出版社の日常 #1

WHOLE EARTH CATALOGって知ってる?

Photo & Text: TWO VIRGINS

People / 2018.06.22

“皆さまのライフスタイルにちょこっと混ぜていただきたい出版社”トゥーヴァージンズが、出版社ならではの視点で切り取った本のこと、書店のこと、出版業界のことをあれこれと綴るこの連載。第一回は現在の世界の出版業界の礎のひとつとも言える伝説の一冊『ホールアースカタログ』のことからスタートです。



『ホールアースカタログ』、それは1960~1970年代のアメリカの若者を変えた一冊で、日本の出版業界にも影響を与えた伝説のカタログ誌。
“Access to Tools”をテーマに地球上で生きるために役立つ商品や情報を「知恵」として集めた内容で、ちょうど今から50年前の1968年に創刊されました。以降、小冊子で情報をアップデートしながら数年に一度、大幅なリニューアル刊行がされ続けました。この「情報をアップデートする」というコンセプトが非常に魅力的なんです。

編集長のスチュアート・ブランドは60年代後半に、軍事的な機密として扱うべき存在だった宇宙から撮られた地球の写真の公開をNASAに求めました。そして公開された地球の写真が、ホールアースカタログの表紙になったのです。以降、ホールアースカタログの表紙は宇宙から見た地球の写真が定番に。当時は誰も見たことがない地球の写真を使った表紙が書店店頭に並んだ時のインパクトは相当大きかったはず。

さらに毎号、裏表紙に印象的なメッセージが必ず掲載されていました。故スティーブ・ジョブズもスタンフォード大学の卒業生に向けたスピーチでこのカタログと裏表紙に掲載されたメッセージを紹介しています。以下は実際のジョブズのスピーチの翻訳です。

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グーグルのペーパーバック版のようなもので、グーグルが35年遡って登場したかのような理想的な本で、すごいツールと壮大な概念に溢れかえっていました。
スチュアートと彼のチームは 『The Whole Earth Catalog』 を何度か発行しましたが、ひと通りの内容を網羅した時点で最終号を出しました。それは1970年代半ばで、私がちょうど君たちの年代だった頃です。最終号の裏表紙は、朝早い田舎道の写真だったのですが、それはヒッチハイクの経験があればどこか見たことのある光景でした。
写真の下には "Stay hungry, Stay foolish." という言葉が書かれていたのです。
“Stay hungry, Stay foolish.” それが、発行者の最後の言葉だったのです。それ以来、私は常に自分自身そうありたいと願ってきました。そしていま、卒業して新しい人生を踏み出す君たちに、同じことを願います。

出典:スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式スピーチ 2005 - Stay hungry, Stay foolish. 貪欲であれ、愚直であれ。(翻訳:小野晃司)
http://sago.livedoor.biz/archives/50251034.html
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印象的な裏表紙のメッセージ


そしてこの「カタログ」は全米で150万部のベストセラーに。アメリカ国内では『Whole ●●● Catalog』や『●●●● Catalog』といったカタログブームとなり、日本にも伝わり後の『宝島』や『POPEYE』の前身『Made in USA Catalog』など、様々なライフスタイル誌や書籍に影響を与えたのです。


知人のアメリカ土産。ホールフーズマーケットで売っていた種カタログ


 
Whole Earth Catalogから影響を受けた日本の雑誌や書籍


僕らトゥーヴァージンズの出版企画会議でも「ホールアースが~」と話題になることも多く、6月末に刊行する「みんなのちきゅうカタログ」は「ホールアースカタログ×現代の子ども」がコンセプト。子ども向けに地球で楽しむアイディアの実践方法をカタログ化し、どのページからでも楽しめるような編集。過去を真似するのではなく、過去の良いものの本質を知り、ホールアースのように現代に「アップデートしていく出版社」でありたいと思います。


みんなのちきゅうカタログの表紙




数年前、Whole Earth CatalogをコンセプトにTWO VIRGINSスタッフでイベントに出展した様子


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