「アメリカン・アニマルズ」を語る男と女

TYPE OF MOVIE-映画を観る男と女 #8

「アメリカン・アニマルズ」を語る男と女

Illustration : TOMIMURACOTA

People / 2019.05.22

同じ映画を観ているのに、男と女で感想が全く違うことがある。印象に残っているシーンも、劇中の曲に対する評価も違う。「TYPE OF MOVIE」では、そんな男と女の感性の違いにフォーカスを当てながら、今注目の映画をご紹介! 第8回目は「アメリカン・アニマルズ」です。


「アメリカン・アニマルズ」を観て、
破天荒な猪突猛進キャラに共感した男と
温厚な芸術家気質キャラに共感した女。



「アメリカン・アニマルズ」について


自分たちが普通の大人になりかけていると感じていた大学生のウォーレンとスペンサー。そんなある日、2人は大学図書館に時価1200万ドル(およそ12億円相当)を超える画集「アメリカの鳥類」が保管されていることを知る。「その本が手に入れば、莫大な金で俺たちの人生は最高になる」そう確信したウォーレンとスペンサーは、大学の友人エリックとチャズに声をかけ犯罪計画を立てる。実話を基にした今作には、事件を起こした本人たちが登場。ドキュメンタリーとドラマをハイブリッドしたセンセーショナルな作品に仕上がっている。

男と女の映画レビュー


Q1.「アメリカン・アニマルズ』に出てくる青春真っ只中の大学生たちを見て
のほほーんとしたシーンや共感できるシーンはあった?


男/のほほーんとしたシーンはなかったが、田舎の大学出身の僕は、本当に退屈な日々を送っていたので、とても共感する部分があった。最初のあたりで、ウォーレンが、スペンサーがバイトしているスーパーに押しかけ、強盗仲間に誘うシーンで「自分から行動を起こさないと、何も起きはしない、狩猟民にならないと荷を解くだけの人生だぞ」というセリフがもっともらしくて印象的だった。大学時代、さすがに強盗を企てることはなかったが、何か面白いことをしたい、変わったことをしたいという願望はずっとあったような気がする。実際に行動に移すことができなかったので、このセリフが刺さった。

女/みんなで老人のコスプレ?をするところ。
いやいや、よく考えたら絶対バレるよ!って分かるのに自分たちの世界に入り込んで周りが見えていない感じが、あるある!と思った。




Q2. ヴィンテージ本を盗んだ主人公4人組、あなたにはどう見えた?
共感できた? それともおバカだなーと思った?


男/退屈な大学生活の中で、「何か人と違うことをしたい!」 という思いは共感できたが、やることはバカだなーと思った。絶対にバレることは、やる前から目に見えていたような気がする。もっと他にも人生を最高にする策はあったはず。

女/妄想で終わりそうな次元の違う発想を、後先考えずに若さ故の行動力で実行してしまう姿は誰しも経験があるのでは……。犯罪行為なので決して援護はできないが、4人で何かを達成しよう!という熱い気持ちには少し胸を打たれてしまった。

Q3.お気に入りのキャラクターと、苦手だなーと思ったキャラクターを教えて。


男/お気に入りのキャラクター → ウォーレン
盗みのシーンで、リーダーとして計画を遂行しようと、孤軍奮闘する姿をなぜか応援してしまった。「早く!盗め!」と心の中で思ってしまった。

苦手なキャラクター → スペンサー
盗みのシーンで、ビビって何もできずに立ち尽くしている姿に「なんで何もしないんだ!」とイライラしてしまった。

女/お気に入りのキャラクター → 主人公( ※おそらくスペンサーのこと)
鳥の本を盗んで逮捕されたのに現在も事件を起こした大学の近くに住み、鳥の絵を描いているという結末に少しゾッとしたが、いかなる経験も芸術につなげるところは自分の仕事と通づるところがあるのかな、と。家族を大事に思い、犯罪行為を思いとどまるところも人間味があってよかった。

