海と街と誰かと、オワリのこと。#43
始まる
Contributed by Kite Fukui
People / 2023.03.21
まだ空が綺麗なグラデーションを描いている時間。疲れ果てて僕の家に泊まっているジンとオサムよりも先に目が覚めた。昨日のお寿司のトレーとお菓子のゴミがテーブルに散らかっている。小さな部屋で意外とのびのび寝ている2人をみると、これはこれでいいな。と思い記念に写真を撮る。まだ薄暗かったせいか、オートフラッシュが光りオサムが起きた。さすがフォトグラファーだ。
オサム「おはよう」
エアコンの風が直撃だったようでオサムの声が枯れていた。
僕「おはよう、大丈夫?」
オサム「全然、大丈夫」
僕「水飲む?」
オサム「ありがとう」
オサムに水を渡し落ち着くまで待つ
僕「今日は何をするの?」
オサム「メインの作品を決めて、PR用のビジュアルを作るよ。それからポスターの入稿かな」
僕「今日も忙しくなりそうだね」
オサム「午前中には終わるよ」
僕「早く終わったらプールでも行く?」
オサム「めちゃくちゃあり」
僕「サマーランド、お昼過ぎなら空いてそうじゃない?」
オサム「サマーランド行く!!!!?」
僕「行ったことないから行ってみたかったんだよね」
オサム「俺も行ったことない!」
僕「じゃぁ、ジンを叩き起こして早めに終わらせよう」
オサム「そうだね」
それからはジンを起こし、2人がどの作品を使うか悩んでいる間に近くのパン屋さんへ2人の朝ごはんを買いに行く。ジンはソーセージが入っているパンとチョココロネ。オサムは多分卵サンドかカツサンド。僕は小麦アレルギーだから、帰り道にあるお米屋さんでおにぎりを買って帰る。
家に戻ると2人の仕事は終わっていた。ジンはオサムからサマーランドの話を聞いたようだ。自分の荷物とオサムの荷物を片付けて玄関にまとめていた。
ジン「おかえり!行くか!」
僕「パン買って来たけど、食べない?」
ジン「車で食べよう!」
僕「オッケー、海パン出すから下で待ってて」
ジン「俺、車取ってくるからオワリとオサムは待ってていいよ」
僕「大丈夫?外凄く暑いよ」
ジン「全然、余裕〜」
僕「じゃ、待ってるありがとう」
ジンが車を取りに行っている間、僕はクローゼットの奥にある海パンを探す。オサムは暑い暑いと言ってエアコンの下で寝ている。
僕「やばい、海パンあったけど小さいかも」
オサム「履いてみたら?」
どう見ても小さい海パンをダメもとで履いてみる。
僕「どう?」
オサム「ちょ、そのまま止まって」
オサムは急いでカメラを取り出し、レンズキャップを取った。そして一枚パシャリと写真を撮る。
オサム「オワリ、めちゃお腹出てるよ笑」
ほら、と撮った写真を見せるオサム。確かにお腹が気になる。というより普通に苦しいから何となくわかっていた。まさかこんなにお腹に脂肪がつくなんて想像もしていなかった。どちらかというと細い体型だけれどお腹が意外と出ている。
僕「これさ、サーフィンやってた時に履いていたからさ筋肉落ちたんだね」
オサム「まぁ、そうだろうね。全然普通の肉付きだけど海パンが小さいね」
オサム「俺も今日海パンないし、一緒に途中で買おうよ」
僕「そうだね、一応ジンに伝えておこう」
ジンに途中で海パンを買いたい。とメッセージを送ると彼も家を探したけれどなかったらしい。
僕「ジンも海パンないって」
オサム「ちょうどいいね」
しばらくオサムと2人でエアコンの風に当たっていると、汗だくのジンがやって来た。彼の車はおしゃれな昔の車だけれど、エアコンが壊れているから窓を開けないといけない。けれど完全に窓を開けてしまうと今度は閉まらなくなってしまうから、半分より下に窓を開けてはいけないらしい。
オサムと2人でそれなら電車の方が良くないか?と心の中で思ったがジンはそれが普通だから気にしていないようだった。2人で諦めて車に乗り込んだ。オサムは機材が心配と言って僕の家に機材を置いていくことにした。
とんでもなく暑い車内の中で、オサムと2人でサマーランドまでの道中海パンを売っていそうなお店がないかマップで探す。
オサム「あ、このまままっすぐ行ったらお店あるわ。ってかここで買わないと売店で買うことになるよ」
ジン「俺、一周回って売店でもいいんだけどどう?」
僕「僕も全然いいよ」
オサム「あの、イルカの海パンでいいの?」
ジン、僕「。。。。。。」
ジン「一応見ておこうか、どっちでもいいんだけどね」
僕「そうね」
お店の駐車場に着き、車から降りると車内より涼しく感じた。お店に入るとタイダイ柄の海パンと無地の大人っぽい海パンの二種類置いてある。せっかくだから、と3人でタイダイ柄のお揃いにした。必要な時に好きなタイミングで買い物をすると大人になったんだなと感じる。車に乗る前に深呼吸をする。革のシートが凄く熱くなっているけれど、プールまでの我慢。
サマーランドへ向け車が走り、サウナ状態の車内から夏の街並みを眺めている。木々が青々としている。遠くの方に長い車列が見えた。きっと駐車場渋滞だろう。近くまで進むと真っ黒に日焼けした警備員さんが「サマーランドですか?」と聞いて来た。ジンが「はい」と答えるとこちらへ進んでくださいと案内され進む。渋滞は思っていたよりも早く終わり、ついに初のサマーランドへ!
3人で流れるプールに向かいゾンビのようにグルグルと流され、体を冷やしたら長蛇の列に並びウォータースライダーに乗った。「あんなに並んだのに一瞬なんだね」と笑い普通のプールで遊ぶことに。休憩時間にお菓子とアイスを食べ、ポカリスエットをガブ飲み。子供よりも楽しく過ごせたと思う。
帰りにまた渋滞にハマりたくないからそろそろ帰ろうと、ジンが言った。2人は明日も休みだから僕の家に泊まるらしい。夕暮れ、窓の開かないジンの車が初めて快適に感じた。
続く
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