自分の姿

Emotion 第32話

自分の姿

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.08.31

「唯一無二の存在になりたい」オワリと「計画的に前へ進み続ける」カイト。ありふれた日々、ふわふわと彷徨う「ふさわしい光」を探して、青少年の健全な迷いと青年未満の不健全な想いが交錯する、ふたりの物語。


第32話

朝日が部屋に差し込み、目が覚める。窓の外から波の音が聞こえて懐かしい緊張を感じた。大会の日は目が覚めた瞬間から、余計な事は考えないようにと頭を空っぽにしつつも、やはり心は緊張でいっぱいだった。窓を開けて風を感じて波を見て安心材料を集め、少しでも緊張を緩和しようとしていたのだ。

今は、それとは逆だ。そんな緊張出来ることや少しばかりのスリルを求めて波や岩や崖を見ている。窓を閉め、静かな部屋を歩くと過去の自分の姿が記憶と共に何となく見えて、もう少し気を抜いて楽にしたらどうだ。と言いたくなった。

カイトとの約束の時間まで1時間ほどあるので、早めに朝食を食べて砂浜を歩くことにした。食堂に行くと、クロワッサンやソーセージなど持って行けそうな食べ物が用意されていたので紙皿に乗せて砂浜へ向かった。

以前はテトラポットがあった場所には砂が風に運ばれて、テトラポットは埋まり小さな丘になっていた。ゆっくり登り、1番高そうな場所に座り、気持ちの良い朝の風に当たりながらクロワッサンを食べる。ふぅ、と一息つきそのまま寝転ぶとカイトの靴が置いてあることに気付いた。

彼はどこにいるのだろうか、まさか海にでも入っているのか。あの手前で溺れそうになりながらサーフボードの上でパドルをしているのはまさか、カイトか。心配になって靴を脱ぎ、小走りで向かうとやはりカイトだった。こちらに気がつきやって来る。真っ黒な肌にそれっぽい髭を生やしボードを抱えて歩くとプロサーファーのようだった。

カイト「おはよう」

僕「おはよう」

カイト「いい波だよ」

僕「どこがだよ 笑」

カイト「初心者にはな」

カイト「ちょっと教えてよ」

僕「まぁ、いいよ。押してあげるよ」


続く



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