えもーしょん 大人篇 #49
南の島
2016~/カイト・大人
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.07.23
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#49
「南の島」
(2016~/カイト・大人)
レンタカーに乗ったらホテルへ行って
チェックインを済ませて
部屋に荷物を置いて
少し休んだら、軽くシャワーを浴びて
適当な服に着替えたら
今日は遅いので、ホテルの近くを散策してみる。
商店街を見つけると、街ブラロケのように
プラプラ歩き回り
なんかいい感じの
もずくや、マンゴー、ドラゴンフルーツなんかを買って
ホテルへ戻る。
もずくを食べて、おぉ!沖縄!
マンゴーやドラゴンフルーツなんかを食べて
「南の島来たー!」
なんて事をしなくがら
近くのお店を調べるために
食べログを見始め
手っ取り早く、1位のお店へ向かう。
お店に入り、席に座る。
メニューを開いて、おすすめを一通り頼むと
「他にお勧めはありますか?」
と、店員さんに聞いてみる。
「ぐるくんの唐揚げが美味しいですよ」
と、言われたので
「じゃあ、それもください」
と、言われたまま頼んだ。
そして、頼んだ料理がやってきて
パクパク食べていると
最後に、先程の
ぐるくんの唐揚げがやってきた。
頭から尻尾まで姿焼きのよう
まるで、海から連れられそのまま
油へドーーーーーン!
と、されたかのような姿のぐるくんを見て思った。
このままでは、ボクもこの魚と一緒じゃないか。
海で生まれ、暮らし、釣られて、油へ
そして誰かの胃袋の中へ。
と、食物連鎖の一連の流れの中にいるように
飛行機に乗り、目的地へ、レンタカーを借りてホテルへ
誰かが決めた評価の高いお店に入り
誰かが決めた美味しい料理を食べて
きっと、このままホテルへ戻ると
「沖縄!完全版!」などというこれまた
誰かが決めたコースを明日には周るに違いない。
そんなのは、嫌だ。
あの日を思い出そう。
あの、バス停の陽炎と
バスに乗り込む、サラリーマンの顔を思い出そう。
いつか見た、「行った人から夏です」
あれには、なぜか続きがある気がする。
しかし、今のボクにはそこから先は分からない。
旅に出たつもりが、いつもと変わらないバスに乗っていた。
景色がただ違うだけの、バスに。
途中で気づいたボクは
バスを降りられただろうか?
お店からホテルへ向かう道で
この、南の島のとある道の上で
「ボクは一体、なんの為にやって来たのだろうか?」
と、立ち止まり考える。
セミが鳴く、この夏の島で
海へと続く一本道の上で
ホテルから荷物を運び車に乗せ走り出す。
ボクの答えを探しに。
真夜中、南の島の誰もいない道路をひたすら走る。
とにかく、遠くへ、南の方へ
そして、誰もいない電波もないような僻地へ。
そこには、何があるだろうか?
青い空、大きな入道雲、エメラルドグリーンよりもグリーンで青い海
ボクが都会で無くした何かがきっとそこにはあるはず。
そんな事を考え
ひたすら、走った。
これ以上は、車で行けない場所へ。
1番端の離島へやってきた。
「これが最後」
と、携帯のマップを開く
とにかく、遠くへそしてとにかく南の方へ来たつもりだった。
それが、なぜか反対の方へやってきてしまったようだ。
「それでもいいか」
と、ボクは空き地に車を止め
眠りにつく。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!