たまには

えもーしょん 小学生篇 #69

たまには

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.12.10

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#69
「たまには」
(2003〜2010/カイト・小学生)

もうぜーんぜんなんにもないただ普通のある冬の日。

今日も何もない、平和だけど平和すぎ? な日に少しばかり退屈していた。

映画の見過ぎかな、ボーッと窓から見つめる先の学校に

ヘリコプターでも突っ込まないかなぁ。

と、ヘリコプターが突っ込んだ後の展開を妄想する…。

ハッとしたときに、ボクはどれほど暇なのか実感してしまって

なんか、もう寝ちゃおうかなって思うほど。

この前久しぶりに道徳の授業を受けて「反抗期」をならった。

ボクも一時的にヤンキーになれるのだろうか。

ずっとヤンキーに憧れてはいるけど

なりたいとは思えず、けどどこか彼らには魅力を感じる。

ヤンキーはモテる。

ボクの学校のいじめっ子はなぜかモテている。

家の前の中学校も、金髪のヤンキーほど可愛い彼女が横にいる。

最近、ボクの家の前をマドンナのアサちゃんが通った。

ボクは急いでパジャマからお気に入りのデニムとTシャツに着替えて

最近買ってもらった、1番新しいナイキの靴を履いて

アサちゃんを追いかけた。

「アサ…ちゃん」

ボクの先に見えるアサちゃん…。

あの綺麗なこげ茶の髪の毛、短すぎるスカートから見える。

絶妙な美脚、あれは間違いなくアサちゃんだ。

それなのに、それなのに

アサちゃんと手を繋いでいる横の男は、まさかのヤンキーだ。

ボクは、この時確かに心の中の薪に炎が付いた。

ちょうど今日は美容室の日。

もう決めた、ボクは今日金髪にする。

学校に行って文句を言われても「潮焼けです」と言う。

ボーッとしたまま家に帰り、ママにもらった美容室代を持って

愛車のチョッパーハンドルの自転車に乗って

チェーンにデニムが挟まって絡まっても気にしない

「ボクは今日、金髪」

「ボクは今日、金髪」

「ボクは今日から金髪だぁー!!!! バカヤロウ!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ブラウン管のうこうがわあああああああああ!!!」

「カッコつけるおれえええええええええええ!!!」

「ヤンキー!!!!!ファイヤー!!!!!!!」

海沿いのサイクリングロード。

真っ青な冬の空、冷たい痛い北風。

砂にタイヤを取られても、気にしない。

ボクは今日から金髪、今日からヤンキー。

マドンナ、アサちゃんを迎えに。

何度振られても気にしない、全然凹むとかない。

当たって砕けろ、そんなレベルじゃない。

アサちゃんの為なら…涙。


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