新しい、ボードは柔らかいらしい

えもーしょん 中学生篇 #33

新しい、ボードは柔らかいらしい

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / may.27.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#33 「新しい、ボードは柔らかいらしい」
(2010〜2013/カイト・中学生)

梅雨のアジサイを通り過ぎて

濡れたアスファルトを歩く

生まれたばかりの、赤ちゃんみたいな

すべすべの、新しいボードを抱えて。

サンディングの粉がまだついているけど

なんとか、丁寧にベースワックスを

格子状に塗って

なるべく小さな山を沢山作るように

まずは大きく円を描くように塗って

デッキパッドから訳1.5cmまで塗るのが

ボクのルール

今度は、小さく円を描くように

ワックスを塗って

前足のあたりには

少し多めに塗って。

もしかしたら、もしかしたら

今日こそは、エアーをメイク出来るかも。

と、気持ちノーズの方まで

ベースワックスを塗って

もう、春だけど

ワームコートをボクは塗る。

力を入れると

ポロポロと、上手く乗らないから

優しく、優しく

そぉっと、ワームコートを塗っていく

ほんの少し、デッキパッドの

キックの部分にも塗って

昨晩、ずっと吊るして

伸ばしておいた、新品の

リーシュコードを持って

さらには、新しい

3mmジャージのウエットスーツを着て

ピカピカの姿で

家を出たのだ。

季節外れの台風が去った。

昨日までの爆風は嘘のように

すっかり姿を消して

無風の朝を迎えた

塩の匂いと、濡れたアスファルトの匂い

遠くから、聞こえる

波の音

陸橋を渡るほど

ボクには、時間がない。

「ごめんなさーい!」

と、言いながら

車と車の合間を狙って

134を横断する。

松林を抜けて、海へ続く道を歩けば

完璧な、台風スウェルと

みんなの姿。

心臓の、バクバクする音と

波の音

ストレッチなんかしないで

リーシュをつけて

沖へ向かう

幾度となく押し寄せる

波も、今日ばかりは

新しいボードのおかげで

全然、イラつかない。

沖へ出れば

みんなの姿

「おはよう」

と、仕事前のみんなに挨拶をして

なるべく、沖へ

ボクは向かう。

セットだけを狙うのだ。

まだ、知らない。

新しいボードは

柔らかい事に……。

続く。


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