デート

海と街と誰かと、オワリのこと。#30

デート

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.27

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


パーティーからは結局歩いて帰ってきた。途中、お腹が減って空いているお店が無いか探しながら歩いていたら結局家に着いてしまった。コーヒーばかり飲んでお腹は減っているのに、全然眠れそうに無い。

何も考えずシャワーを浴びて冷蔵庫の前でぼんやりする。冷凍のうどんが1玉あるけれど、めんつゆがない。諦めベットに横になる。Netflixで映画を見ながら寝落ちできたらしようと思い、アラームだけセットしてゴロゴロする。。。。

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ーーアラームの音

10:00

目が覚めてシャワーを浴びる。洋服に着替えるけれど待ち合わせまでまだ時間があるから駅前でコーヒーを飲むことにした。何度も何度も時計を見るたびに今まで全然緊張していなかったのに、すごく緊張してきてしまった。電車に乗って神保町へ向かうけれど、神保町のどこで待っていたらいいか話していなかった。連絡しようと思ったとき、後ろから誰かに肩を叩かれた。

さき「よっ」

僕「おはよう」

さき「駅からずっと一緒だったの気付かなかった?」

僕「全然、気付かなかった!ごめん」

さき「気付いてよ〜」

さき「ご飯食べた?」

僕「まだ食べてないよ、昨日も夜食べてないからかなりお腹減ってる。さきは?」

さき「私も結構お腹減ってる」

僕「何か食べようか、神保町初めて来たからわからないけど一緒に探そう」

さき「いいよ、カレーが有名?よ」

僕「カレーかぁ、うどんの気分なんだけど。さきは?」

さき「うどん、いいね。私もうどんがいいな」

僕「じゃぁ、うどん屋さん探そうか」

マップでうどん屋さんを探して一番星とレビューが高いお店に向かうことにした。

さき「そう言えばさ、オワリ昨日菊池さんと話してなかった?」

うどん屋さんへ向かう途中、さきは少し不安そうに言った。

僕「うん、友達に紹介してもらったんだよ。」

さき「そうなんだ、何かするの?」

僕「Tシャツ?作るんだって」

さき「そうか、本当にたまーーーーに変な人いるから気をつけてね」

出会って間もないのにジンと同じようなことを言うさきに驚いた。心配してくれているのは素直に嬉しいけれど、これ以上は聞かない方が今日は楽しく過ごせそう。となんとなく思った。

僕「うん、わかったよ。ありがとうね」

さき「オワリなら、うまくいくよ」

駅から少し歩いて、本屋さんが沢山並ぶ通りを過ぎたところにうどんやさんはあった。外で少し待ったあと店内に入った。

僕「普段、何食べる?」

さき「うどん?」

僕「うん」

さき「かけ一択」

僕「僕もです」

さき「笑」

店員さんを呼び注文をする

僕「かけの並ととり天とかぼちゃをお願いします」

さき「かけの大ととり天とナス天をお願いします」

店員さんが戻るとさきは言った

さき「オワリ、並で足りるの?」

僕「全然、足りるよ」

さき「そうかぁ、多いかなぁ」

僕「結構大盛りだよ、多分。ほらあそこ」

隣の隣の席に大盛りのうどんがちょうど運ばれてきていた

さき「あれくらいか、大丈夫!」

さきはグッと親指を立てた

僕「とり天、美味しそうだよね」

さき「うん、すごい楽しみ」

しばらくして、うどんが運ばれてきた

さきは長い髪を後ろに縛り、腕まくりをして美味しそうにうどんを食べている。見た目はとても細いのにたくさん食べる彼女のギャップに驚いた。

さき「食べる?」

さきは大きなナス天を半分に割り、僕に言った。東京の女の子はこんなにもフレンドリーなのだろうか。それをもらったら普通に間接キスになってしまうけど、そういうの気にしないのだろうか。どうしたらいい、断るべきか。これは何か試されているのだろうか。

さき「ナス苦手?」

僕「いや、めっちゃ好き」

即答してしまった。どちらかというとナスは苦手だ、食べたときの水分が苦手で普段は食べない。さきは「どうぞ」と言って僕のかぼちゃ天の隣に置いてくれた。これは、かぼちゃよりさきに食べるべきか。もらってすぐ食べたら、狙ってたと変な勘違いを生んでしまわないだろうか。さきの様子をチラッと見てみると、目があってしまった。さきはニコッと笑った。ものすごくかわいい笑顔だ。一生この瞬間を記憶したいと思った。

続く



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