これが、親友ってやつか?

えもーしょん 中学生篇 #4

これが、親友ってやつか?

2010〜2013 /カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2019.12.12

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#4 「これが、親友ってやつか?」
(2010〜2013/カイト・中学生)

夕方、海浜公園のタコ広場で
ゴロゴロしていた。

富士山が、オレンジ色に染まっている。

犬がキャンキャン吠えて
なんかいい。

ふと、隣を見ると
カビゴンみたいなやつが、エモい顔して
空を眺めていた。

彼の名前はノリ。

いつから、友達なのか
正直、全然覚えていないが

彼の笑顔と体型は、肉まんみたいで
優しくて好きだ。

ガリガリの、ボクと
肉まんみたいな、ノリ
芝生の上、彼のお腹の上に
頭を乗せる。

彼の呼吸とともに
揺れる、景色。

ゆっくりと、暗くなる空を見ながら

「彼女、出来た?」と
ノリが言う。

彼から
彼女なんて、ワードが出た事に驚いた。

「全然。」とボク。

「だよなぁ」とノリ

少しの沈黙から、会話が始まる

ボク「どうした?」

ノリ「ボクはさ、いつかモテるのかい?」

ボク「た、ぶん。ね」

ノリ「多分か。。。」

ボク「なんだよ、好きな人出来たの?」

ノリ「好きってなんだろうな」

ボク「わからん」

ノリ「モテモテならさ、傷つく暇もないよな」

なんだか、悩んでいるようだ。

中学生になると
ノリもモテを求めるようになるのか。
と一瞬思ったが

彼の少し寂しい顔に
それだけでは、無いなと感じた。

彼は、本当におデブちゃんだ。

しかし、その見た目とは
裏腹に物凄く足が速い
小学生の頃は、足が早ければ
とりあえずモテる。なんて事があったが
彼の場合は少し違ったようだ。

それに、ドッチボールも最強だった
ボクは、ガリガリで
ボールを肩より上に持つのがキツかった。

スタートの1発目に狙われるのは
決まってボクだ。
外野に行っても、使い物にならないから
敵と味方の間の線の上でいつも
両方を応援していた。

ノリと同じチームになると
心強い。
彼は、おデブちゃんのくせに
避けるのも、天才的だ。


軽やかなステップで
くるり。と
回っては
さらり。と
ボールを交わし
ゆらり。と
ゲームを回す。

いつだか、ドッチボールで
ボクとノリだけが、最後に残った時があった
それはまるで
映画のクライマックスのようで
ボクは、夢を見ているみたいだった。

敵の、外野がハイエナのように
ボクとノリを狙っている。

ピンポンゲームのように
ボールが、内野から外野へ
外野から内野へ
ボクらを、揺さぶり
隙を見ては、狙ってくる。

そんな時、ノリは
ボクに当たらぬよう
ボクを狙った、玉は全て
キャッチし、敵に当て続けた。

気がつくと、敵の内野もあと1人。

こうなると、映画も終盤。

もう、こっちの勝利だ。

なんて思った矢先。

「ドンッ」

当たった。

ノリが。

「えええええええええ!!!???」

そう叫んだのは、ボクよりも先に

敵だった。

そのあと、ボクも倍以上に叫んだ。

外野へと向かうノリの背中が
あんなにも、小さく見えたのは
それ以来ない。

恋って何だよ。へ続く。


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