクが帰ると、どこを見たら良いのか
分からずテレビから目を離さない。

「かい、おかえり」と
ママが言う。

「ただいま」とボク。

少し、ウルっとするママの目。

自分の部屋に行き

バッグを手に取り

振り返ると
残像のように思い出が、写る。

親友と鍋をした姿も
試合で負けて泣いているボクを
慰めに来るママも
ブチ切れて、部屋に入ってくる
パパの姿も。

全てが一瞬だったけれど
長く、濃く見えた。

ボクは
ありがとう。と部屋を出た。

玄関にバックを置いて
リビングに戻る。

ママが作る
最後の朝ごはん。

張り切って、昨日の夜から
仕込んでくれていたみたいだ。

「出来たよー」とママ。

テーブルに並ぶのは
ハンバーグ。

ママは、もう泣いている。

「なんで、朝からハンバーグ?」と
パパが言う。

馬鹿野郎。

ママが、少し笑った。

「そろそろ、行くね」と
2人に伝え
玄関へ、向かい靴を履く。

後ろで泣いているママと
もう1人泣いている人がいる事に
薄々、気づいていた。

それでも、お互い目を合わすと
気まずいから
目を合わさない。

玄関を出て、門をでる。

「パパ、ママ、明日から
お父さん。とお母さん。だ
いつもありがとう」と伝えた。

ママは今にも倒れそうだ。

やっと、目を合わせたパパ

「花粉症が」

お互い、「大丈夫だよ」と
目で会話をして

車に乗る。

「バイ!」とドアを閉めるボク

バックミラーから見える
2人の姿。

優しく、しなやかな、ママ。
力強く、太い、パパ。

心配しないで。とニコリと笑い
クランションを鳴らした。


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