苦手なキャラクター → ヤンキーみたいな男 (※おそらくウォーレンのこと)
集団にああいう奴絶対いるよな〜……。自我が強くて、周りをかき乱し、でも何故か友達は多く好かれている。危険なところが魅力的ではあるのかもしれないが、自分は絶対関わりたくないタイプ。



Q4.この映画の見所を教えて。


男/見所は、最後の強盗シーン。強盗が成功するのか、映像に見入ってしまい、ハラハラドキドキしてしまった。彼らの強盗を応援している自分がいた。平凡な日々に飽き飽きしている人におすすめ。こんな馬鹿げた計画だけれど、彼らは真剣に計画を練って、行動に移していたので、行動力だけは参考になるかも。

女/現実に起こった事件を基にした映画で、実際に本人たちのインタビュー映像が入るのは斬新だった。大人になってからも未だに責任をなすりつけあっていたのが印象的。さすがに犯罪までする人はそうそういないと思うが、誰しも悪ノリをしたことあるのでは?(ピンポンダッシュとか)。思い出したくないんだけど、思い出すとバカらしくて笑ってしまうそんな学生時代の経験を持つ人におすすめ。

Q5.「アメリカン・アニマルズ」に、あなたなりのキャッチコピーをつけるなら?


男/「破天荒な青春の1ページ」
あんなことやってたな、バカだったよねとか昔話に花を咲かせることはよくあるけれど、こんなに破天荒な思い出は、彼らにしかないから。

女/「二度と“戻れない”青春」
青春時代は二度と戻れないし、犯罪をしたらいわゆる”普通”の人には戻れない。2つの意味を込めてつけました。



そして、3人目(男)のレビュー


その気持ち、わかるけど……。


男と女で、お気に入りキャラと苦手キャラが正反対となった今作の「アメリカン・アニマルズ」。主な登場人物は大学生4人組(全員メンズ)。「そら、男女の視点は分かれるよなー」と感じた。10代後半〜20代前半の頃、何かしらのジレンマを持っていたり、普通とか社会一般とか、そういった世論みたいなものに背を向けたくなる気持ちが男ならある。きっと。(それは女性も同じなのかなー)。その気持ちが膨れ上がって、一線を越えてしまった4人組を中心に「アメリカン・アニマルズ」の物語は進んでいく。物語を観ている途中で、ふと我に返って「いやいや……そこまでしなくても。」とは思うのだが、その発端にあった4人の考えや周りが見えなくなるところには、男女問わず共感できるだろう。そんな今作は、ぜひ男女で観て欲しい! 男の感想、女の感想、きっとそれぞれ違う内容になっているはず。ただ、鑑賞後のレビュートークが白熱し過ぎて口論にならないように注意して!



【作品情報】
アメリカン・アニマルズ
公開:全国公開中
監督・脚本:バート・レイトン
出演:エヴァン・ピーターズ、バリー・コーガン、ブレイク・ジェナー、ジャレッド・アブラハムソンほか
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
配給:ファントム・フィルム
劇場:オフィシャルサイトで要確認。
© AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal Pictures Limited 2018




Archive↓
TYPE OF MOVIE #1「さよなら、僕のマンハッタン」
TYPE OF MOVIE #2「パティ・ケイク$」
TYPE OF MOVIE #3「女と男の観覧車」
TYPE OF MOVIE #4「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディアオス」
TYPE OF MOVIE #5「バンクシーを盗んだ男」
TYPE OF MOVIE #6「ボヘミアン・ラプソディ」
TYPE OF MOVIE #7「マックイーン:モードの反逆児」
TYPE OF MOVIE #9「サウナのあるところ」
TYPE OF MOVIE #10「テルアビブ・オン・ファイア」
TYPE OF MOVIE #11「WAVES」
TYPE OF MOVIE #12「mid90s」







Tag

Writer