リペア

えもーしょん 高校生篇 #37

リペア

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.06.30

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#37
「リペア」
(2013〜2016/カイト・高校生)

高校2年生。

原付免許を取得後

行動範囲が、みるみる広くなった。

スーパーカブにキャリアを

無理やりつけて

時には、ロングボードを乗せて

海へ向かうことも。

ロングボードを乗せるときは

要注意。

バイクの右側にキャリアをつけ

ロングボードを乗せると

当然、長いので

ハンドルが曲がらない。

いつものように、ウエットスーツに着替え

適当にワックスを塗る

長いリーシュを

バイクのハンドルに巻き付け

裏道を進む。

途中、クネクネと曲がる山道を抜けるが

その際も要注意。

右にハンドルが曲がらないバイク。

遥か手前から

ウインカーをつけ

ゆっくり、ゆっくり

体重を傾ける。

ボードとハンドルが当たる

ギリギリ、を保って

ゆっくり、ゆっくり曲がる。

振り向いてはいけない。

後ろに続く、何台もの車の

プレッシャーを感じては

焦って転んでしまうからだ。

転んでは、いろいろ厄介だ。

アスファルトで引きずったボードを

リペアするほど、厄介なものはない。

ガリッガリのアスファルト。

これでもか。と

細かい石が傷口に入り込み

時には、フォームにまで

到達することもある。

「そんなの、ホースで水流してとっちゃいなよ」

後ろから声がした。

クヨクヨしながら

リペアしようとするボクを見て

ママがやって来たのだ。

「そんなことしたら、フォームが水吸っちゃうよ」

幾つもの、線、ヒビ、クロスが飛び出る

マジックボードを目の前に

さらなる、クヨクヨが襲ってくる。

「だったら、工場持って行きなよ」

また、後ろから声がした。

ママだ。

それに加え、ボリボリなにか口にしている。

「持っていけるか! ボケ!」

とは、言わないが。

思わず、心の中で叫んでしまった。

そりゃそうだ。

工場へ持っていって

なんといえばいいのだ。

「す、すみません。バイクで転んで壊しちゃいました…」

とでも言うのか?

無理に決まっている。

それに、もうすぐ夕方。

幸か不幸か、パパが帰ってくる。

ラミネーターのパパ。

即、直してもらえるが…。

なにが飛んでくるかわからない。

灰皿? コップ? リモコン? iPhone?

あぁ、考えるだけで

憂鬱だ。

ソーラーレジンで直してもいいが

黄色くなるし、硬いから

なるべく使いたくはない。

はぁ。


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