ワインのコルクを歯で抜くのは良くないね

えもーしょん 大人篇 #23

ワインのコルクを歯で抜くのは良くないね

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.15

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#23
「ワインのコルクを歯で抜くのは良くないね」
(2016~/カイト・大人)

頑張る事は、大切だけど

時としていい方向に向かわないこともある。

「自分らしくいることが大切」

って、大人はボクに言った。

あれは、確か高校1年生くらいかな。

今でも、そんなのわからないのに

当時のボクがわかるはずもない。

自分を探しに、旅に出る人も

いるけど、帰ってきた一時期は

なんか、いい感じ。

徐々に見失って行くんだ。

「じぁあ、どうすればいいのよ」

「知らん」

そう、きっとあの時

ボクにそう言った大人も

恐らく、自分らしさなんて知らない。

好きなあの子が

フォーを食べている。

「フォー、レモン派? ライム派?」

と、君

「ライム派」

と、ボク

「冒険しないねぇ」

「パッケージ通り作る派ね、かいとくん」

そう言って、麺をすする君。

「パッタイは、レモン派だけどね」

と、ボク。

「パッタイはね」

「パッタイのピーナツとさ、柿ピーのピーナツって本当別人だよね」

と、君。

「砕いてるしね…」

「まぁね」

と、麺をすする君。

「あ、そういえば柿ピーの黄金比変わるよね」

「え!? そうなの?」

「え!? 知らないの!?」

「知らない!」

「7:3だよかいとくん」

「3かぁ、4派だよ。ボク」

「4派だよね…」

「1つ、時代が終わるのさ」

「これからの時代は7:3なんだよ」

「お仕事もそう」

「お仕事?」

「そうだよ、7休んで3働くんだよ」

「今と変わらないね」

「そうね、むしろ8:2だよね」

「頑張り過ぎると、自分を見失うからね」

「ワインのコルクを歯で抜くのと同じよ」

「頑張って歯で抜こうと思ってもね、ボキって折れちゃうでしょ」

「そ、そうだね」

「だから、頑張らないで道具を使うの」

「頑張らないように頑張るのがこれからの時代よ」

「ほら、フォーにはやっぱレモンでしょ?」

そう言って、君はボクのフォーに

レモンをかけた。

「ボクはライムかな」


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