初めての、癖?

えもーしょん 小学生篇 #28

初めての、癖?

(2003〜2010/カイト・小学生)

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.23

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#28 「初めての、癖?」
(2003〜2010/カイト・小学生)

春の匂いがする。

少し前まで、呪いたいほど

風が冷たく、時に痛かったのに。

気がつけば、もう春だ。

殺伐とした、冬の空から

ほんわか、暖かい空になった。

桜も、ようやく咲きそう。

バローズは、道に咲いた花の匂いを嗅いで

嬉しそう。

今日も、天気がいい。

雲ひとつない、青空の下

ボーッとしていたら

もう、お昼を過ぎた。

「あー、なんか暇だなー」

「さやちゃん何してるかなー」

と、ベランダから

隣の家のさやちゃんを探す。

車がないし、どこかへ出かけているのかな。

「あー、かなちゃん何してるかなー」

最近、恋したかなちゃん。

ちょっと、ヤンキーっぽいけど

気が強くて、好き。

「かなちゃんの家知らないしなー」

「あー、なんか暇だなー」

天気がいい時ほど、やる事がないと

暇を最大限に感じてしまう。

「右ポケットにさやちゃん」

「左ポケットにかなちゃん」

が、入っていたらいいのにな。

そうしたら

「左ポケット、さやちゃん! 召喚!」

もくもくもくもく〜☁️

ピカーン!

「左ポケットのさやちゃんでーす!」

なんて、言って出てきて

「どうした? かいとくん」

「なんか、暇なんだ」

「それは、私にはどうも出来ないよ」

「え、なんでよ。左ポケットの妖精でしょ?」

「妖精だからって、なんでも出来るってわけじゃないの」

「じゃあ、なにが出来るの?」

「うーん、肩揉みとか?」

「肩揉みかぁ…」

「うん、3分だけね」

「え、3分だけなの?」

「そぅだよ? 疲れちゃうもん」

「魔法は使えないの?」

「あ! 魔法ね!」

「使えるの!?」

「もちろん!妖精だからね!」

「どんな、魔法?」

「左ポケットに入る魔法!」

「それだけ?」

「それだけ? ってなによ!」

「なんか、右ポケットのかなちゃんに期待しちゃうな」

「ちょ、右ポケットにかなですって?」

「かいとくんのバカ!」

もくもくもくもく〜☁️

と、怒って戻っていく。

「なんか、暇だなー」

「右ポケットのかなちゃん!召喚!」

もくもくもくもく〜☁️

「ハロー!」

「あ、かなちゃん!今日もかわいいね」

「何か、お困りですかー」

「暇なんだよね〜」

「それは、私にはどうにもできません〜」

「え、魔法とか使えないの?」

「あー、魔法ね〜」

「あんまり使うと、パパに怒られるんだよねー」

「あ、そうなんだ…」

「まぁ、3分だけなら肩揉みいいよ」

「また、肩揉みかい!」

「また!ってなによ!また!って!」

もくもくもくもく〜☁️

と、戻っていく。

結局、暇は暇のままなんだよなぁ。

じゃがりこの、本数でも数えようかな。

フタを開け

一本目を、食べると

さやちゃんの家の車が帰ってきた。

あ、さやちゃんかなー

車から、降りてきたのはやっぱりさやちゃん。

「さやちゃん!」

と、大きく手を振る。

「今行くねー」

さやちゃんが、こっちに向かってくる。

かわいい。


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