えもーしょん 高校生篇 #43
家から20Mの小さな出来事
2013〜2016/カイト・高校生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.08.13
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#43
「家から20Mの小さな出来事」
(2013〜2016/カイト・高校生)
暑い…。
今日はこの夏、1番の暑さらしい
とはいえ
今は、8月の1週目。
「この夏、1番の暑さって言っても…この後暑くなったらどうすんだよ」
「最高気温は35℃です! 熱中症に充分お気をつけください!」
35℃!?
「この夏は、そんなもんなのか!」
「んなわけないだろう!」
朝5時。
テレビの中のキャスターの後ろの空は
薄ら明るくなってきている。
バローズの朝の散歩へ外に出る。
なにかを予感したのか
行きたくねー!
と、玄関で座り込む彼。
「いいから、行くよ! トイレどうするの」
無理やり抱っこして
ドアを開けると
外はムンムン
「こりゃ、今日は暑くなるぞ」
ガハァガハァガハァ
家から、ほんの少しで
もう限界のバローズは、やはり
座り込み、「抱っこ」と視線で訴えてくる。
「まだ、しないよ」
「ほら、行くよ」
「暑くなって来ちゃうよ」
夏の朝の涼しさは、もうない。
そんなの、いつよ?
とっくに前よ。
朝露が残る道路。
これが、吉と出るか凶と出るか。
バローズにとっては
すでに、凶のようだ。
今日は風も吹いていない。
だんだんと、登る太陽と気温。
朝露が蒸発し始め
湿度がさらに、上昇中。
地面すれすれを歩いている。
バローズは、もう耐えられないだろう。
が、向こうから柴犬がやってくる。
「ほら、見てみろ」
「お前より、毛があるのに平気で歩いているぞ」
涼しげに、朝の散歩を満喫している柴犬は
一瞬、バローズを見るが
「へたれだな」
と、鼻で笑った。
「ウルセーナ、オレハハナガミジケーンダヨ」
と、バローズ。
「帰ろうか」
流石にボクも暑くなって来た。
テクテク、歩くバローズとボク。
ようやく、セミが鳴き始めた。
いつも、窓から見える木
家の中から、セミを探すも
見つけた試しがない。
こうして、近くに来ると
結構、デカい。
じーっと、見つめ探していると
ガリガリガリガリ
バローズが、なにかを食べていた
「おい! バローズ!」
ハッとした彼は
ベー
っと、吐き出した。
見るに耐えない…。
セミの抜け殻が、エイリアンと化して
彼のよだれと共に
垂れている。
「やめろよ、もう」
渋々、バローズを抱き抱え家に帰る。
彼を洗い、リビングへ行くと
まだ、誰も起きていない
冷蔵庫を漁っても
ラーメンしか入っていないので
冷凍庫にある、ガツンとみかんを食べ
朝アイスをキメると
お腹が痛くなるので
先に、トイレに行ってアイスを食べる。
腹痛待ちをしながら
アイスを食べる。
アイスを食べて
お腹が痛くなるのを待っている。
平和な朝を迎えた
ある夏の日。
明日は、プールへ。
あの子の、お尻を追いかけて。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!